MMS151河崎さん

「「偏りを活かせる社会を創るために共同体を手軽に実現できるZEN OSを開発」GIFTED AGENT代表 河崎純真さん

本記事は2017年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●ご挨拶と出演者紹介

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三木:151回マイクロものづくりストリーミング本日も始まりました。本日はGIFTED AGENTさんにお邪魔して、河崎さんの人生とZEN OSという新しい取り組みについて聞いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

河崎:お願いします。


●河崎さんのバックグラウンドについて

三木:まず河崎さんと私が知り合ったきっかけなんですが、Zen2.0を一緒にやってる宍戸さんのご紹介で1カ月半ぐらい前かな?

河崎:はい、それぐらい前ですね。

三木:開発されているZEN OSというzenつながりでお話をさせていただいて、非常に私も感銘を受けたので何か一緒にできればな──ということで、ZEN OSを使った新しい仕組みをぜひZen2.0でも導入したいということでお願いして、今日の取材に至ったということになります。河崎さんがどういうところで生まれてどういう経緯で今に至るかというのを、ちょっとご紹介いただけますでしょうか。

河崎:分かりました。私は生まれは岡山なんですけど、5歳まで広島で育って、その後大分県に10年間いました。13歳ぐらいからプログラミングを始めていて、ウェブプログラミングなんかをやって「ああ、楽しいな」と思ってたんですけど、15歳の時に家出しまして。

三木:何がきっかけで?

河崎:一つは、学校が嫌いだったんです。あの空間にずっと座って、じっとしていられなくて。

宇都宮:嫌ですよね。

河崎:そうなんです。先に言っておくと自分は発達障害のADHDで、発達障害を抱える人にプログラミング、デザインを教えるという学校をやっています。で、そんな自分が学校が苦手で行きたくないし、当時は反抗期だったので家を出まして。

三木:15歳というと中学3年生。

河崎:高校も行かずに……。

三木:家出して、まず最初にどの辺に行ったんですか?

河崎:まずスウェーデンに行きました。

三木:いきなりスウェーデンに!?

宇都宮:旅費とかは?

河崎:地元でちょっとバイトしてお金を貯めて、スウェーデンのほかにも中国とか韓国とか……。

三木:いきなりスウェーデンに行ったんですか? スウェーデンでは何を?

河崎:何もしてないです。ただブラブラしてました。バックパッカーで、ほぼ何も持たずに行って。

宇都宮:何がきっかけなんですか? スウェーデンっていう行き先は。

河崎:スウェーデンは世界で一番進んでいる国だって、当時は聞いていて。

宇都宮:見に行きたかったってことですか?

河崎:そうですね。「一番進んでいるのはここなんだよ」みたいな本を読んで、行ってみたいなと思っていて、スウェーデンだけじゃなくてノルウェーに行ったりとか、あとはアメリカとかです。

宇都宮:何年?

河崎:10年ぐらい前です。

宇都宮:おいくつなんですか?

河崎:今25です。

宇都宮:若い(笑)。俺の半分ぐらい(笑)。

三木:そっか。家出してまだ10年しか経っていない。

河崎:ちなみに2年前、初めて家に帰りました。

enmono:(笑)

三木:ふらっと帰ったんですか?

河崎:ちょっと帰ろうかなと。まあ父母とは、実はフェイスブックでつながってたりもするんですが。

宇都宮:一応ソーシャルクラウド上では取りあえずコミュニケーションを……。

三木:どんな反応でした?

河崎:いや、そんなに大したことなかったです。当時はバックパッカーしながら、多少年齢を偽りながら働いて、それからずっと自活していて16歳で高等学校卒業程度認定試験を取ったんです。エンジニア、IT系のプログラマーとして働いてて、遠隔電子カルテ、物流のポータルサイト、Webサイト、FXのトレーディングシステムとかを色々作っていて、たまたま17歳の時にQ&Aなうという会社にジョインしたんですけど、それがスタートアップで、1年後にエグジットしたんです。

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三木:それはどこの会社?

河崎:OKWAVEさんに3000万円でエグジットさせていただいて、これは当時プレスリリースで出されたんですけど、その後はTokyoOtakuModeに参加して、クールジャパン機構からもご支援いただいて。

宇都宮:すごい伸びてますよね。

河崎:ユーザーがフェイスブック上だと2000万人近く。99%が海外のユーザーで、アメリカに本社があって、そこの立ち上げから、エンジニアとしてもお手伝いさせていただいていて、その後実は大学に入りまして、慶応に……。

三木:SFCだっけ?

河崎:SFCじゃなくて文学部哲学科です。

宇都宮:哲学に関心があったんですか?

河崎:すごく関心がありまして、自分は元々エホバの証人の家庭だったんです。すごい厳格なクリスチャンの家庭だったので、それもちょっと嫌で家出したんですけど。人はなぜ生きているかとか、神はいるのかいないのかとか、そういうのが色々あって哲学にちょっと……。

宇都宮:サイエンスとフィロソフィは結構つながりますもんね。理系の真理の追究と一緒なんですよね、アプローチは。

三木:まだ在学してるんですか?

河崎:実はまだ在学してるんです。

三木:何年生?

河崎:厳密に言うと今2年生で5年目です(笑)。もう今年6年目になってしまうかもしれないですが。

宇都宮:卒業される予定は?

河崎:卒業したいんですけど、でも大学に入ってから、会社もちょっと時間の余裕もあったので、1、2年目で学校に飽きてきてしまって。

宇都宮:それは授業があんまりおもしろくないんですか?

河崎:授業はすごくおもしろかったんですけど、ITがスタートアップとか盛り上がっていて、俺もやっぱりもっとやりたいなと思って、それで同じ慶応のメンバーで会社を作ったんです。同年代だけでワーってやってたんですけど、それが見事にコケまして。

三木:どんな会社だったんですか?

河崎:そのコケたヤツは、ECサイトにチャットをつけるというサービスでした。スタートアップとしては合計5回やってまして、最初はQ&Aなう、TokyoOtakuMode、次にディグナという、当時Twitterで流行語大賞を獲った”うめけん”と一緒にやっていて。

その後ミチシルベという会社を慶応の金田卓也君という、15歳の時にアフィリエイトで3000万円稼いで親の借金を全て返済したというマーケティングのすごい奴と一緒にやりました。

それは5000万円ぐらいシードで調達して、ベースは女の子向けのアイドル系の応援サイトとか作ってガーッと盛り上がったんですけど、急激なスピードで人を雇いまくったので自重ですぐ潰れた、っていう。サービスはいい感じだったんですけど、ワーッと組織が広がり過ぎてドーンみたいな感じで、これも失敗しました。その後はSFCのメンバーで、オハコというデザイン会社を。これはまだ成長していて、ベースはUI/UXデザイン会社なので受託なんですけどそれに関わって。スタートアップとして最後にやったのが、アメリカで会社をもう1回作ってVR・ARのゲームエンジンを作ろうっていう事業だったんですけど、その代表とビジネスの方向性が食い違って……。そんなわけで5回ぐらいスタートアップをやって、そこで「じゃあ次は何をしようかな」と思った時に、次は50年ぐらいやれる仕事がしたいなと思って、色々考えたら、発達障害というテーマがあった。母も発達障害ですし、自分もそうなので、そういう人たちが才能を活かせる社会を創りたいな、というのが今のゴールす。


●GIFTED AGENTの紹介

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三木:ここがGIFTED AGENT

河崎:はい。ここが。

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三木:スタートしてどれぐらいですか?

河崎:厳密に言うと3年目です。

三木:結構続いてますね。

河崎:先ほど話したミチシルベという会社の前ぐらいからやっていて、同じ慶応の、発達障害に興味があるメンバー3人で立ち上げたんですけど──1人は発達障害の当事者で、精神病院に3年間ぐらい突っ込まれた小学生だった奴と、元々教育とかに興味があったメンバーと。それは本当に趣味というか、片手間で、スタートアップのほうをメインでやってたんですけど、発達障害にがっつりコミットしようと決めたのが去年の1月1日ですね。

三木:さっき朝会にも参加させていただいたんですけど、チェックインをするんですね。

河崎:チェックインします。そのチェックイン・チェックアウト制度はカマコンとか行って「ああ、これめっちゃいいな」と思って、コピー&ペーストをさせていただきました。

三木:何か変わりました? チェックインを導入してから。

河崎:「間」が、いい感じになりましたね。鎌倉関係にはすごい参加させてもらって、禅関係にも参加させてもらって、関係性とかコミュニティの質がちょっと上がってきたな、という感じがして。

宇都宮:鎌倉にお住まいじゃないんですか?

河崎:実は先月、1カ月間だけ鎌倉にステイしました。ミライエという古民家に。

宇都宮:どんな感じですか?

河崎:めっちゃ良かったです。今月はミライエに泊まって、朝円覚寺で早朝座禅し、マインドフルネスした後に満員電車に乗って渋谷に……。(笑)

宇都宮:横須賀線?

河崎:横須賀線の座れない電車の中をワーッと……。

宇都宮:それは苦行ですよ。

河崎:マインドフルネスからのマインドレスみたいな感じで出社をするというのを。

三木:大仏様の前で暁天座禅会した?

河崎:そうです。暁天座禅会をやってました。

三木:いいですね。すばらしい。

河崎:結構毎日がエンターテインメントだなって。

宇都宮:鎌倉ライフ。

河崎:スズメがあそこの大仏さんの柱の上に巣を作って、座禅してる時に落ちちゃって亡くなっちゃって、お坊さんが大事に大事に供養をされてた姿が記憶にあります。命の循環を感じる豊かな環境だなって。

三木:向こうにもオフィスを作ってみますか?

河崎:そうですね。

三木:分室みたいな。

河崎:ちょっと作りたいなと思います。

宇都宮:新南口から一本ですから。

河崎:一本です。かなりアクセスはいいですね。

三木:だから僕らもco-baっていうワーキングスペースを借りてるんですけど。

河崎:そうなんですか?

宇都宮:三木さんが便利だからっていう理由で。

河崎:今は学校の第二弾とか、鎌倉で何かやれないかなと考えていて。

三木:いいですね。

河崎:厳密に言うと第三弾になるかもしれないんですけど、ちょっとやってみたいなと思ってます。

宇都宮:僕らもzenschoolっていうのを2011年から7年やってるんです。

三木:そうですね。7年やってます。

河崎:禅を用いた学校というか、学びの場のデザインがすごく気になりますね。で、今はGIFTED AGENTで、単に発達障害者にプログラミングとデザイン、VR(ヴァーチャルリアリティ)とかそういったものを教えて、それで活躍できる場をどんどん創ったり、紹介していくということをやってます。

三木:収益構造みたいなのはどんな感じなんですか?

河崎:一応福祉施設になるので……。

三木:そうなんですか? すごいハイテクな福祉施設ですね。

河崎:そうです。

三木:ないですよね。そういうのってアメリカとかにあるんですか?

河崎:アメリカでは「なくはない」っていう感じです。VRとデータサイエンスを教えてる福祉施設は、たぶん日本だけじゃなく世界でも珍しいと思います。

三木:何か補助みたいなのが出るんですか?

河崎:本人負担はあるんですけど、医療費の公的負担みたいな形で、学費の一部を国から補助してもらえるという形になってます。

三木:本人はプログラミングとかデザインを学べると。

河崎:学んだ後、企業への就労につなげていく、ってことですね。

三木:就職斡旋みたいなのもやってるんですね?

河崎:そうですね。あとは起業を推進していて、実際に今度うちで新会社を作って、そこに生徒にも開発メンバーとしてがっつり入ってもらって……。

宇都宮:起業経験がおありだからそういうノウハウも移転しつつ、企業に勤めるっていう選択肢以外もあると、気は楽ですよね。特にエンジニアは手に職を持ってるから割とどこでも食っていけるし、どんどん進化していきますからね。

三木:ここを卒業した人が日本中で起業していくと、ネットワークになるじゃないですか。

宇都宮:世界中に広まればいい話で。

河崎:それをやりたいなと。

三木:すごいビジネスモデルですね。初めて知りました。普通に教えているだけなのかなと思ったらそうじゃないんですね。

河崎:先のほうまで考えているんですよ。

宇都宮:卒業生のネットワークが広まっていくという部分で言うと、僕らもzenschoolで受講生に教えていて、彼らが新事業を立ち上げてきていたのですが、最近ではそれぞれの卒業生が事業をどんどん成長させていくと、彼ら同士のネットワークという、zenschoolコミュニティともいえるものがパワーを持ち始めてるっていう流れが起きていて、教えることプラスアルファで、卒業生同士のつながりの方が、パワーを持つようになってきてるんです。だからコミュニティ同士でコラボできればいいですよね。

三木:いいと思います。zenschoolで新しいモノを作るじゃないですか。モノづくりはできるしデザインもできるし、中のプログラム、組み込みとかそんなに得意ではないので、そういうところで一緒に。例えばさっきのIoTロボットの中のプログラムとか受け側のアプリ側の開発とか。

河崎:うちはどちらかと言うとソフトウエアばかりなので、ハード面をぜひご相談させていただきたいです。

三木:もうどんどん。いっぱいいますので。

河崎:すごくうれしいですね。

宇都宮:中小企業のオーナー経営者はかなりぶっ飛んでますから(笑)。

河崎:そんなイメージがありますね。

宇都宮:サラリーマンっぽくないので(笑)。

河崎:皆さん経営者だからおもしろいですね。

宇都宮:ちょうど明日も発表会がありますし。co-baで。

河崎:経営者は変な人が多いですね。良い意味で。

三木:一応私もなんちゃって経営者です(笑)。

宇都宮:なんちゃってですけど仕方ないです。

三木:それでいよいよZEN OSの話にいきたいと思います。


●ZEN OSとは

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三木:後半は今河崎さんが取り組んでいらっしゃるZEN OSという。社会基盤を創るお話を伺っていきたいと思います。ZEN OSとは一体何でしょうか?

河崎:このGIFTED AGENTという組織で、発達障害の方が活躍できる社会を創りたいなと思って活動してるんですけど、今改めて起業家として社会課題を解決したいと思った時に色々考えたら、解決できない、と思って。

三木:解決できない?

河崎:はい。なぜかと言うと、今の社会構造が古いからです。社会問題って、社会の問題なんです。社会構造の問題であって、人の問題ではない。発達障害の問題とか教育、医療、福祉、政治とか色々あるんですけど、そもそも学校システムとかまず問題だなと思っていて、教師が悪いのか校長、副校長が悪いのか、あるいは生徒か、教育委員会が悪いのか……。教育委員会は何によって構成されてるのか? 文部科学省が悪いのか。文科省は何によって形成されてるのか? 文科省って管理監督省庁だから、つまり政治だよな。政治って、結局誰の問題? 国民の問題? 国民の問題って、教育しないといけない……教育とか意識の問題って、教育を変えないといけない……あれ?……みたいな……。

三木:グルグル回って……。

河崎:グルグル回ってしまって解決できない。イメージで言うと、Windows95の上で新しい社会がずっと生まれてるみたいなものだと思うんです。別の言い方をすると、古い建物があって、あの柱が問題だと。あの柱が邪魔だってみんな分かってるんだけど、その柱を壊しちゃうと崩れちゃって、壊せない。だから社会課題って解決できない、というのは困ったなと思って、それを解決するソリューションって何だろうなと考えた時に、新しく建物を作ればいいんだなと気がついたんです。別の建物を作ってしまう。今あるその建物を変えるんじゃなくて、新しい社会の在り方、教育の在り方、学びの在り方、医療の在り方、政治の在り方を創ってしまって、それがいいと思う人たちで、そういった社会を生きていく。今の社会がいい人はそのままいればいいし、新しい社会がいいと思う人は、新しい社会に行けばいい。すると徐々にバランスが取れてきて、既存のタイプを壊すんじゃなくて……。

三木:「こっちの水がうまいよ」みたいな話でしょ? 「こっちのほうがおいしいです。良かったらこちらへどうぞ」みたいな。

宇都宮:新しい国を創る感じですね。

河崎:そんな手法なら解決できるな、と思って、それをやろうと。そもそも2045年とかいう未来を考えると、結構テクノロジーも進んでるし、そのテクノロジーをどう使えるのかな、と思いまして。

河崎:今創っているのがZEN OSという、あらゆるものは〈空〉である、ゆえにあらゆることが正しい──という前提でコミュニティを形成するシステムです。我々のテーマは、偏りを活かせる社会を創るということですから。

河崎:我々が今やってるのは会社ではあるんですけど、そこで何を創りたいのかというと、共同体を創りたいんです。発達障害の方に関わる就学機会とか色んな課題っていうのは、発達障害の方が受け入れられる場が、結局今の社会としてはデザインされてなくて……。

三木:私も苦労しましたよ。一所懸命に合わせようとして、色々苦戦して。

河崎:学校に行って、普通に就職して結婚して、定年まで働いて……って人にはいい社会なんですけど、それができない人には何もフォローがない。そういう人たちが活躍できる場をどんどん創っていこうというのが、基本的に我々が考えていることです。それは別に閉じたコミュニティを作るんではなくて、我々が新しい社会モデルを創っていって、それに「いいな」と思う人がいたら、どんどん参加してきてほしいと思っています。我々の創る新しい社会の在り方を民間の中で形にしていって、それがいいなと思ってもらったら、一般の社会にも影響が与えられるんじゃないかと。そういった社会を創っていくためには仕組み、概念が必要で、そのためのツールがZEN OSなんです。

三木:どんなものなんですか、このZEN OSとは?

河崎:ZEN OSとは、誰でも社会を創れる仕組みです。独自の通貨、地域通貨、コミュニティカレンシーを創って、コミュニティ運営ができる仕組みです。我々は偏りを活かせる社会を創りたいんですけど、そもそも色んな社会があっていいと思うんです。だから円環の中には、実は社会がいっぱいあるんです。

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河崎:我々の考える「偏りが活かせる社会」というのは、その社会の一つの在り方でしかないと。色んな社会が生まれたらいいな、と思って、こういうツールを創ってます。今ピラミッドで型に構造化された現在の社会ですが、インターネットとか各種のテクノロジーによって、いずれ分散ネットワーク化していく。その一つ一つがバラバラに存在し、かつ重層的に関わり合う社会が、未来での一般的な在り方になる──というイメージです。

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三木:宇宙ですね。

河崎:宇宙です。


●ZEN OSの実際の活用例とブロックチェーンについて

河崎:実際の利用イメージとしては地方創世、インクルージョンとかで、すでに活用が始まってます。

宇都宮:Next Commons Labって……。

河崎:はい。実はそちらの理事を兼任させていただいておりまして。

三木:それはどういうコミュニティなんですか?

河崎:Next Commons Labは、地方創世で「ポスト資本主義社会を創る」というテーマで起業家を集めて、地方資源を活用してビジネスを起こして、地域経済を生み出し、新しい地方の社会の在り方を創っていこう──という団体です。

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宇都宮: “人間の創造力である”。

河崎:そうです。

三木:これはまさに我々が今zenschoolで……。

宇都宮:僕らがやってることとすごくシンクロしちゃう。

三木:zenschoolに来る中小企業経営者は、頭の中脳が9割くらいお金のことと人のことでパンパンで、そっちにタスクを取られてるんです。メディテーションでそのタスクを取り除いた瞬間に、その人の創造性がボーっと出てきてそのままビジネスになると、ものすごいパワフルになるんです。創造性そのものが資本。

河崎:創造力が資本の在り方、無限に価値を生み出せる。

三木:そうです。無限の価値なんです。無限大。

宇都宮:でも、銀行はそこに融資しないんですよ。(笑)

三木:そうなんですよ。

一同:(笑)

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河崎:今この仕組みを、岩手県の遠野市で検証してるんです。実際に何をやっているかというと、ポイントみたいな形で地域で使える経済通貨と、コミュニティの仕組みを作っています。独自通貨をブロックチェーンで作って、今までのコミュニティ運営を、ダッシュボードとメッセンジャーでITを活用して実行する──というシステムを考えてます。独自のコミュニティアプリを作って……。

三木:「○○君この間ボランティアワークしてくれたから、じゃあ“3zen”あげます」みたいな?

河崎:はい、そういう感じで。独自のブロックチェーンを使ったポイントになっていて、独自のコミュニティカレンシーを作って、メッセンジャーでやり取りをしながら送り合える経済圏を創れる。コミュニティの中で、どういった感じでどのぐらいメッセージやコミュニティカレンシーが交換されているかを、みんなが管理画面上で見られるようにして。

三木:この地図みたいなのは何ですか?

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河崎:この地図は石川県加賀市に提案したもので、実際にコミュニティの中で流通が発生すると、その発生した位置が分かるんです。

宇都宮:アプリに位置情報があって?

河崎:そうですね。

三木:トランザクションがそこで発生しました、ってことですね。

河崎:トランザクションの発生やメッセージのやり取りを、どんな内容で、どの辺りなのかという情報で、コミュニティ運営の質を可視化する。基本的にはブロックチェーンを使って、公的個人認証とか、ある種行政サービスに近いようなものでも対応していきたいと思ってます。これから社会の在り方というものが大きく変わっていく時代だと思っていますが、ZEN OSでは誰でも簡単に共同体というものを創ることができて、ベースをオープンソースでやっているので、エンジニアがいてサーバーさえあれば最小のコストで実装できます。今までの社会では、地球という物理空間の中に人的資源として人の活動があったのが、共同体として国になっちゃうと、中央の多数決による目的の定義と、組織・資源・資金の分配が行われる。その結果としての日本の社会の目的が何かというと、GDP──国内総生産の向上なんです。

三木:GDPはもういいよっていう話になりますよね。それよりも、ハッピーを増やせばいい。

河崎:そうなんです。でもこういう構造になっちゃってるんです。だから将来的には、共同体ごとに経済圏を創ることができれば、例えば地方創世を大事にしたいとか、我々でいうとインクルージョン、偏りがあっても生きられる社会を創っていきたいとか、防犯防災とか、健康寿命延伸とか、地球環境の改善とか、色んなコミュニティごとに大事にしたいテーマの社会を自分たちで創っていくことができると思っていて、それを促進するものがZEN OSなんです。

三木:なるほど。すばらしい。この構想はいつぐらいから?

河崎:去年の夏ぐらいにまとめて、今アプリを整備している状態ですが、だんだん試験的に導入してくれる場所が増えてきてまして、我々自身はそういったコミュニティを創っていく中で、色々と試しながらやっている、という感じです。

三木:やっぱり仮想通貨というのが軸になるんですか?

河崎:ええ、ブロックチェーンは一つ軸になると思ってまして、その特徴として、非常にコストが安いことが魅力なんです。今までの銀行のシステムとか、かなり……。

宇都宮:決済のワントランザクションで、すごい手数料を取られたりしますよね。

河崎:あれ、そういうシステムでセキュリティとかサーバーとかものすごく気をつけないといけない部分のコストでもあるんですけど、ブロックチェーンだと、それが不要なんです。どこかの組織が管理してるのではなく、みんなでそれを管理しているので、特定の人や組織に負荷がかからないし、ものすごく信用ができる。一つの金庫に全財産を預けていて、その金庫が壊されたら終わりなんですけど、みんなでお互い持ち合ってたら、一つが壊れても他が助けられるという構造になっています。これがインターネット的なもので実現して、一つの大きな流れになると考えています。馬から車、手紙からメール、という流れで、銀行からブロックチェーン、あるいは中央集権的な構造からブロックチェーン、みたいな形に変わっていきますね、テクノロジー的な動きとして。

三木:金融界からは、かなり抵抗があるとは思いますが。

河崎:そうですね。抵抗はあると思います。

宇都宮:国内でもいち早く取り入れるところもあるでしょうし、エストニアとかちっちゃな国は、国家レベルで色々やってたりしますからね。

河崎:エストニアに法人を持っていて。

宇都宮:持てますよね、海外の人でも。

河崎:実際に行かなくてもいいんですけど、わざわざ今年の3月に、法人を作りに行ったんです。

宇都宮:新しい国を創るみたいなノリですもんね。

河崎:ノリとしてはそうですね。


●社会関係資本の大切さ

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河崎:これはまた次のテーマかもしれないんですけど、共感とか心とかが大事な時代だなと思っていて……。なぜ禅的なものが必要かと言うと、今人間って資本が3つあるんです。人的資本と金融資本と社会関係資本。人的資本というのは創造力だと思っていて、金融資本はクレジット、信用、マネーです。そして──これはいまやってるんですけど──社会関係資本という資本があるなと思っているんです。それは人々の関係性とか、文化とか──例えば「自分の家族と会えません、でも10億円もらえます、どっちを取りますか?」と問われたら……。

三木:家族。

河崎:家族。これはもう確実に、家族に10億円の価値があるということなんです。関係性に価値がある。これが大事なのは、家族だから、友人だから、親友だから、という理由で無条件に価値があるのではなくて、価値があるものを生み出せているコミュニティに、価値がある。これはが目に見えない資本──社会関係資本であって、そしてこれが今、足りてないものだと思うんです。みんな金融資本という、目に見える信用ばかりに頼ってしまって、それなのにその信用は銀行資本主義というぶっ壊れたシステムなので……。

三木:確かにぶっ壊れてます。

河崎:バグがあるんです。社会関係資本とは、目に見えないけど豊かである、という象徴なんだけど、それが今すごく、大事にされなくなってしまっている。

三木:それを見える化しようということですね?

河崎:そこにもう一つ禅的な思想が必要だなと思うのは、現代ではインターネット的なものが広がっちゃって──昔は生まれてから死ぬまでに関わる人って家族とか地元とか会社とかだったわけで、つまり100年前の人の人生の情報量の全部を1本のウェブニュース媒体に収めることも可能なわけで、今の人たちってものすごい情報量を持ってることになるんです。だからこそ、全員が価値観を相対化していかないと自分のアイデンティティが持てない時代になると思っていて、ある意味、全員が悟るというか、自分がどういう視点から物事を見ていくか──というのが大事になる時代だな、と。その時に、この視点とこの視点の共感性、という概念でちゃんと社会が創られていくことが大事だな、と考えています。

三木:だから、内面を見る作業としての禅が必要だということですね。

河崎:そうです。

三木:軸がぶれちゃうから軸を持つ、という。

河崎:自分は〈空〉の概念が好きなんですけど、『デカルトの誤り』という本がありまして、その誤りは何かというと、存在があるのは自我があるからだ、と勘違いしたんですね。

河崎:デカルトによれば、自我があると考えた瞬間に、もう存在してしまうんです。でも〈空〉の概念では、自我は〈無〉であって、そこに〈我〉はないわけですよね。その前提がないと相対化できない。

三木:確かに、強烈な我を持ってる人はうまくいかないんですよ。〈空〉な状態になって、お互いに何となく助け合う関係性があればそれが「場が担保されている」ということだと思うので、おっしゃる通りです。

河崎:でもこの概念、たぶん西洋からはなかなか生まれない。マインドフルネスがあるのはそういう理由だなと思っていて、まさにシリコンバレーとか西洋主義の我を突き通す人たちの集まりで、そこに限界がきて〈無〉になっていくという。

三木:この間たまたま松山大耕さんという妙心寺派のお坊さんの話を聞く機会があって、よく彼のところにも、シリコンバレーの突き詰めた人たちが来るんだそうです。

彼らはもうパフォーマンスは出してるけど、さらにパフォーマンスを出したいから「本当の禅を学びたい」という思いで来るんだけど、松山さんは「それは違います」と答える。「パフォーマンスを上げて、さらにパフォーマンスを上げても、どうせそこに天井があるので同じことですよ」と。「数字でパフォーマンスを上げるんじゃなくて、今やってることをじわっとでもいいから持続、継続させるような活動のほうがいいんじゃないか」と話をすると「そういう世界があったんだ」みたいに納得して帰る、という。パフォーマンスを求めて京都に来て、何かそこで全然違う視点の考えを手に入れて、感銘を深めて……。

宇都宮:効率とか生産性とか限界があるよね。

三木:結局長く持続的にやるためには、人を愛する慈愛の心が重要なんです。それを身につけるためには、今の西洋式のマインドフルネスでは不足していて、パフォーマンスは上がるけど、慈愛というところが少し足りない気がして。そういうものが元々禅には含まれているから、日本式の禅というのを彼らが学ぶとパフォーマンスも追求できるし、もっと関係性、人のことを思いやることにつながっていくんじゃないかな、ということで、Zen2.0を企画しています。

河崎:本当そうだなと思ったんです。社会関係資本の豊かさが今、すごく大事なのかなと思っています。


●河崎さんが考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

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三木:最後に皆さんにお伺いしている質問で、「日本の○○の未来」で何か想いがあれば語っていただきたいと思います。

宇都宮:日本じゃなくて世界でもいいですけど、未来に対して思うところを。

河崎:人類の未来です。

宇都宮:2000年後ぐらいですか?

河崎:人類はこの先も100万年とか続くと思ってるので、まだ一番最初の端っこの部分にいるんだと思ってるんですけど、そういうスケールで見た時に、次の変化として30年、50年後というところで見ると、より多くの人が多様な価値観でつながった未来が……そういえば「悟ってからが人生スタート」っていう言葉が好きなんですよね。

三木:誰かおっしゃってましたね。

河崎:最近好きな言葉で、今までは自分の価値観、自分の社会だけでずっと生きられて何も困らなかったけど、今はすごく多様な価値観、多様な文化の中で生きなければならない時代になって、自分の固定概念を捨てて、多様な価値観を知って、相対化して、というのが人間の成長として必要なのかなと思っていて──日本人だけじゃなく、人類として。

三木:今って、割と悟りやすい時代だと思うんです。色々悟りの教科書も出てるし、YouTubeもあるし、ワークショップもあるし、だから悟ることは、割と以前よりしやすい環境だと思うんです。

河崎:しやすいと思います。

宇都宮:悟った後ですね。

三木:悟った後その人が何をするかですね。

河崎:そうですね。悟った後に、自分の在り方を自己規定していく。自分で「これでいいんだ」と決めていくというのが、未来において必要なのかなと思ったんです。テクノロジーの流れとかはこのまま進むので、そうしていくと色んな人が「なぜ生まれてきて、なぜ死んでいくのか」みたいな、ちゃんと一人ひとりが自分に意義を与えて、在り方を全うできる時代になってくるんじゃないかなと。

宇都宮:それはいいですね。在り方を全うできるっていう表現が。

河崎:これはたぶん20年、30年で、そうなっていくんじゃないかな。

三木:そうですね。そういうシフトがもう実は今年の9月から、9月2日と3日で北鎌倉で発生すると。

河崎:すごい。

三木:その最初のポイントが、Zen2.0ポイントなんです。

河崎:Zen2.0ポイントです。

宇都宮:悟った後の世界、みたいなことですよね。

三木:人類2.0ポイント。

河崎:本当、始まりの起こりの部分だなと思いますね。

宇都宮:テクノロジーの進化も、たぶんそういう動きを実現させようとしている部分もありますからね。だからエンジニアも、モヤっとそういう方向を目指してるんじゃないですかね。自分のやりたいことを追求していく性格になりがちだから(笑)。

河崎:そうですね。

三木:Zen2.0ポイントをやってておもしろいのは、もうすでにそうなるような流れを、たまたま僕らが手伝っているだけなんです。何かやろうと思うと、全部その通りにうまくいくというか、普通なら登壇をお願いしても難しい人が急に来たりとか、スポンサーが見つからなくて騒いでいると、すごくいい企業さんが見つかったりとか、機材が足りないなと思ったらそれを貸してくれる人が出てきたりとか、すでにそこで流れが起きていて、それにちょっと乗って手伝ってる感じなんです。

宇都宮:ご縁ですよね。そうなるようになってる、というようなことのご縁で。

三木:今回も「イベント用のアプリを誰か作れないかな」とか勝手に思っていたら、急に現れて。

河崎:そうです。はい。

三木:これもご縁だね。

宇都宮:そういうことがすごく起きてるんですよ。それはzenschoolを卒業した人の中にも起き始めるようになってきてて、気持ちが変わるだけなんですよね。

河崎:スティーブ・ジョブズがいなくてもたぶんスマートフォンは生まれてきたと思うし、エジソンがいなくても電気は発明されただろうし、どちらかと言うとまず社会の大きな流れがあって、代表者としてそういう人たちがいるんだろうなと思っていて、だからみんながそういう未来を望むっていう行為が……。

三木:集合的無意識がつながってる感じですね。

河崎:つながってる感じです。

三木:色々とおもしろいお話ができたかなと思います。今日はどうもありがとうございます。

河崎:はい、ありがとうございます。


対談動画


河崎純真さん

:⇒https://www.facebook.com/jun784


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ZEN OS(Social Operation System) 


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