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『風をつかまえた少年』

原題「The Boy Who Harnessed the Wind」

◆あらすじ◆
2001年、アフリカの最貧国のひとつマラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で出合った1冊の本をきっかけに、独学で風力発電のできる風車を作り、畑に水を引くことを思いつく。しかし、ウィリアムの暮らす村はいまだに祈りで雨を降らそうとしているところで、ウィリアムの考えに耳を貸す者はいなかった。それでも家族を助けたいというウィリアムの思いが、徐々に周囲を動かし始める。


2001年の実話を題材にした作品。

キウェテル・イジョフォーの初監督作品だがとても見応えのある秀作だった。

アフリカの貧困国マラウイが舞台だが、先ず21世紀にまさかの雨乞い原始農業と言うのにビックリさせられる。
文明社会にどっぷり侵された人間にとってはトラクター一台も無い農業と言うのに衝撃だ。

そして第二のビックリは小学校(8年)までは無償で就学率が92%に比べ、その後の4年間いわゆる中学からは学費が納められないと即退学と言う状況。その就学率は15%だそうだ。

電気の普及率が2%で夜は勉強も出来ない・・・(電気あってもしなかったけど・・・w)

自然相手の農業は干ばつで作物の収穫も儘ならず学費どころか日々の生活にさえ困る始末。

だがこの貧困と言う苦難がウィリアムを目覚めさせる。
学校は中退になるが違う手段で拾う神もあり図書館で知識だけは得られる事で彼は家業の為に何か出来ないかと思案する。

もうポスターがネタバレなので言ってしまうが彼は風車で農地に水を引けないかと考える。

このね、彼が風車を見出すまでの過程がイイのよ。
日照りの中でも風は土ぼこりを巻き上げ、身体を撫で、絶えず彼に触れてるんだよね。
何処かで彼が風を意識してるのが伝わってくる。それが自然で凄くいい。

そして出会う貴重な本!
【USING ENERGY】

だが未来を見つめる目(芽)を摘む無知な大人達にも驚かされる。

全ては教育の軽視によるもの。

何とか風車の実験モデルを作り父親に説明をしようとするんだけど一蹴されてしまう。
その時発した、僅かな期間でも学校へ通い父よりも知識を得た少年の言葉が印象的だった。

生活や目の前の事に手一杯になると人間は全ての思考も行動も狭い視野に押しやられてしまう。この時の父親はまさしくそれで家族が【今】生き延びる事だけに奪われてしまっていたね。一家の主だからそれは仕方ない事だけどね。
苛立ちが先に立ってしまうと思考能力は低下する。

でもこの時の母親の偉大さ!!・・・美しく聡明で毅然とした彼女の姿が素晴らしかった。
彼女が居なかったらウィリアムの偉業は成し遂げられなかったかもしれない。

このシーン大好き!!
パーツ確認じゃ!

日本でも最近【創意工夫】が失われつつあると感じるが改めて教育=知識は身を助けると言う事を考えさせられた。
この映画は大人が学ばせられる作品だな。

そして、そんな国の政治的背景や民族間の関係性も背後に見せる秀作。

『民主主義は輸入した野菜と同じだ、すぐ腐る』・・・冒頭のこの言葉がかなり印象深く最後まで残るんだがこれは効果的な演出だったと思う。

途中で挟まれる政治要素の惨さや民族間の食料を巡る争い・・・この2つのシーンは貧しい国が何としてでも貧困から抜け出さなければならない理由づけとして説得力があったな。

日本の民主主義も既にかなり腐っておる様に感じるが如何なものだろうか?・・・・・


PS:キウェテル・イジョフォーは凄い才能だけど個人的に『キンキー・ブーツ』が一生残るだろうなぁ…(笑)


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