見出し画像

「仏教の教えをより広く伝えるためにエンターテイメントの活用を進めるお坊さん」後編 即興音楽家/僧侶 赤坂陽月さん

▶前編より続く

●これからの仏教のあり方、開かれた仏教について

画像1

三木:今この感染症(新型コロナ)で緊急事態宣言が敷かれている中で,

非常に心が不安な方が増えている中で、やはり仏教であるとか座ることがこれからより求められてくる時代かと思ってました。この数日間私も建長寺派のお坊さんのオンライン座禅会をお手伝いしたりとかそれ以外の瞑想会も出てたりとかして、本当にみんなが今求めているっていう感じがするんですが、赤坂さんが考えるこれからの時代の仏教のあり方をお聞かせいただければと思います。

赤坂:私が思うこれからの仏教のあり方っていうのはまさにお坊さん1人ひとりに委ねられているのかなという思いがあります。今この感染症ということで皆さん心の不安を抱いていて、不安や恐れっていう自分の内側に向き合わざるを得ないっていうのがほとんど全ての人に平等にやってくるんじゃないかと思うんですね。その時に自分の心が動いて自分の考えが思い巡らされている状態を客観的に気づくことができる能力を養うことによって、その不安や恐怖を和らげることができるっていうことですね。そういう意味で瞑想とか座禅っていうのは非常に力を発揮するものだと思いますし、これをするとしないとでは大きくこれからのあり方というものに影響を与えてくるんじゃないかなと思いますね。

三木:そうですね。

赤坂:瞑想修行で自分の心の動きを見つめる習慣ですとか、自分の心が動くことによって自分の世界が変わるということを体感的に経験できる時間が蓄積されていくと、自分の心が自分の世界を作っている、自分の心を通して世界を見ているという認識が強まってくると思うんですね。その時に「あ、私達1人ひとりが自分の世界を見ているんだ」っていうことに気づいて、みんなと同じ世界を見ているのではなくて見えているものは1人ひとり違うということに気づくと、やはり他の人の考えとか行動を尊重するというか、今までは批判的にみたりとか否定してみたりとかそういうマインドで見ているものが、この人はそう行動せざるを得ない、そう考えざるを得ない状況にあるというか、何かしらの背景があってそういう風に見えているその人の世界を自然に尊重できるようになると思うんですね。それがまさにコンパッション、慈悲ともつながってくると思っています。自分の心の動きを知ることができることが他者への慈悲深さとか共感とか寛容さいうものにつながってくると思うんですね。1人ひとりが同じ部分もあるし違う部分もあるといった認識で自分と他者というものを捉えることができるようになった時に、また僧侶のあり方も1人ひとり違ってしかるべきということだと思うんですね。同じ教科書を読んだとしてもそれを自分の中でどう咀嚼してどう人に伝えるかっていうところになるかなと思うので、まさにお坊さんにしても1人ひとりがそれまでどんなことを考えてどんな人生を生きてきたかということに非常に左右されるのかなと思いますね。

画像3

三木:私も約13年前リーマンショックの後にリストラをされて鬱になったところから座禅を始めてリカバリーできたっていうところがあったんです。ただその鬱の時にどこを頼ればいいのかっていうところで、鎌倉に住んでるんだけど、鬱状態にある中でお寺に行く気力がないっていうか、その時に出会ったのがYouTubeだったんですね。YouTubeの中の座禅のインストラクションを見て自分の家で座禅を始めて救われたっていうのがあって。一般の人だとお寺の雰囲気というか敷居が高いっていうのがまだある。今回みたいな緊急事態っていう状況で不安な人がどんどん増えてきてる中で、お寺もネット活用とかが増えていったら僕はたぶんYouTubeじゃなくて、お寺のお坊さんのZoom動画で救われたかと思うんです。そういうもっとお寺を開いていく動きに関しては何か赤坂さんのご意見はありますか?

赤坂:そうですね。色んな人がお寺に興味を持ってもらうという意味で言えば、まさに先ほど申し上げたように僧侶1人ひとりのあり方がそのままダイレクトに反映されることになるのかなと思うんですね。開き方1つにとってもお坊さん1人ひとりの個性に委ねられていることがあると思うんですね。だから仏教の本質的な部分は何かっていうのはお坊さん1人ひとりによって解釈が違うと思うんですが、私にとっては仏教の本質とは人の心の苦しみを和らげることで、不安や恐怖を取り除くというかそれが自分の心の動きによるものだっていうことに客観的に気づくっていう意味では瞑想が最たる一番良い手段かなと思うんです。瞑想を通してでもいいですし、それ以外にも私で言えばずっとやってきた音楽とかそういうものを瞑想的な精神状態になるための補助ツールとして使うことができるのではないかと思って活動しています。

三木:今現状は1人ひとりのお坊さんのあり方によっていて、アメリカとかは結構システマティックに開こうっていう感じもあるから参考にしてもいいのかなっていう気はしますよね。

赤坂:システマティックというのは?

三木:Webサイトも充実していたりとかしてアクセスしやすい感じ。

赤坂:開かれているっていう意味でっていうことですかね?

三木:そうですね。

赤坂:私はアメリカの禅センターに行ってすごく感じたのは今三木さんがおっしゃったようなカジュアルな禅というか…

三木:カジュアルな感じですよね。

赤坂:普段着に禅宗でいう絡子と呼ばれるお袈裟の簡易版みたいなものを着けてお勤めしている様子を最初見た時にすごいびっくりして。私達はお寺の中で私服っていうのはないので、いつでも作務衣を着てお経をあげる時はその作務衣の上から絡子を掛けたりとか、普段は衣を着てその上に絡子を掛けるっていうスタイルなんですが、普段着のTシャツにそれを掛けるみたいなのにびっくりして(笑)。

三木:Tシャツ(笑)。

赤坂:最初はすごく戸惑ったりしたんですが、それを着けることによってスイッチを入れるというか、モードになるっていう役割としても機能するのかなと思ったり。

三木:赤坂さんみたいに積極的に表現活動を行っていこうっていう若いお坊さんも増えているんですか?

赤坂:音楽をされている方は少ないかとは思うんですが、いなくはないかなって思いますね。DJやってる方でイベントをされてる方もいますし、音楽を通してお寺を盛り上げるということをされてる方はいなくはないですね。ただ非常に数は少ないかなと思います。

三木:そこが残念な感じがしていて。この緊急事態をきっかけにすごい求められているけど、今行っちゃいけない状態だからこそネットを使ってお寺を開いていくのをできる方はどんどんやっていただけると多くの方が救われる気がするので。スマホがあれば今できますからね。やる気さえあれば。

赤坂:そうですね。私もここしばらく2~3週間は自分の音楽をいかに高音質で配信できたりとか、こういうZoomでも背景の合成にこだわってみたりとかして、小さな部屋から発信できるバーチャルな寺子屋というか、元々お寺っていうのは教育機関で人間的成長をさせるための役割があったということで、それを今の時代に沿った形でなおかつ自分の今までの経験を生かした形で他の方の役に立てることができたらいいなと。ただどうせやるなら楽しく見栄え的にもできる限り面白くしたいなという思いで、どうやって背景を合成してとかって(笑)

画像3

三木:そこまで凝らなくても…(笑)。この数日間実際お寺の方に「ちょっと配信したいので色々教えてください」ということで、Zoomやオンライン座禅会も初めてやるっていうのでお手伝いをしてて、そういう意思のあるお坊さんは自分でどんどんやるんですよ。だからそこの考えを切り替えていく。これはたぶん仏教界だけじゃないんです。全部仕事もオンラインでできるのに何でわざわざ会社に行ってるのみたいな話じゃないですか。だから全部変えていくきっかけだと思うんですよね。当然物流とか鉄道とか電気とか水道とかインフラ系はオンラインじゃ無理ですけど、説法をしたり座禅をしたりっていうのは別にオンラインでもできないわけではないので、どんどんそこはこのタイミングで変えていくべきだと思うんです。そうすればアクセスしづらかった人がどんどんアクセスできるようになるし、「お寺って良い所だったんじゃん」「今度リアルに行ってみよう」みたいになっていくと思うので、だからそこを赤坂さんが先頭を切ってやっていただけると。

赤坂:そう言っていただけると背筋が伸びる思いというか…

三木:本当に今すごい求められてるんですよ。

赤坂:そう言っていただけるとより実感が湧くというか、1人で色々準備してやってると誰に求められてるか分かんないけど取りあえずやってみようみたいなところで、どれだけ求められているかみたいな実感ってすごいつかみにくくて、反響があって初めて感じてくるものなのかなって。

三木:一昨日のオンライン座禅会も参加してた人は日本だけじゃなくてアメリカとかイギリスとかヨーロッパのどこかの都市の人で、世界中が今ロックダウン中じゃないですか。だからすごいそういうのに飢えてて、日本のお坊さんの座禅法を学びたいとか般若心経を一緒に唱えたいとかすごい情熱がある海外の方がいっぱいいらっしゃって。赤坂さんのライブとかも英語でちょっと案内しただけでたぶん興味を持って、この時代、この時だからこそ参加したいって。その短い時間だけかもしれないけど、その間だけ本当に心安らぐ時間がロックダウン中のアメリカの都市かヨーロッパの都市なのか世界中が今仏教を求めてますね。なので海外に向けてもぜひ…別にきれいな英語をしゃべる必要はなくてちゃんと伝わればいいので、単に座るだけとか音楽を聴くだけでもいいし。

赤坂:ぜひやりたいと思います。

三木:心を癒すのが今最も求められている。仏教だけじゃなくてあらゆる宗教が…今まで散々宗教を否定してきた日本社会が急に「心が不安だよ」みたいな、「あれ?どうしたの?」みたいな。

赤坂:本当にそうですね。

三木:全ての宗教性を排除しとけってやっちゃってるじゃないですか。でも宗教性を排除しなくてもいいんですよね。今は心が重要なので。だからコロナが明けたらたぶん世界が大きく変わる気はしていて。

●新型コロナの流行は人類にとって大チャンス

三木:その辺ちょっとお話を聞きたいんですけど、どういうビジョンを赤坂さんはお持ちですか?

赤坂:世界的に人類にとっての大ピンチであって大チャンスなわけですね。環境問題1つにとっても専門家に言わせると待ったなしの状況だっていう話も聞いたりする中で、今回の騒動によって世界的にロックダウンになって中国の上空がすごい大気がきれいになってるとか、イタリアの運河が観光客が減ってすごく水が澄んでるみたいな話を聞くと、地球環境にとって我々人類がウイルスなんだっていう見方もできるので、そういう意味では地球環境にとって我々が住む環境にとってそれを大きく変えていく1つの大きなきっかけですかね。このウイルスを通して私達1人ひとりが心の恐怖に向き合うきっかけにもなるし、やはり恐怖っていうのはどこから来るのかっていう自分の心の中を探求することができる本当にチャンスだと思うんですね。

三木:そうですね。だからこの1ヵ月をどう過ごすかで2020年以降の自分の人生がどう変わるのかっていうことが結構関わってくるかなと思っていて。テレワークとかできる方はたぶん時間的余裕もできると思うんですよね。今世界的に起こってることは家庭内暴力なんですって。ロックダウンして家の中に閉じ込められることでストレスの行き場が自分の奥さんとか子供にいっちゃうとか、お酒を飲むことで憂さ晴らしをするとかそういうところにいくんじゃなくて、自分の内側を見つけるアクティビティとかお庭に家庭菜園をしてみるとか。僕も家庭菜園を始めようと思ってるんですけど、そういう内側を見る作業がこの1ヵ月できちんとできるとその後の人生の価値観が変わっていくんじゃないかなと思ってるんです。

赤坂:まさにそうだと思いますね。今日本ではロックダウン的なことがようやく始まってまだ強制力がないですけど、これで本当に東京でも感染者が爆発的に増えていって、例えば身近な人がかかっちゃったりとか身近な人が若い人で亡くなっちゃったりとかした時にいよいよ恐怖っていうものが大きなものになってきて、仕事の面でもお金の面でもすごく不安な時間を過ごすことに多くの人がなってくるのかなと思うんですね。私自身もそういうところに関して日々家で過ごしてると何か胸がざわつくのを感じざるを得ないことがあるわけで、その時にそれをじっと感じてみるというか向き合ってみるということを通して非常に自分の心が磨かれていくっていうすごく強制的な修行というか、自ら望んでというよりは人類全体的にそういう修行モードというか…

三木:マインドフルネスの専門家の島田さんの瞑想会のお手伝いをしていて、島田さんも「この機会が本当にマインドフルネスの実践のベストな機会なので、いかに日々の生活を丁寧に、一緒に暮らしてる人とか一緒にいる人に対してのコンパッションを持っていけるのか」っていうことをおっしゃっていたので、まさに人類全部が修行モードに今入ってて、この修行をどれぐらい取り組むかでその後の人生が変わるかなっていう気がしています。

赤坂:私もまさにその通りだと思いますね。

●赤坂さんの考える「日本(世界)の○○の未来」に対する想いについて

画像4

三木:最後に皆さんに聞いてる質問で、赤坂さんの考える「日本あるいは世界の○○の未来」っていう、○○は自分で入れていただいていいんですけど、何かあれば語っていただけないでしょうか。

赤坂:私の思う仏教の未来というお話になってしまうかと思うんですが、1人ひとりのお坊さんに委ねられているという意味で言えば、私の個人的な見解を述べさせていただくと、本当に今回の感染症問題で家の外に出られなくなっていると。そこでテレワークだとか今あるテクノロジーを生かしてできることがたくさんあるという視点に立って、まさにこうやってオンラインで色んなことを配信できるチャンスが私達僧侶の中にもあって、お寺に行かなくてもお坊さんの話が聞ける、お寺に行かなくても座禅をすることができる、そういう流れにはなってくるかと思うんです。仏教の未来としてはまさにそこに行かなくても誰かの話が聞けたり何かを実践したりという場をどれだけ提供できるか、そしてその時代時代に合った形でお坊さん1人ひとりの人生観を通して伝えることができるかっていうことに説得力というか伝わり方というのがあるんじゃないかなと思うんですね。まさに私の考える仏教の未来、お寺の未来は場所と時間と言葉を超えた形で本質的なものが伝えられるという意味で言えば、バーチャルな空間というものに非常に興味を持ってまして、今私がやっていることも今できる最先端のことをやっていきたいなと思っていて、将来的には今のこの私の姿がアバターになって、こういう姿になることによって私は無意識に自分が持っているアイデンティティの外に出ることができるっていうのは、自分のエゴを超越していく1つのきっかけにもなると思うんです。リアルとオンラインのそれぞれの良さがあると思うんですが、そういったテクノロジーを通して人と人が言葉を超えてつながり合う時代を見てるんです。元々日本のお寺で言えば寺子屋っていうのが人の教育機関としてあって、そういったものをバーチャル空間でできたらいいなと思っています。そのために今自分がまだリアルな姿として配信されてますが、自分ができる音楽っていうものを良い音質で届けたりとか、背景を色んな面白いものに変えることによってちょっとエンターテイメント性というか違った意味での臨場感というか…

画像7

三木:エンターテイメントな仏教ですね。

赤坂:そうですね。このエンターテイメントとアートっていうのはすごくこれからの時代のキーワードになるかなと思っていて、落語っていう1つの日本の伝統芸能であるエンターテイメントも、元々は仏教の説法をモデルにしているっていう話もあるので、そういうほうにつなげていくことによって、多くの人に興味を持ってもらえるきっかけにもなるという…

三木:エンターテイニング・ブッディズムですね。楽しませるブッディズム。

赤坂:そうですね。一休さんっていうアニメもまさに仏教、頓智みたいなもので人を楽しませてっていうものもありましたから、本質的な人の苦しみを和らげるとか人を幸せにするとか人の心を良くするという、本質から逸れないところでのエンターテイメントっていうんですかね。ただおもしろおかしいことをするっていうのではなくて、ちゃんと大事なことはしっかり押さえつつのエンターテイメントっていうのは、非常に価値があるものかなと思っています。

三木:素晴らしい。最後にそのエンターテイニング・ブッディズムとしてハンドパンの演奏をお願いしていいですか?

画像6

赤坂:はい。これはハンドパンという楽器ですね。これはスイスで20年ほど前に生まれた比較的歴史の浅い楽器なんですが、鉄を叩いて作っている楽器です。大きなくくりで言えばエンターテイメントになるかと思いますが、癒しというかヒーリング的な音楽として聴いていただければと思います。

<約5分間のハンドパンの演奏>動画32分40秒より

演奏

三木:素晴らしかったです。ありがとうございました。

赤坂:ありがとうございます。

三木:久々に聴いて良かったです。特にこの時期に聴くと染み渡る感じで。ということで、今日は赤坂さんにご出演していただいて素晴らしいライブもしていただきました。本当にどうもありがとうございました。

赤坂:ありがとうございました。

▶対談動画

▶赤坂陽月さんFACEBOOK

https://www.facebook.com/yogetsuakasaka

▶赤坂陽月さんtwitter

▶赤坂陽月さんinstagram

▶となりのお坊さんYouTube

■「enmono CHANNEL」チャンネル登録ねがいます。

■MC三木の「レジェンド三木」チャンネルもよろしく

■対談動画アーカイブページ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?