MMS160江上さん

第160回MMS(2018/01/17対談)「銀行の変革を推進する変な人との対話を通じて未来の金融のあり方を追求する」(株)電通国際情報サービス 江上広行さん

●ご挨拶と出演者紹介

三木:本日もマイクロモノづくりストリーミング始まりました。司会は株式会社enmonoの三木でございます。本日は電通国際情報サービスの江上さんにお越しいただきまして、金融業界でこれほどおもしろい人物に会ったことがないということで、新しいお金のあり方で色々活動されているというお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

江上:よろしくお願いします。


●enmono三木との出会いについて

三木:まず最初に江上さんと私の出会いというところで、あれは昨年(2016年)の春ぐらいですか?

江上:春ですかね。第2期のエキスパートのキックオフ会があって、自己紹介がレジェンドさんだったので三木さんって名前を知ったのはちょっと後だったんですけど、その佇まいが初回からかなりインパクトがあって。

三木:鎌倉にカマコンという鎌倉を盛り上がる団体がありまして、

そこのメンバーがその地域を盛り上げるファシリテーター育成学校のグローカルコーチングというのがあって、グローカルコーチングはどういう経緯で来たんですか?

江上:植嶋さんの紹介で。

三木:同じメンバーの植嶋さんという方のご紹介で来られて、この佇まいって別にインパクトはないと思うんですけど(笑)。

江上:いや、あるんですよ(笑)。オーラみたいなものですか。静かであまり喋らないんですけど、いるだけで何か起きそうな雰囲気、実際起きちゃうみたいな(笑)。三木さんってそこにいるだけで場に何か浸み出てますよね。

三木:そうなんですか。

江上:僕は人生でなかなか会ったことがないタイプなのでうれしいです(笑)。

三木:そんなことを言われたことはあまりなかったので意外とうれしいです(笑)。そこはお互いの体験をシェアしながら場づくりをする学校だったんです。そこで仲良くなって、その後に江上さんのネットワークで大室(悦賀)先生という方をご紹介いただいて。

江上:スルガ銀行のANA支店というのが日本橋にあって、そこで大室さんと三木さんに来ていただいて、『マインドフルネスと企業経営』という…

三木:謎の講演会を(笑)。でも意外と来た方の反応は良かったですよ。

江上:良かったですね。PDCAとかKPIとか元々の企業の論理を全て破壊して混乱を招いて終わったという(笑)…個別にはかなりインパクトを与えて、何十年もビジネスで大切にしてきたものを見事に破壊していただいたという感じで(笑)…

三木:あの場で色々つながった方ともずっとFacebookでつながっていて、時々「いいね」をしてくれたりとか、おもしろい体験をさせていただいてありがとうございます。

江上:良い機会でした。


●江上さんの自己紹介と活動紹介

三木:江上さんのバックグラウンドをご紹介していただいてもいいですか?

江上:今50歳なんですけど、40歳まで18年間地方銀行で働いてまして、40歳の時に今の電通国際情報サービスという会社に転職をしたんですが、その後全国の地方銀行さんとか信用金庫さん、地域にいる金融機関さんの変革のお手伝いをずっとやってて、最初仕組みとかITとかやってたんですけど、途中でシステムを変えても変わらないなということで、4、5年前ぐらいに急に関心が人間とか組織とかに移って…

宇都宮:オーダーがあったんですか?変革したいというのは…

江上:いや、気がついたらやってたという感じでしたね。

宇都宮:「変革したほうがいいですよ」って提案していく感じなんですか?

江上:そうそう。話していると結局人間とか組織の話になって、同じ頃に自分という人間にも関心ができてきて、自分は何者かということを、45歳から急に考え始めて自分の探求をしていて自分が自分で設定している限界とか固定概念とかに気づき始めて、U理論と出会って、そういう探求をし始めたのがきっかけです。

三木:U理論がきっかけだったんですか?

江上:きっかけでしたね。たまたま読んだ本だったんですけど、U理論のコミュニティに参加して色んな研修を受けたりしている間に、気がついたら今副業もやってて、グロービスというビジネススクールでクラスを持たせていただいたり。

三木:それって何年ぐらい前ですか?

江上:3年前です。知り合いがグロービスのOBの吉田さんという人がいて、「何かやってみる?」って言われて、僕は金融の領域だったのでファイナンスが専門なのでファイナンスのクラスを持つのかなと思ったら、「江上さんって人の話をしてたほうが目が輝いてるね。人のリーダーシップとかやってみる?」って言われて、えーっと思ったんですけど、やってみたら結構楽しくて今もずっと続けてます。

三木:今何期生目ですか?

江上:もう何期もやってて色んなクラスを持っているので、もう300人ぐらいです。

三木:すごい。電通国際情報サービスでは副業はOKなんですか?

江上:例外的に目をつぶってもらってる感じですね。

三木:本業につながることであればOKみたいな感じなんですか?

江上:本業につながればOKです。でもやってることって自分の中では人の可能性を開くとか、お金の可能性を開くという意味では自分の中ではそんなに違和感なくて、去年から一緒にやっている仲間たちと『おかげさまお互いさま』という会社を…

三木:おかげさまお互いさま合同会社でしたっけ?

江上:そうそう。それは地域の信頼とか健康経営とかをテーマに地方創生の枠組み作りみたいなものもやり始めたところです。

三木:この本は江上さんが書かれた『対話する銀行』という本なんですけど、

この本の中で地方銀行に行った時に、リレーションシップ・バンキングというので議論する中で仕組みを変えても難しいことを感じられたとおっしゃってまして、ちょうど私もリレーションシップ・バンキングという時に、中小企業側から何かサービスが提供できないかということで、前職時代に、銀行に対して企業間マッチングを提供することができないかを調べた時期があったんです。

だからリレーションシップ・バンキングが出てきて懐かしいなと思って。15年ぐらい前ですか?

江上:2003年か2004年ぐらいですかね。金融庁が今までの地域金融のビジネスモデルはもう限界だと。今すごくそういうことが言われてて、当時からずっと言われてるんだけど、実はその間ってあまり変わっていなくて、古くて新しい問題なんですけど、いよいよのっぴきならない状態になってきたということです。


●現在の金融業界について

三木:金融に関して私は専門じゃないので、どういう変化が日本の金融業界に起きているかを教えていただいてもいいですか?

江上:よく言われていることは、日本経済自体がデフレになってしまって、銀行で言うと貸出が売上みたいなものなんですけど、預金を預かって貸し出しをするというところで、日本人って年寄りも貯蓄・貯金が好きなので、預金は集まるんですけれども貸すところがないっていう状態。貸すことがないのは、事業自体を借りてまで何かやろうという起業家が少ないという問題もあるし、バリューチェーンの構造ってモノを仕入れて在庫して販売して売掛金が発生してというその間に設備を作ったりして、何かお金になるまでの時間を蓄えながら借入って発生するじゃないですか。それがない経済構造みたいになっちゃって、ソフトなもので経済が動いているので、仕入れて在庫して販売するもしくは設備を持つとかがどんどんなくなってきていて、全体の経済とか人口減少、特に地方とかそういう状態になっていく中で貸し出し先がないと。そうすると貸せない。でもお客さんとか中小企業の状況も段々悪くなってくると銀行も貸し倒れが嫌なので、特に金融庁とか不良債権問題が大きくなった時に銀行も保守的なスタンスをここ20年ぐらい続けてきているので、その中で貸したいけど貸せない、借りたい人がいない…

三木:担保がないと貸せないということですか?

江上:担保がある人はそもそもお金がいらないという状態なので、どうしようかなというのが今の現状で、あとよく言われるのはマイナス金利、そもそも銀行で言うと仕入れて販売する貸出というのがマイナス金利になっちゃってるので、0%でも貸すという時代になっちゃってるので。

三木:そうなんですか?そんなことをやってるんですか?

江上:そんな時代になっちゃってるので、マイナス金利なので日銀に預けておくと逆にお金を払わなきゃいけない。0%で貸してもまだ貸せるという状態になっちゃってるので、そうすると粗利がないビジネスになっちゃってる。さて、どうしたものかという状態。

三木:今銀行とかどうやって稼いでいる感じなんですか?

江上:色々投資信託とかの手数料だったり、色んなM&Aの仲介とか、銀行って地域にいると特にお客さんとの関係性になるから、お客さんとの関係性の中で個人の場合は投資信託とか保険とかの販売をやったり、本業の中で決済手数料とか振込とかいわゆる貸出じゃないところもあるんですけど、根幹はやっぱり貸出なので、そうすると企業が借りないと今度どこにいくかというと最初住宅ローンだったんですけど、住宅ローンがワーッと競争になって取り合いになったんですけど、住宅ローンももう借り換えで競争になっちゃって、今割と伸びてるのはアパートローンですね。アパートを建てて不動産経営をしようという人に提案をしたり、そういうのをデベロッパーと組んでやったりとか、あとはカードローンが実はこの数年すごく伸びていて、あれって結構金利が取れるじゃないですか。消費者金融はそんなにもう貸せない時代になっちゃってるので、そこを銀行が引き受けてるんですけど、結果的に何が起きてるかというと…

三木:カードローン破産みたいな…

江上:そうそう。来店不要即日融資みたいなのがどんどん増えていくと借りやすくなっているから、どんどん多重債務者を増やしちゃってるのを銀行が片棒を担いじゃってるような非常に難しい社会的な問題があります。

三木:それで新しい銀行の方向性をみんな模索している感じなんですか?

江上:答えを探していたというか、そもそも金融業界って元々そんなことを考えなくても回るビジネスだったんですけど、ルールは金融庁がしっかりルールを決めてくれて、そのルールに従ってよっぽどまずい商売をしなければ地域で儲けてたので、どうあるべきとかビジョンとかそんなに考えなくてもいけてたんですけど、今はこの期に及んで答えがないので、金融庁も「答えがない」ってもう言っちゃったんです。

enmono:(笑)


●著書『対話する銀行』について

江上:2、3年前ぐらいから森さん(森信親金融庁長官)が長官になって、「答えを言い続けてルールで縛ってきた僕たちが悪かった。ごめん。その代わり自分で考えろ」って言われて、今色々考え始めてるんですけど。

三木:でも今まで同じような定型業務をやっていた人に、いきなり「勝手にやって」って言っても何も生み出せないしなかなか難しいじゃないですか。

江上:でも別に銀行員に限らず変な人っていて、変えたいとか自分の意図に従って地域のためとか自分自身のためとか組織のために尖った人がいて、自分自身も銀行員時代そうだったんですけど、ユニークとか変なことをやろうとすると居場所がなくなって、やり方も随分悪かったんですけど(笑)、銀行を辞めてコンサルの側にいると俺みたいなやつ結構いるなと思って、みんな孤独で場合によっては苦しんでて、出る杭を叩かれてたりそのまま日の目を見なかったりする人とか、それでも戦っている人たちがいて、この本を書いたのは、そういう方々を集めたらおもしろいだろうなと思って。中で苦しんでいる人が愚痴を言い合いながら…

三木:金融業界の変な人を集めたっていういわゆるイノベーターですね。

江上:そういう方々が集まって、最初3、4人ぐらい集まれば何かやってもいいかなと思ったら一応10人ぐらい全国から集まっていただいて。

三木:呼んで取材をしていった感じですか?

江上:2ヵ月に1回とか東京に来てもらって。

三木:こちらから連絡する感じですか?

江上:「今度こういう会をやるので」と。だいたい30代、40代ぐらいの尖った銀行員の方で、組織の中で色々苦労されているだろうという方を集めて東京に呼んで、最近は地方でもやるんですけど、未来を一緒に考えるという会をやり始めたのがきっかけです。色々なゲスト、それこそ大室さんとかお医者さんとか、なるべく金融以外の方とか混ぜこぜにしながら対話をしていて、すごいおもしろかったのでこれを本にしたいなと思って、差し支えない範囲で書けることを書いた本です(笑)。

宇都宮:本当は言えないこともいっぱい…

江上:ここに書いてないこともいっぱいあるんですけど、書くとまずいので多少僕が脚色して書いたというのがこの本で、苦悩している中で対話をする中で発見をしたりするというプロセスを描きたくて、何の答えも書いてないんです。

三木:みんな答えを求めようとするけど答えは自分で考えてねという…

江上:そんな感じです。

三木:でも今まさにこういう、ちょっと変わった人が求められている時代じゃないですか。特に金融業界というか、あらゆる世界でそうだと思うんですけど、意外とその中に出てらっしゃる方が本当に数年後頭取になってたりとか、銀行業界を引っ張っていくみたいな。

江上:金融業界ってフィンテックという言葉、テクノロジーと金融をつなげるみたいな、そこで活躍している方って、だいたい銀行の外にいるベンチャー企業の方とかIT系の方が多いんですけど、外に出て外から変革をしていくという役割はあると思うんですけど、自分ができることって元々銀行員だったというのもあるので、すごく難しい業界なんだけど、中にいる人に火をつけて中から起こしていくことがすごく大事だなと思って、それでこういう人たちを呼んで、折れないように勇気づける役割を果たしたいなと。ここに参加した人は自分で色々始めたりする方がいて、ブレーキかけたくなるぐらいやらかす銀行員の方が時々現れて、それを見てるとすごくやってよかったなと。

三木:活動している中で「本当はこういう風な道がいいんじゃないの?」みたいなのは何となく見えてきましたか?

江上:そうですね。今の金融って元々銀行決済機能とか金融仲介機能とか信用創造とかベースがあるんですけど、リーマンショックに代表されるように、実態経済と離れたお金がどんどん膨らんじゃって破綻したというカジノ金融みたいな、これは元々の金融を1.0という言い方をしている人がいて、カジノ金融が金融2.0…

三木:カジノ金融ってどういう意味ですか?

江上:カジノ金融って実態経済と離れたところで、実態経済じゃない金融が膨らんじゃって破綻したというのが、リーマンショックが代表してあったと思うんですけど、行き過ぎた金融みたいな、今揺り戻しが来ていて、金融庁が言っていた世界的に動いている規制の動向というのは、行き過ぎた金融に対して安全性とか共通価値、地域のことを考えましょうとかお客さんの立場に立って考えましょうとかそういう動きに一回揺り戻してるんですけど、それだとおもしろくないなと思っていて。そこには反応的なんです。「社会がこうだから金融機関はちゃんとしないといけません」というところなんですけど、そこを突き抜けた世界、それを金融3.0という社会的な責任金融みたいな言い方をしていて、金融4.0というのは人のために役立つんじゃなくて、自分たちがクリエイティブに意図を持ってこんな未来を創りたいというところに、お金という手段を通して社会を変えようという選択をしないと、エコシステムとか、反応的ではなくて自分のあり方につながったところが起こし始める金融を広げていきたい。反応的な金融ではなくて、自分たちの意図を実現する金融というのがすごく必要だなと思っていて。グローバルに見ると、例えばドイツに再生エネルギーとか環境とか貧困とかに特化した金融機関ってあるんです。銀行が意図を持ってこんな社会を創りたいって宣言をして、それに共感をする人が預金をし、それをクラウドファンディングじゃなくて間接金融として実現している銀行が世界に結構あって、そういう金融機関が日本にあまりないので。

三木:それが鎌倉銀行ですか?

江上:そうそう。鎌倉銀行とかぜひできたらいいなと思ってるんですけど。銀行員さんと話していると、金融って付加価値を生んでないので黒子、裏方でみたいな話をしている方が多いんですけど、何か意図を持ってもいいんじゃないかなって。

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●『ゼニーとエミー』と新しい金融について

三木:先ほどちょっと鎌倉銀行の話が出たので、僕らのZen2.0というマインドフルネスのイベントをやったんですが、

一応これが将来に向けての我々のプランで、

来場者がどんどん増えていく中で世界中にマインドフルネスに関心を持った人が鎌倉に来てそこからどんどんつながってネットワークができていくと。その中でマインドフルネスに関連したビジネスを作りたいなと思ったんです。それでビジネスをするためにお金が必要なので、Zen2.0という団体を今度法人化するんです。イベントをやると収益が出るのでそれの半分をMINDFUL CITY KAMAKURAという活動を作ろうとしている宗教法人とかNPO団体とかに支援をしたいなと思っていて、このZen2.0はマインドフルネスの専門家集団なので、マインドフルネスを企業のほうに導入したりとか、あるいはマインドフルネスに関連したデバイスを作りたいとかいうオファーが来るんです。僕らがお仕事の仲介をして、そこでマージンを得るというようなモデルなんですけども、こういったMINDFUL CITY KAMAKURAを作るという想いにもし共感してくれるような金融機関があればいいなと実は思っていて、そういうのが鎌倉銀行にならないかなというのを勝手に妄想しているんです。一緒に街を作るみたいな、その中に地域の金融機関が協力してくれると非常にありがたいなというイメージです。

江上:そうですね。お金を扱うのが金融機関で、お金にどんな意図を込めるかというのがすごくおもしろいなと思っていて、どちらかと言うとお金を蓄積したり増やしたり老後に備えるとか、融資をして儲けるとか、事業をして儲けるという、ある意味資本とか銭儲けのため利益を極大するお金という、僕たちはそれを『ゼニー』という言い方をしているんです。

三木:この(本の)中に出ている『ゼニーとエミー』というゲームの話をしていただいてもいいですか?

江上:お金って今言った二面性があって、儲けを極大するお金、段々その儲けを極大するお金を自分との人格との分断をして、例えばアルゴリズム取引とか高速取引とかで自分じゃなくても、AIとかがどんどんお金儲けをする世界でどんどん増えていくというお金というのもあります。ちょっと極限の状態のお金。もう一つはつながりと感謝、幸福を最大化するお金。例えば「雪下ろししてくれてありがとう」って言ってちょっとお金を渡したり、親が子供に贈与したり、何の見返りもなく渡したりするお金って、同じ1万円でも全く違う二面性があって、今まで扱ってた金融は蓄財を増やすとか老後に備えるとか投資をして儲けるというお金の論理を回してきたと思うんですけど、それが行き過ぎると金融2.0みたいになっちゃったんですけど、もう一個の意図を込めたつながりと感謝…実は貨幣論を最近色々見てるんですけど、元々物々交換が不便だから金や銀や貴金属がお金になったと言われてるんですけど、今実はそれが否定されてて、今新しい貨幣論でどう言われているかというと、人に何かしていただいた時に、借りがあるというのを何かに書いたのがお金の始まりと言われているんです。負債から始まってる。

三木:この人に何かしてもらったみたいなのをノートで言えばノートとか…

江上:それを石に書いたら石のお金とか、それってコミュニティの人と人とのつながりっていうのは何かしていただいた、誰かにして差し上げる、その本人に返すんじゃなくて誰かにしてあげるというのがコミュニティの中で循環をする。それを言葉とか文字を持った時に何かに書いたのがお金の始まりと言われていて、つながりと共同体…貨幣の幣っていう字は『ぬさ』って読むんですけど、意味は貢物という意味なんです。共同体のつながりというのを表していて、そう考えると『エミー』って言ってるつながりと感謝のお金っていうのは、実は歴史上で見ると何千年の中で今の『ゼニー』的なお金ってほんの200年ぐらいしかなくて、『エミー』の世界のお金のほうが実は歴史上長くて、江戸時代の金融機関とか頼母子講とかでも、どちらかと言うとコミュニティのつながりをどう作っていくかということなので、今現代に『ゼニー』の行き過ぎた世界の中に、『エミー』を取り戻すと考えると扱う情報が感謝じゃないですか。今までは金儲けの情報を扱う、こいつは儲かるかとか返せるかという情報ですけど、幸せかという物差しが金融の中に入るじゃないですか。

三木:その情報をブロックチェーンを使えばお金の中に組み込むことができる。

江上:地域通貨とか色んな可能性も出てくるし、実際そういう通貨があったり…

三木:あるんですか?

江上:国分寺の『ぶんじ』という貨幣で、裏書ができて裏側に「ありがとう」って書きながら流通するお金があったりするんですけど、まさにお金にどんな意図を込めてつながり合うかというのが新しい金融が入ってきて、『ゼニー』の世界は必要なんです。『エミー』と『ゼニー』が融合した世界…

三木:そういうことで分けてるんですね。『ゼニー』は『ゼニー』で必要ですか?

江上:『ゼニー』は『ゼニー』で必要だと思います。実際に経済活動をしないといけないので。ただ『ゼニー』だけ行き過ぎちゃったのが今の状態だとしたら、よく右脳と左脳とか論理と感情とかのように両立が必要で、そう考えると金融ってすごいおもしろいなって。

三木:『エミー』と『ゼニー』も一応交換可能なんですね。

江上:そういう意味では尺度を持っているので、ただ同じ1万円でも与えられる幸福度って、どんな風に…

三木:『エミー』のほうがちょっと1.3倍ぐらいになる。交換レートが。

江上:いいですね。

宇都宮:人によるんじゃないですか。この人からもらうとうれしいけどもあの人はちょっと微妙とか…

江上:そう。お金って蓄えじゃなくて交換とか贈与とかそっちのほうに意味があって、蓄えって、誰かにしてあげるための一時預かりなので、トロブリアンド諸島っていう島の民族に「貯蓄とは贈与のための一時預かりです」みたいなことわざもあるんです。でも「貯蓄とは老後のためです」になってるじゃないですか。貯蓄ってそもそもさっきの考え方で人に何かしてあげるための一時預かりという考え方なので、それはすごくいいかなと。それがさっきの「おかげさまお互いさま」という会社名の由来なんですけど。

三木:今日ここに来る前にお坊さんとお話したんですけど、お寺とかがお金を儲けることに、異常にしちゃいけないっていう気持ちがすごいあって、それは要するに『ゼニー』のことしかないから、だから『エミー』と思えば別に儲けてもいいし、それをまた順送りすればいい話ですよね。

江上:お布施ですからね。

三木:お寺さんにこそ『エミー』の概念をつけてってください。

江上:『エミーとゼニー』ってゲームになってるんですけど、3時間ぐらいかけてゲームをやるんですけど、それをお寺でやったこともあって、お坊さんがめちゃくちゃ『ゼニー』が得意っていう(笑)…

一同:(笑)

三木:得意というのは儲けるのが得意?

江上:得意ですね。駆け引きとかもすごい上手ですし。

三木:そうなんだ。他の人より上手いんですか?

江上:そういう方もいらっしゃいますね。地方とかでやるとむしろ循環経済が回っているので別にお金がなくても隣にちょっと野菜が余ったから届けるとか日々発生しているので、『ゼニー』がむしろ盛り上がらないんです。

宇都宮:モノとか関係性ですよね。

江上:モノとか関係性がすごくあるので、むしろ『ゼニー』的なあまり金儲けにあくせくしない感じでゲームが回っちゃったりするのでおもしろいです。ただ両方味わい切るという、自分はどの世界を生きるかという選択をちゃんと持つという、『ゼニー』しか知らなかったけど、こっちの世界と両方味わってお金にどんな意図を込めるかというのは、最後は本人の生き方を…

三木:ゲームの勝敗ってどのような形なんですか?

江上:勝敗は前半と後半になってるんですけど、前半は『ゼニー』で商店街をイメージして競わせるんです。売上とか利益を。そこには独占、騙し、駆け引きみたいなのをやり尽して、そうするとあるところが勝つ。「勝った!」とか「やったー!」みたいなのができるんですけど、それですごく幸福度が上がるんです。銭儲けできたから。でも「これがずっと続くとどうなりますか?」という話をして、今度は『エミー』をやると1つの会社が勝つとかではなくてコミュニティ全体が幸せになるという風に変わるので、お互いの共同作業とか肩もみが始まったりとか、助け合ったりするというのがそのゲームの中で再現されてきて、一応それは慶應SDMの前野先生が作ってる幸福度の測定をやるんです。

そうするとちゃんとゲームの前からゲームの後に対して幸福度が上がっていくというのがあって、ただそれはゲームの世界であって、リアルの世界で『ゼニー』の循環と『エミー』の循環がバランス良くなると地域の幸福度が上がるというのを、実社会で実現したいなというのが…その中の金融って何だろうという問いを今ずっとかけてる感じです。

三木:実際の銀行でもそういう2つの通貨を発行したらどうでしょう。

江上:いいかもしれないですね。

三木:『ゼニー』も扱えるけど『エミー』という別のお金も発行できますと。そういう仮想通貨。

江上:でも実際そういうのが出てくるかもしれないですね。今ICOとかトークンを発行してて、実際の別のコインが流通し始めたりしてますので。


●マインドフルネスと金融について

三木:マインドフルネスと金融という無茶ぶりな感じなんですけど…

江上:さっきお金に意図を込めるという話をしたので、基本お金ってただのお金なので、お金にどんな位置づけをするとか、それをどんな風に人生のための1つの道具として扱うとか、自分自身の内面にお金が例えば汚いものだとか…お金は別に汚くないわけです。お金様は超フラットなので。

三木:お金に何の罪もないです。

江上:お金って人と人との関係性をつなぐものと考えると言葉と同じで、言葉っていうのは自分の内面をどう表現して世界にどう伝えるかということだとすると、お金をどんな風に自分の人生の道具として、自分の人生もしくは人々に位置づけるかというのは、最終的には自分の自己定義とか自分の内面に辿り着くと思うので、そうすると最終的には自分のあり方とか、何のために何をなすかというところにつながってくるので、マインドフルネスという三木さんがモノづくりの中でやっていることと…それも三木さんは製品なりサービスなりを、自分の内面とつなげるというのをずっとやっているのと同じで、それがモノとかサービスになると三木さんのやっている取り組みだし、お金もそのお金っていうのは人とのつながりの中で社会を変えていくという、誰かにお金をあげる時そのお金にどんな旅をしていただいて、その人にどんな幸せを届けるか、銀行だとどこに融資をすると、どんな社会が創られるか、例えば消費者ローンに貧困を生み出すような貸し方をするのも銀行だし、例えば同じ貧困層に対してもカナダにバーンシティ銀行という銀行があって、そこは貧困層とか多重債務者に対して、自立をするサポートをする融資をしているんですけど、そうすると同じ相手に対しても、どんな意図を持ってこのお金を届けるか、その銀行は地域の色んな仕事とかというのをつなげながら最終的には起業支援をしたりしながら自立していくのをサポートするんです。同じ相手に対してお金というのをどんな意図を持って届けるかによって創られる世界が違うので、どんな社会とかどんな世界を創りたいかという意図を貸す。それは融資でもそうだし贈与でもそうだし。

三木:金融に携わってた方がそういうのを実践すること、瞑想とかマインドフルネスとかでそういうサービスが生まれやすくなる可能性はあるんですか?

江上:あると思います。それを広げていきたいなって。

三木:実際日本でもそういう銀行はないんですか?先ほどのカナダの銀行のような特徴を持ったような銀行は。

江上:最近すごく仲良くさせていただいているのは、東京に第一勧業信用組合さんというところがあるんですけど、そこはコミュニティを育てるという意図を持ってて、例えば芸者さんに融資をするんです。東京って芸者さんが200人ぐらいしかいなくて、芸者さんの専用ローンとかあるんです。芸者さんって別に何か担保があるわけでもないし、何か財務的な実績があるわけでもないけれども、ただ人の信頼とか置屋の女将さんがすごく信頼しているということだったら、その人が例えば料亭を作って何かお店を出したいというんだったら、人の信頼を得て芸者というコミュニティを支えるために意図を持って融資をする。そういうローンが300種類あるんです。勝手に作っちゃうんです。「三木さんの友達ローン」とかできちゃうんです(笑)。

三木:いいな、それ(笑)。そういうところがもっと増えるといいですね。

宇都宮:今日午前中Facebookを見てたらスルガ銀行がオタクの方が同人誌を自社出版するための費用を出すという、融資というかファンドみたいな感じかもしれないです。ファンドと融資はまた違うんですよね?

江上:ファンドは直接金融、直接お金を出したい人と借りたい人をつなぐというやり方もありますけど、銀行って間接金融って言って、とりあえず預かって銀行が判断して自分たちでも貸し倒れも起きないかどうかという間を持つみたいな、間を持つ人がどんな意図を持つか、間接金融でそれをやるということがすごく大事なことで、それがすごく社会のレバレッジが効くというか新しい信用創造が生まれるというか…

宇都宮:そうすると結局貯金する人も「この銀行は良い銀行だからこっちにしよう」とか、今は金利がどこに預けても差がないので、扱いやすいところとか営業が熱心なところに預けるとか、預ける側がもしかしたら気分が変わるかもしれないですよね。お金をどう使ってもらいたいかみたいな。

江上:そうです。ドイツのGLS銀行は“人間のための銀行”というコンセプトを持っていて、社会課題を解決する、再生エネルギーとか環境とか有機農業とかそういう領域に特化した融資をしている銀行さんなんですけど、預金者に対して「同じお金を預けるんだったら自分の子供や孫に責任を持てるところに預けてください」ということを説いて回って、どうせ預けるんだったらそっちに預けると。東日本大震災があって、脱原発とかドイツですごく動きが出てきて、再生エネルギーとかに関心が生まれたのでどんどん預金が集まって、人も倫理観を持った人、大きな銀行で『ゼニー』の世界に疲れ果てた人がやってきて、意図を持って仕事をして、そうするとその銀行がどんどんそれを循環させると地域社会とかコミュニティが広がっていくという、まさに意図を持っている銀行が世界に実はネットワークを作っていて…

三木:マインドフルネス銀行…

江上:そうそう。マイクロファイナンスとか聞いたことあると思うんですけど、それが先進国にも結構あって、確か46ぐらいの銀行が集まってオランダに本部があって、意図を持つ銀行ネットワークみたいなのがあるんです。グローバル・アライアンス・フォー・バンキング・オン・バリューズという言い方をするんですけど、バリューなので価値ベースの銀行というのがあって、実は日本は1つもそこに加盟していないです。中国も韓国もなくて。なので鎌倉銀行さん…(笑)

三木:鎌倉銀行=マインドフルネス銀行、勝手にそういうことにしましょうか(笑)。

宇都宮:銀行って勝手に作れるんですか?

江上:金融庁の認可が必要です。それなりのガバナンスとか体制を整えたところに認可を出す仕組みなので。

三木:鎌倉の中でやろうとしている人がいますので。

江上:はい、ぜひ(笑)。


●江上さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

三木:最後に皆さんにしている質問で江上さんの考える「日本の○○の未来」、○○はご自身で決めていただければと。

江上:コミュニティ、つながりの未来というか、コミュニティが今分断しちゃってると思うんです。それはお金は関係性をつなぐものでもあるけど、分断するものでもあるので、今までは人に頼んだりしてたのが全部お金で処理、それこそ教育も介護も買い物も全部お金で、コンビニがあれば全て成り立つという、どんどん孤立化、分断が起きているので…

三木:お金で分断が生まれちゃってるってことですか?

江上:お金がつながり、コミュニティを作っていくという、これって金融だけじゃなくて、マーケティングとかでも同じだと思うんですけど、B to CとかB to Bとか、あれって消費者と私みたいな、じゃなくてB toコミュニティというか、もっと言うとBがコミュニティの中にいて、人体で言うと心臓と体みたいなもので、どんな企業も金融も全てがつながりの中で1つのエコシステムが回っていて、その中で全体性と自分のあり方というのを…最近NHKスペシャルで人体の特集があって、今までは人間は脳が全てを支配して、体をコントロールしているという考え方だったけど、今は実は骨の中とか体中が考えてる。体というものがあって機能分担して、脳とか何かになって全員が全体性を持っていて、その中で部分としてそれぞれが存在しているという社会が、心臓が腎臓には融資するけど肝臓には融資しないとかじゃなくて、全てが全体性を持つということです。

宇都宮:全部つながっていますもんね。本当は。

江上:そうそう。つながっているとみんなが思う社会とか、思う日本とかが増えてくるんじゃないかなと。そういう風なことを意図して、僕はお金という領域、三木さんはモノづくり、それかZen2.0という動きでやっていけたらいいなって。

三木:そういうもののベースにあるのが、マインドフルネスみたいなOS、金融の人とモノづくりの人をそういったところでつなげれば、その上でのレイヤーは簡単につながるじゃないですか。

江上:そうですね。

宇都宮:OSを共通化するとプラットフォームが共通になって、アプリケーションは色々その上で生み出せるので、根っこではつながっているということに気づけば、そこに目を向けるというか…

江上:本当そう思います。

三木:本日はどうもありがとうございました。

江上:ありがとうございました。



対談動画


江上広行さん

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