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『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』

原題「ESCAPE FROM PRETORIA」

◆あらすじ◆
アパルトヘイト下の南アフリカ。白人でありながらネルソン・マンデラ率いる"アフリカ民族会議(ANC)"と行動を共にしていた青年ティム・ジェンキンは、仲間のスティーブン・リーと共に警察に捕まり、政治犯が収容される厳重警備のプレトリア刑務所に送られる。彼は抵抗の意思を示すべく、絶対不可能と思われていた脱獄を決意する。それは10ヵ所あるドアすべての鍵のコピーを、木片を加工して製作するというあまりにも無謀で危険な計画だったが…。

⚠️結末に触れてます。




【チラシ爆弾】久しぶりに見たわぁ。
配られるより空から降って来たら『なんだなんだ?』ってなるから効果的よねー。

当時、アパルトヘイト真っ只中だった南アの実情が少なからず読み取れる演出が良い。
そこメインの話じゃないからあのくらいでイイと思う。
刑務所内で働く黒人受刑者ポトラックの一件はまさしくその象徴と言えるエピソードだしあれを入れる事で酷さは充分に理解出来る。「白人だからまだ生きてられるんだぞ、黒人に人権を与えるような活動を続けるんならお前らも同じ運命だ。」とでも言わんばかりの言動・・・胸糞悪いわ!

実話なので結末は承知の上で観てもハラハラはさせられる。
政治犯房なので事は冷静に着々と進められるんだが、ちょっと『アルカトラズからの脱出』を彷彿させる。まぁ原題は場所が違うだけで同じだからね。もうアルカトラズは何度も観てるので方法の違いには興味あったがそこは割とこちらも冷静に観てたかな。

あとこの作品は刑務所内に聞こえる【音】が重要要素みたい。ティム達は足音で誰が来るとか何処から聞こえるとか緻密に頭の中に記憶してるんだよね。
動くタイミングとか結構ハラハラする。


ワタシが1番グッと来たのは監房内の脱獄劇より刑務所から出た直後に乗り込もうとするタクシーの黒人運転手との遣り取り。

初め運転手は彼等が白人だと見て「白人のタクシーに乗ってくれ」って促すんだけど彼等は「いや、君がイイ」と返答しながら金を手渡そうとする。そこでドライバーは彼等が脱獄して来た事を悟る。

尚且つ彼等が【自分達黒人の為に投獄されてたんだ】と見抜くんだよね。
このほんの2~3言葉を交わすだけで成り立つシーンの重要性とか役者が醸し出すその微妙な気配や演技の絶妙感が堪らなかった。
この土地は、町=刑務所みたいな所でちょっと台詞に有った様に政治犯が多く収容されてる。だから運転手も理解したんだろうね。

あの刑務所は市街地からかなり離れた場所にある事は移送シーンで解る。
護送車が砂漠を延々と走る俯瞰映像は凄く効果的な映像だったと思う。
で、3人がタクシーに乗り込んだ所でカメラが引いてその駅名が映る。刑務所と同名の駅【PRETORIA】。或る意味タイトルバックがココに来るか・・・って感じした。


タクシーが段々町から離れると彼等の安堵と達成感はMAXになる。
コチラの気持ちにも安堵が充満する瞬間だよね。

ただ、あれだけ綿密に遂行した筈なのに最後のアレはどうなの?って思ったけどね。
それとあのドアは毎日は使用しないのかね?てか刑務所内のドアって壊れてても気付かない物なの?誰も見回りしないんだ。見回るのは囚人の房だけって・・・結構お粗末なのね。
てか、夜間の看守はあの太っちょのおっさん一人だけなの?何も出来なさそうだけどね・・・トイレ詰まったの直す以外はさww


ただ、冒頭で『チラシ爆弾の代償はかなり大きかった』とナレーションが入るけどそれはエンドロール前に流されるその後の彼等の状況が物語っている。結局ラドクリフ演じるティムは妻とは二度と会えなかったって・・・本当に当時の活動は命がけでやってたって事。差別撤廃を叫ぶ事がどれだけ危険か?と言う背景が本当に恐ろしい。人間が【肌の色が違う】ってだけでそこまで鬼畜に成れるの信じられないけど実際白人至上主義者や差別主義者は想像以上に存在するんだからね。それは哀しいかな脈々と継がれて来てる。

ただ、その差別に抗議し撤廃を叫んでアパルトヘイトは1994年廃止された。
その道のりや犠牲を想えば少なくとも自分は偏見や差別を持たない人間で居たいと思うばかりだ。

彼等が連行された瞬間から脱獄すると決めてる理由が『ファシストに屈しない』と言う信念からってのシビレるわ!


しかしANCの活動をするティムとスティーヴンに加担するフランス人レオナールを演じるマーク・レナード・ウィンターがちょっと愛しのダニエル・デイ=ルイス似で楽しかった。

ダニエル・ラドクリフとダニエル・ウェバーのコンビもどことなく頼りなさがあってその風貌や雰囲気がよりハラハラ感を煽ってたと思うよ。(てか、ダニエルばっかりかよッ!!)

それとイアン・ハートが久々にお目に書かれた感。彼が演じるデニスはもう長年刑期を務めてて脱獄には前向きではない。刑期を全うすれば必ず出られるからだ。それも一つの考え方だがなによりショックだったのがあのイアン・ハートが「爺さん」と呼ばれてた事・・・!えっ~~~~~!じ、じいさん・・・。
ぎゃぁぁぁぁあぁっぁぁぁぁぁぁアタシより一個年下~~~~!!!!!!!!
てな具合でそこヤバかった。

でもね、ここぞって時の彼の行動が粋なのよ。さすが年の功!

まっでもね、とにかくあの脱獄直後のシーンが見られただけでもこの作品に価値はあった。



この世界から
あらゆる差別が無くなりますように。


2020/10/04


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