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映画感想『ブレイブ -群青戦記-』

◆あらすじ◆
全国屈指のスポーツ強豪校"星徳学院高校"で弓道部に所属する西野蒼は、才能はありながらも消極的な性格から成績には恵まれていなかった。彼の幼なじみで、それぞれ弓道部と剣道部で活躍する瀬野遥と松本考太は、そんな蒼のことをいつも気にかけていた。そんなある日、突然の落雷の後、学校の周囲が見慣れない風景に変わり、野武士の格好をした男たちが現れる。生徒たちが刀を持った彼らに次々と襲われパニックになる中、歴史オタクでもある蒼は、自分たちが"桶狭間の戦い"直前の戦国時代にタイムスリップしたことを悟るのだったが…。




原作は未読。

序盤の容赦無いバイオレンスから完全に掴まれた。

現代の平和ボケ状態に不服を抱く頭脳明晰な若者が戦国時代、それも桶狭間の戦い直前、織田がこれから天下取りに邁進する時期に舞い降り、陰で時代を乗っ取ろうと企てると言うこの物語のお膳立ての設定も嫌いじゃない。歴史を知った上での遣り口は汚いがそう考える愚か者が居てもイイ。

ただ、その中で天下を取るくらいの戦国武将たちはやはり只者では無いと言う描き方に好感が持てる。
松山ケンイチ演じる織田信長もこの(未来から来て)密かに策略を企てる無名の武将に違和感を覚える設定。

それ以上に、三浦春馬演じる徳川家康は未知の姿で目の前に現れた若者達に自分の生きる時代の先を見定める。それは自分が求める戦いの無い【平らかな国】である事。
この家康の人物像を三浦春馬が見事に演じ切っていて素晴らしかった事がこの作品の一番の見所だと言っても良い。

本編はタイムスリップものならではの文明の違いを活かし安穏とした現代への警告にも思える内容。
でも人間の根底に在るモノは決して変わらず絶する命の前に21世紀の高校生達はどう振る舞うのか?と言うテーマがある。

この高校の部活動が数々の優勝経験を経て優秀なアスリートを育てている設定が前提にあるのだが、面白かったのがいざ戦いに挑むとなった時の各部活動のチーム色が部長の個性によって違うのが戦国時代の武将と被ってちょっと面白い。
自然と統率力のある者が指揮を執り、そこに全幅の信頼を向ける各部の生徒達。
しかし中には潜在的に能力を持ちながら表に出さないタイプも居て、人間の成長と能力発揮のタイミングと言う視点もこの作品を牽引する要素の一つだ。

戦いの中、10代と言う思春期の姿も垣間見られて主人公3人の淡い恋愛模様や部長同志のブロマンス的要素も個人的には好きだった。
もちろん、文武に長けた高校生って事で戦うシーンはアクションもめちゃキレてたし頭脳を駆使した作戦も楽しめた。

自分の能力を活かせる【戦場】で如何にそれをフル活用し仲間を守り、自分達の目標に到達できるのか?
命などあって当たり前の現代から自分の命を費やしても仲間や恋人を助ける時代への生き方の変化の見せ方がなかなか自然で良かった。

今に繋がっている過去の現実を知る事で命の尊さや【一所懸命】と言う言葉の意味を学ぶ。
家康が「一生懸命?」と首を傾げ「一所懸命だろ?」と言い直す所大好きだった。
そう、一生懸命なんて無理っしょ!いつ気抜くんだよ(笑)

ここぞと言う時に如何に自分の全てを懸けられるか?って事。
今の時代、さすがに命懸けろとは言われないけど・・・でもそれくらいの気持ちで何かを成し遂げた時その事実は自分の人生最大の糧になる。
それは間違い無い!
それが生きる自信になって図太くなるんだよ。
あたしゃ大分太くなっちまったがねww。


三浦春馬はこの世を去る前に何本の作品に携わっていたのか?
亡くなった今観ると改めてどの作品もとても意味深い役どころだ。
この作品でも彼の遺した物は大きい。

リアリティラインをどこまで求めるかは人それぞれだろうし物語は先が読めてしまったがそれでも時代に変革を齎せるのは若いチカラなんだよな・・・と老婆心ながら思うわけです。

若者よ!
大志を抱くのはタダだよーん。

2021/03/20


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