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映画感想『シカゴ7裁判』

原題「THE TRIAL OF THE CHICAGO 7」

◆あらすじ◆
1968年8月、シカゴでベトナム戦争に反対する大規模なデモが行われ、警官隊と衝突する事態に発展、その責任を問われ首謀者とされた7人が逮捕・起訴され、全米中の注目を集める裁判が行われた。本作は"シカゴ・セブン"と呼ばれた彼らを待ち受けていた悪名高い裁判の行方を、脚本を手掛けたアーロン・ソーキン自ら監督も務めて映画化。




『in 1968, democracy refused to back down.』

冒頭、畳みかける様な時代背景の叙説。
ベトナム戦争でどれだけの若者が無駄に派兵され命を落としたかが解っていても憤りが込み上げる。

デモ弾圧の裁判を中心にした法廷劇だがその時代の活動家達の思想の違いも描かれ非常に興味深かった。

現在のBLMやヘイトクライムに通ずるアメリカの差別・偏見により二転三転する裁判の裏側がおぞましい。

何故7人なのか?
劇中に様々な理由が出て来るが殆ど関係ない2人を同席させる事で彼等を無罪にし世間の印象を良くする的な裏工作まで仕込んで来る政府側の闇の奥深さが恐ろしい。

史実にどこまで忠実かは定かでは無いが、当時起こった他の出来事も織り込まれ非常に中身の濃い作品だ。


監督・脚本は名作『ソーシャルネットワーク』のアーロン・ソーキンて事で随所にウィットに富んだ演出もあり、脚本の上手さが読み取れる。

全体的に隙のない会話劇となってるから一言一句聞き逃したくない感がどんどん生まれて引き込まれて最後にはそれぞれの主張の応酬に呑みこまれた感あった。

原語が分らないと字幕を読むのが結構忙しいがそれでも緻密な運びはあのラストの感動に完璧に結びついたと言える。
いやぁ、何気ないチョットした仲間同士の会話からあのラストに持ってくんだねぇ・・・てか、エディ・レッドメイン君の存在が薄いのか濃いのかワカラナイ感じもなるほどねって思ったよ。

凄く役者が活きてて、ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じたシュルツも政府側に疑問を持ちながらも公正にと言う姿勢をきちんと見せてくれて彼が何かしらの行動を起こすって期待させる雰囲気も良かったしマーク・ライランス演じるクンスラー弁護士も素晴らしかった。とても『レディ・プレイヤー1』のオアシスの創始者とは思えなかったわww

サシャ・バロン・コーエンのアビー・ホフマンもかなり印象的だね。サシャは可笑しな役柄が目立つけどこういうのやらせるとホント巧いなぁって思っちゃう。風貌はドラッグもフリーセックスも来いなヒッピーだけど中身が全然そうじゃないじゃないかぁぁ~~的な?!
後半の語り部として素晴らしかった。

あとホフマン判事のフランク・ランジェラが見事だったなぁ。あのボケてんのかどうなのか?の境目を良くもまぁああも上手く演じたよね。
判事が「差別主義者だなんて親にも言われた事無いのに!」(※実際はそんな風には言ってません)なんてアムロ張りに発言する所なんて笑っていいのかダメなのか非常に迷ったわ。いやアンタ完全にそっち側の人じゃない?ってツッコみたくなる場面だった。

ブラック・パンサー党のボビー・シールがその7人の中に居た背景もフレッド・ハンプトンとの遣り取りや彼の死の背景まで盛り込んで来る辺りはこのデモ弾圧はひとつの事案だけでは描けない権力と差別、偏見の連鎖と言うか繋がりを明白にしてる。

それを思うと同じアカデミーノミニーで今作でも要所に登場したブラック・パンサー党のフレッド・ハンプトンを描いた『Judas and the Black Messiah』も合わせて観たいところだ。

劇場では無理かぁ・・・多分。


2021/05/14


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