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『Fukushima 50』

◆あらすじ◆
最大震度7に達する巨大地震により発生した大津波に襲われた福島第一原子力発電所。浸水によって電気が止まり、冷却できなくなった原子炉の温度が上がっていく。メルトダウンの危機に直面した発電所で、全体指揮を執る所長は、状況を把握できない本社や官邸の指示に憤りながらも、現場作業員を励まして危険な任務にあたる。


ド頭に「事実に基づく」と出る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

『これ本当にそのまま鵜呑みにしちゃうヤツ居るよ』

観終わって2日経った今、こんな風にしか思えなくなった。

もしこれが完全にフィクションとして作られ上映されたのならば全編を通した緊迫感の中、政府や本店と現場との齟齬への苛立ちは本当に怒りを呼ぶし、現場のプロ達を混乱させる男社会=縦社会のイヤーな部分が見える度、安田成美演じる女性スタッフの機転の利いた働きがオアシスの様だし彼等の決死の働きのお陰で今私達は無事なんだと改めて感じるし長年、原発を有する町の姿を背景に【原発の是非】もテーマの一つなんだと思える。
そして、佐藤浩市と渡辺謙の【おっさんブロマンス】が甚だしいぞ(笑)・・・・と言う感じ。

しかし、政府の対応や本店の姿勢がどこまで忠実なのかが気になったんだよなぁ。
事実に基づくというからには偏りがあってはイケナイのでは?

モヤモヤするったら無いわ!!


確かに原発事故が最悪の事態にならなかったのはあくまでも偶然で彼等が防いだわけではないのは事実、そこを指摘する意見もあるようだ。でも今作ではそこを隠したりはしていないちゃんと見れば解る。
現場の彼等の決死の思いは嘘ではないし自然に対する人間の傲りを考え直す意味でも是非観て欲しい作品だとは思う。そういう意味ではとても良く作られた作品だ。リアル感もそうだし役者の演技も相当に響く。(昔とは)全く別人に見えるダニエル・カールの起用もまぁ何歩か譲って悪くないとしよう。

ただ、当時の総理の描き方には疑問が残る。名前さえ与えて貰えない存在なのが先ず驚きだ!佐野史郎が演じているのにも関わらずだ。もちろん当時は菅直人元総理で彼を陥れたいのか?と思えるくらいには酷い描き方だった。政府側は全て無名、役職名だけが飛び交う・・・非常に悪意を感じた。
恐らくベントの辺りで官邸と現場の遣り取りの行き違いをどう捉えるか?で解釈が変わりそうだ。
本当に当時の総理はあんなに抑圧的に現場無視の姿勢だったのか?素人と言う自覚は恐らくあっただろうと想像に容易いだけに疑問は膨らむばかりだ。
あまりにも一方的な描き方でそこについてのリサーチが本当になされたのか?これは事実なのか?と思わざるを得ない。
何処目線の演出なのか?そこが気になる所だ。

そしてもう一点。
まるでオアシスだったと前述した安田成美演じる女性スタッフの扱いだ。
上の言いなりな男社会で唯一上下関係など無視の発言を男性に止められると言う始末。
まるで昭和の世界だ。
私が【オアシス】と書いたのは彼女だけがまともに見えたからなのは言うまでも無い。
ただ、スクリーンに映し出される男ばかりの世界で彼女の存在は会社で言う【お茶くみ】程度のものにしか映らないのが残念だ。
彼女が彼等に対して献身的に働く事で現場の彼等の人柄を良く見せるのには成功しているがね。



人間の傲りが招いた大参事をこれからどう考えるのか?
結局はそこに尽きるわけだ。

とにかくこの作品が素直に一番のテーマを見失わない様にだけ祈るばかりだ。

とても巧みに演じられた両主演が魅せる【絆】に涙。


なんか本文が結構マジになっちまったのでここで付け足し・・・

火野正平、三浦誠己、田口トモロヲ、篠井英介、津嘉山正種、矢島健一そして堀内正美・・・いやぁ、好きな役者がたっくさん出演してたのは楽しかったぞ。

特に大好きな堀内正美氏は東電社長役なんだが最後の最後に登場でビックリ!
いつも彼にはビックリさせられるから嬉しさと驚きの狭間で揺れるファンゴコロ・・・(笑)



2020/03/08


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