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映画感想『ウーマン・トーキング 私たちの選択』


原題「WOMEN TALKING」

◆あらすじ◆
2010年、自給自足の生活を送るとある宗教コミュニティでレイプ事件が多発する。事件がついに明るみに出ると、長年にわたって尊厳を奪われてきた女たちは男たちが不在の2日間で、自分たちのこれからをどうするか決めるために話し合いを行うことに。やがて、残って何もしないか、残って闘うか、それともここを去るかという3つの選択肢で投票を行う彼女たちだったが…。


ワンカット目の威力が凄かった!

このシーンでベッドに横たわる彼女に何があったのか?
この異様な空気が意味するもの、この世界がどんな場所なのか…

観客の想像力を一気に搔き立てるファーストカットだ。


そして喋る成人男性が1人しか出て来ない潔さ!
その1人もベン・ウィショー起用でなんか個人的にとっても納得しちゃった(笑)

しかし描かれるこの世界が2010年の実話とは!
この時代に未だこんな不条理な世界が存在するなんて誰が思うだろうか?

宗教コミュニティの恐ろしさ・・・いや男性至上主義の齎すおぞましさ。

もちろん、宗教上の信念を持って自分達の生活を守るメノナイトやアーミッシュは存在するし宗教を否定するものではないがだが一歩間違えばこう言う世界が出来上がってしまうと言う事。

「天国へ行けなくてもいいのか?」と言う台詞がやけに耳に付いて無宗教な自分にとってこの言葉の効力が無な事でイラついたのだ。

神はそんな【赦し】を説いてるのか?

神に背いてこの土地を出て行けば天国に行けないから男たちにレイプされ続けろって事?とね。

コミュニティ内の全女性達に背きその宗教理念を貫くのがフランシス・マクドーマンド演じるヤンツだが彼女もまた女性としてこの悪しき風習を次世代に継がせてはいけないと思ってはいたのだろう。

時代錯誤な古めかしい衣装、ビルや他民家が一切目に入らない土地を表現するロケーション的に大昔の逸話風ではあるが非常に高密度な会話劇で構成され完成度は高い。

彼女達の決断に至る経緯の中心を3人の女性が担うのだからそれぞれの立場や環境を背負う人物像をクレア・フォイ、ルーニー・マーラ、ジェシー・バックリーが魅せてくれる。

“女性”と言うマイノリティを描きながら多様な差別への言及も現代へのメッセージ性を感じる。

オーガスト・ウィンター演じるメルヴィンは重要な役どころ。

教育も受けず閉ざされた世界で尊厳を奪われ生きる女性達の未来を臨む2日間、そのスリリングさに息を呑む。


モンキーズの『デイドリーム・ビリーバー』が切なく感じる演出とその感性は見事だ!
『ジョーカー』『TAR』に続きまたもやその才能を発揮するヒドゥル・グドナドッティルは素晴らしい仕事人だなぁ。

国勢調査登場シーンは或る意味外界との唯一の接点として「ハッ!」と現実(現代)に引き戻される重要シーンだと感じた。

あのラストカットは観客を少しホッとさせるが全く外界の知識が無だった彼女たちにとって“世界”はどう映ったのだろうか?

生きて来た環境を捨てるのは簡単ではないし、勿論助けは必要だ。
しかし自分の未来を作るのは自分しか居ないのだ。
そして将来、その選択が正しかったと思える事が何より大切。



サラ・ポーリーの初監督作にしてその才能に充分浸れたので今後がとても楽しみだ。


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