MMS157吉田さん

「IoTベンチャー向けに、ハード+ソフト+システムを網羅する品質保証体系の構築支援を提供する」(株)コルプ 代表取締役 吉田貴洋さん

本記事は2017年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●ご挨拶と出演者紹介

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三木:第157回マイクロモノづくりストリーミング本日もスタート致しました。本日も司会は株式会社enmonoの三木でございます。あと声の出演で…

宇都宮:宇都宮です。よろしくお願いします。

三木:本日は株式会社コルプの吉田さんにお越しいただきまして、吉田さんはzenschool卒業生ということで…

吉田:そうです。

三木:某光学機器メーカーを経て会社を設立され、これからの未来に何を生み出していくのかというお話を伺えたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

吉田:お願いします。


●enmonoとの出会いについて

三木:吉田さんと我々の出会いのきっかけは何でしたっけ?

吉田:今も関係はしているんですけれども、日本橋にあるコミュニティスペースの社員食堂Lab.のクラウドファンディングプロジェクトをzenmonoさんでやるということになって、確かそこでお会いしたのが最初です。

あの当時に私はボランティアでカメラマンをやってたWEBマガジンがありまして…

宇都宮:spoonでしたっけ?

吉田:そうですね。そこで実は宇都宮さんにインタビューをさせていただきまして、そのインタビューの終わりの時に「7期生席まだ空いてるんでぜひ」…(笑)

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三木:7期か。だいぶ前ですね。

吉田:2014年ですね。

宇都宮:2014年ですか。発電会議のほうに来ていただいたんですよね。

その時にメタルDIYの杉田さんとか、

その後zenschoolで同期となる小野さんとかいらっしゃいましたよね。

吉田:そうですね。懐かしいですね。だから初めてお会いしたのは2013年頃で、2014年の2月とかにお話を伺ったのかな?


●zenschool受講とその後の変化

三木:それで(zenschoolに)申し込んでいただいて、その後どんな変化を遂げられたんですか?

宇都宮:紆余曲折ですか?

吉田:紆余曲折のところは………で書かない(笑)。2014年にzenschool7期、その当時はまだマイクロモノづくり経営革新講座という…

三木:すごいですね。昔の名前が。

宇都宮:あの時、時間も長かったですよね。7~10日間ぐらいやった。

三木:10日間のやつでしたっけ?

吉田:そうですね。

三木:よく耐えられましたね。

吉田:ずっと大森に通いましたね。

宇都宮:講座自体はどんな印象ですか?記憶にある範囲で。

吉田:講座自体はおもしろかったです。三木さんと宇都宮さんの掛け合いが一番おもしろかったんですけど。

三木:同期生はどういう方ですか?

吉田:同期生は福井のアイアンプラネットの小林さんと多摩のWeb制作会社でTAMA試作ネットワークTSUBASAを立ち上げた小野さんと…

宇都宮:最近また起業された稲田さんと…

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三木:すごいですね、この期は。2人も起業したんですね。

吉田:逆に半分がサラリーマンだったというたぶん稀有な期でもあるんだと思うんですけど。

宇都宮:どんな発表をされたんでしたっけ?その時。

吉田:一応映像関係で使える機材ということで発表させていただきました。

宇都宮:モノづくりでしたっけ?

吉田:そうですね。製品だったと思いますね。だからサラリーマンの2人が製品の発表をし、事業主の2人がサービスの発表をしてたんです。何だかんだ自分が一番アイデアを出したのが早かったような記憶がありますが、動き出すのが一番遅かった気がしないでもないです。

宇都宮:そうですね。

吉田:今年に入りましてちょっとzenschoolとは違う感じで、今芝浦工業大学の大学院の工学マネジメント研究科に通っておりまして、MOT(Management of Technology:技術経営)を今学んでおります。ビジネスの数字の話も含めて何か良い感じでパッケージになってるのって何だろうと思ったら、経営学がいいのかなというところで通い始めたという感じです。

三木:それはいつからですか?

吉田:今年の4月ですね。

三木:4月に入学して7月に会社を立ち上げ。3ヵ月で起業したわけですね?

吉田:5月の頭に退職届を会社に出しまして、7月末に正式に退職したという形です。

三木:学校の方は何か言ってますか?起業されたことに。まだ言ってないですか?

吉田:「学校出てからやるんだと思ってた」みたいなこともよく言われますけれども、それはもう自分の気持ち的にやっちゃったことなので、まあいいかなという感じで、一応来年(2018年)の1月に法人を立ち上げると思います。

三木:すばらしい。


●株式会社コルプについて

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宇都宮:どういう事業をされる予定ですか?

吉田:その会社がコルプ(QuaLP)なんですけども。

宇都宮:そういう綴りになるんですね。

吉田:一応そうですね。日本語的にはカタカナ的には”コ”でいいかなと。

宇都宮:QOLとはまた違うんですね。

吉田:QOLではないですね。今まで自己紹介の時にさせていただきました写真関係の話、写真撮ってますというのを引き続きやりたいなというところと、比較的チームで撮れる体制を作りたいので法人の中に入れ込むと。そこからzenschoolで発表したような製品開発の部分と、そこから広げて私が元々会社の仕事で関わっていた品質保証の部分とか、プロジェクトマネジメントという部分に関連した情報発信ができたらいいなと。イメージ的には単純に制作するところから開発が入るとそこから品質という一段上がったイメージのところで、点と線と面の関係がもし作れたらおもしろいなと思ってるのが今の状況です。

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三木:なるほど。品質保証がビジネスドメイン?

吉田:そうですね。一番規模的に大きくなるのはそこかなと。そこから映像の制作とかに還流させられると、今度制作関係はマーケティング的な要素も含みますから、そういう意味では製品をリリースしたところからそれを作るほうの還流ができるという…

三木:おもしろいですね。品質保証と映像って今までなかなかない。

宇都宮:品質保証の現場で定点撮影とかでありますよね。

吉田:それも全然あり得ると思っていて、この2番目の製品とか自社のプロジェクトの中でもハードウェアとして映像を使って、例えば社内のシステムとかマーケティングとかに活用するみたいな、単純にソフトとしての写真・映像だけじゃなくてハードとして使う、データとして使うというアプローチも1つ考えられるなと思いながら妄想だけは広がっている状態です。

宇都宮:写真とかもキャッシュになってるということですよね?

吉田:多少はというところで、今までは単発でご相談をいただいて「全然私でよければ」という感じで動いていた中で、もうちょっと写真とかの使い方を考えています。

三木:確かに今多くのメイカーズと言われている人が転んでいるところが品質検査問題なんです。「その試作品を量産しましょう」と中国に持って行くと試作品の第一弾とかは「んっ?」とか思って、でももうちょっとしたらクオリティが上がると思ってまた色々とリクエストしても全然クオリティが上がってこないみたいな。「こんな状態で量産できるのでしょうか?」みたいな不安が心を覆ってきて、このまま出したらえらいことになるということにようやく気づいて、「じゃあ人をそっちに送れるのか?」といってもそういうわけにもいかずみたいな。

吉田:そうですね。だからそれも人を送れない体制であれば逆に国内でやればいいし、逆に国内でやるにしても単純に注文する内容を決めてないのに注文して、ほしかったものが出てこない…

三木:要は要件定義できないメイカーズがほとんどということですね。

吉田:そうですね。仮にそういうところに問題があるとするとそれは自分たちの内容を整理したほうがいいですよねという話になると思います。

三木:まず自社内の要件定義をして、このレベルだったら通してもいいよというのをきちっと決めた上で、「ここがおかしいんじゃないか」というのは「この要件に入ってないからダメですよ」と言えると、そういうドキュメンテーションとかコンサルテーションとか。

吉田:そうですね。製品設計しかしてないで、品質の部分というのはこの一番内側の管理と検査だけで何とかしようとしてもなかなか大変なので、その前に「この製品はどの程度の品質とか性能になっていればいいんだっけ?」というのを自分たちの中で交通整理をしてから、それを実際に試作してそれをちゃんと評価で確かめて工場にお願いしないと、誰も何を作っていいか分からないというところが結局のところは問題になります。

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三木:最終的なクオリティの要件定義がコストにダイレクトに反映していくから、どこまでのものを求めるかというのをここできちんとすることが、全部のプロジェクトの費用を見積もるのに非常に重要になっていくわけですね。

吉田:そうですね。たぶんそういう話はソフトウェアの人はリアルに感じていると思うんですけど、ハードウェアでも予め整理をしておいたほうがスムーズです。私はハードウェアもそうなんですけど、ソフトウェアテストみたいな話も関連してたことがあるので、そういうのってうまく組み合わせたら何か形にできないのかなと思っています。

宇都宮:元々光学機器のハードウェアって両方ありますものね

吉田:そうですね。ソフトが絡まないモノが今もうほとんどないので。

宇都宮:ソフトだけで終わってるぶんにはいいんだけど、IoTとか言い出すと急にハードウェアが絡んでくるので。でもハードウェアしかやってない人は分からないじゃないですか。ソフトの絡みっていうのは。

吉田:そうですね。ソフトの人もハードウェアがどういうことを気にしているかも分からないので。

宇都宮:両方が理解できる人はまずほとんどいないし、しかもフリーランスではゼロでしょうね。

三木:めちゃめちゃいいじゃないですか。一人勝ち系な。

宇都宮:吉田さんしかいないわけですよ。

吉田:だからそういう技術的な話そのものはできないんですけど、その橋渡しができればいいなというところです。

宇都宮:しかも品質保証は経営にもろに響くじゃないですか。

吉田:だからできるだけうまいこと導入しやすいパッケージにできたらいいんですけど、そういう段取りをちゃんと組めば品質が上がってかつコストが下がるというような…

三木:そういうセールストークがいいですよね。「ちゃんとここを要件定義することがモノづくりにおいてのビジネスの成功か不成功かになりますよ。だから最初からやりましょう」と。

宇都宮:開発予算が増えると当然償却費がかさんでくるので(売価に上乗せせざるを得なくなって、でもそれができないと)、売っても儲からないという商品になってしまいますね。

三木:同じ金型でもどこまで磨くのかというので全然価格が変わってくるし、どこまでの精度なのかということもそうですね。

吉田:その辺をメーカーさん、それこそzenschoolにたくさん加工屋さんがいらっしゃると思うんですけど、各社さんとちゃんと相談ができていないと辛いのかなと。頼んでいるほうに聞いても頼まれているほうに聞いてもその辺が辛そうなので。

宇都宮:両方分かる人がまずいないし、しかも電気系だと世界中にもしデリバリーするとまた国によって仕様が違ったりするということになるともっと…

吉田:そうですね。まさにその辺になってくると経営問題になってくるので、最近は契約不履行の債権不履行の問題で瑕疵担保責任とか製造物責任という話もそうだし、環境関連も色々問題が多いですし。

三木:ヨーロッパに出すんだったらこの物質は使えないとか素材は使えないとかね。

吉田:環境関連も全部網羅するのは大変なんですけど、調べるとっかかりを自分でも作るというのもあるので、調べながら分かりやすい形にできないかなと思っているのが今の状態です。

三木:いいですね。市場性が非常にありそうですね。

宇都宮:今後増えると思います。

三木:めちゃめちゃニーズがありますので。

吉田:品質保証の中身に関しては、そういう製品開発に関連するような情報の発信とかを少しずつできたらいいかなというのと、今通ってる学校でやっていることとも絡むんですけど、開発プロセスにユーザーを入れましょうという提案をしていきたいなと。

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三木:インクルーシブデザインという…

吉田:どういうユーザーを呼び込むかというので、もしかしたらエクスクルーシブかもしれないんですけど、そこでユーザーというマーケット側にいるほうの人も含めてイテレーションが回せると、自社でやって出した時にお客さんからいきなり評価が来るとかクレームが来るというよりかは、先にそういう評価だけでもやったほうがつぶせるかと。

宇都宮:大企業が乗ってくるかもしれないですね。

吉田:そうですね。

三木:具体的にはどういう風にやる感じですか?その先出し。

吉田:これは実は今「こういう感じの仕事の体制を組んだらいいんじゃないでしょうか?」というご提案は、実は論文の形で1本させていただいてまして、研究としてもデータを取りつつ、やり方としてもパッケージを作りつつで、企業さんが導入しやすい、イコール自分もやりやすいという形になるんですけど、そういう形が作れたら…

宇都宮:クラウドファンディングもある種のテストマーケットで、そこから仕様変更をする可能性も出てくるわけですよね。

吉田:そうです。だからクラウドファンディングも1つの方法論ですし、それをもうちょっとオープンにしてやるかとか…

宇都宮:若干クローズにするとか?

吉田:そうです。だから極端なことを言えば、トラックを作る時に普通の人を呼んでもしょうがないので、そういう時はトラックの運転手さんを呼ぶとか運送屋さんを呼ぶということになるわけです。そうなってくると結構クローズな業界の中での話になるかもしれないし。

宇都宮:グループマーケティングというのはあるけど、モノができてからのマーケティングじゃないですもんね。もしくは市場調査という段階でやるかどっちかしかないですよね。開発プロセスに入れ込むという?

吉田:そうですね。それってみんなだいたいマーケティングなんです。そうするとマーケッターと企画と営業とアフターサービスというところが接点になりますけど…

宇都宮:エンジニアとかが来たら差し戻せないっていう…

吉田:そうです。だから逆にエンジニアが動くレベルでも入れちゃおうと今思っているので、もし本当にできたらおもしろいなとは思ってるんです。

宇都宮:できたらというかそうしなきゃたぶん今後開発コストを回収できないよね。

吉田:だからそれが本当にある程度やれていくと本当に企業がやりたがっているコミュニティを持つみたいなことにつながっていく可能性はあるかなと。

三木:具体的にはクローズドご意見番グループみたいなのがあって、それをNDA結んだ上で開発会議とかに参加してもらってレビューをするような?

吉田:そうですね。社内のレビューにいきなり来ても分からないということが結構多いと思うので、逆に言うとそこでユーザーに分かる形に落とし込んで別にレビューしてあげるということが必要かもしれないですし、どんな感じで来てもらうかというのは色々やり方があると思うんです。

三木:ユーザー側はお金をもらう感じなんですか?

吉田:ここでお金はたぶんもらわない形になるんだと思います。お金を払ってもいいんだと思うんですけど、お金を払うというよりかはユーザーのヒアリングをする領域を拡大するという形で…

宇都宮:ユーザーが開発の一員になってもらうぐらいの勢いですよね?

吉田:そうです。だからサポートメンバーみたいなのになるとか、そうやって意見を出してくれた人にはまず試作品ができた時には試しに使ってもらう、まずその人たちに使ってもらう。

宇都宮:WEMAKEって知ってます?WEMAKEの人が確かそういうのを今模索して始められてますよね。メーカーと組んでですけど。

吉田:だからそういう動きはたぶん出てくると思うんです。堅苦しい論文という形も含めてある程度こんな感じになったよというのを分かりやすい形にしながら進めてパッケージにしたいなと思っています。

三木:実際に自分が作るモノはそういう風にやる感じ?

吉田:やります。

三木:何を作られようとしているんですか?言える範囲で。光学機器ですか?

吉田:光学機器というよりかは光学機器に付随して使う装置という形で、私が作ろうとしているのは機構を組み合わせたモノ。

宇都宮:アタッチメントみたいな感じですか?

吉田:そうですね。カメラとレンズの間に入って使えるモノというような感じになると思います。そっちも色々アイデアがあって、先日お伺いした工場さんとのお話の中でもありまして、某…(笑)

宇都宮:某…(笑)。内緒ですね。

吉田:そこから先もちょっと色々「それだったらこうしてやってもいいな」という自分の中でアイデアも出てきたのでそれをベースに試作をしようと思っているところです。

宇都宮:自分がほしいモノですもんね。そもそも。

吉田:そうですね。


●メイカーズのニーズとコルプの事業展望

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三木:この機能って今多くのメイカーズさんがちょうど求めているものだと思うので。

宇都宮:日本国内だけじゃなくて海外でもKickstarter出したけど、量産できるようなモノがデリバリーできないとか発生してて、VCがバーンと何億もお金を出したりとかしててもうまくいかないことがあるから、世界中にニーズがありそう。

三木:品質保証の専門家がいないので。フリーで。

宇都宮:たいていどこかのメーカーに組み込まれているので。

吉田:そうですね。実はzenschoolの発表会の後の大森のてけてけで、デザイナーの西村さんが言われていたのもそういう話です。

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三木:そこからビジネスヒントを得たわけですね。

吉田:それもあったのと、会社の中という話をしてるんですけど、会社の外とも関係しないとダメだなというのは自分で仕事をしながらあったので、それとそういう風に思ってらっしゃる西村さんがいたというのもあるし。各ベンチャーが大きいところも小さいところも含めて、みんな困っているのってそこだなというのもあるし。

宇都宮:オープンイノベーションとか言いながらどんどん外と共創しよう共創しようと言ってるけど、企画では共創できてプロトタイプまではできるんだけど量産はできないんですよね。

吉田:そういうのも含めて、あれから3年は経ってるんですけど、特に2016年の後半から2017年ぐらいにかけて何かそういう情報がまとまってたらいいのかなと思うようになってきたというのがあります。

宇都宮:2012年にメイカーズという本が出て、個人でモノが作れるよって盛り上がって、2013、14、15ってたぶんやったんですよね。色々。

三木:みんなやったんです。色々。

宇都宮:やってみんなが打ちひしがれたのが2016年から今年ぐらい。打ちひしがれた人となんとかしてそれをやろうと課題が見えてきたところじゃないですか。きっと。

三木:ようやくニーズが明確になってきたから今ちょうど…

宇都宮:じゃあコルプへというのが2018年(笑)。

吉田:メーカーの中でもたぶん技術分野が違うことでの断絶があるんです。

三木:分断されてますよね。

宇都宮:自動車メーカーも電気が分からない。ほとんどが。

吉田:そうですね。ソフトウェアも分からない。結局でも社内で組み込みソフトは作ってるんだけどとか発注してるんだけどというところでかみ合わないとか、私の中でニーズが大きかったのはそういうところだと思います。

宇都宮:前の会社で物理的にぶつかったところなんですね。

吉田:物理的にそういうところがネックなのかなと。品質保証の人は専門的な技術を教えられて育ってないので、逆に言うと技術の話はプロがたくさんいるので聞けばいいというスタンスのもとに、ただそれを会社としてとかプロジェクトとしてどうまとめるのという話は経営のレベルで話を…

宇都宮:品質保証の線引きによって全然原価構成が変わってきちゃうので、何個作るかというのもあるでしょうし、どの程度のばらつきでとか全部決めなきゃいけない。それって本来は経営判断じゃないですか。

吉田:そうです。だから単純にパッケージを売るんですけど、場合によっては品管や品証の担当者さんが使いやすい情報にするとか、もっと大枠で長期のモデルだったら経営者さんが「こういうのをちょっと社内に入れたい」となって入れるとか、そういう色んな形での振り方というのはあり得るかなと。

宇都宮:従来だと外注管理もやってるわけじゃないですか。品管って。その外注っていう概念がもっと多岐に渡ってきてるということですね。

三木:外注管理もこのサービスの中に入るんですか?

吉田:外注管理そのものというか「こういう風にしたらどうでしょうか?」は入ってくるかなと。

宇都宮:そうすると購買品目とかも?

吉田:そうですね。これから結局のところメイカーズさんも含めて今まで受託でやられてた会社さんが自社で販売もするとなった時には、それこそ日本国内の場合は特に単一の技術しか持っていないというケースが非常に多いんです。そうなってくると外注って必須になる。外注が必須になった時に何をお願いしたらいいんだろうと。

三木:要求仕様ね。

吉田:そうですね。結局組み合わせてになるのでお任せにできないことだと思います。

三木:海外の工場だと勝手にラーメンを頼んだらチャーハンが出てきて「やめてください」みたいな(笑)。「こっちのほうがいいでしょ」みたいな。「勝手に仕様を変えるんじゃないよ」って。

吉田:結構そういう足並みの揃わなさはたぶん、どういうところであっても起こりうるんです。

宇都宮:Skypeとかじゃクリアできない部分もあるから。

吉田:ただ逆に先に決めておけばとか、どんな風になってたらいいのかが想像できていれば変わるかもしれないです。最終的には品質保証は経営課題なので、そうやって私と経営者さんやプロジェクトの主体の人とお話した内容に沿ってその方たちが動いて、最後お客さんに向かって「これがうちの製品です」と責任を持って出せる形になるお手伝いができればなと。


●大企業を卒業して起業した心の変化

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三木:以前某大手光学機器メーカーにいらっしゃって卒業して起業するみたいな心の変化は?

吉田:日本の会社がなのかどうなのか分からないですけど、他の国で働いたことがないので、会社にいて何かやるというのと、自分でやるっていうのって違うんだなというのを何となく感じ始めたというのがあります。これは会社でやりたいことなのか自分でやりたいことなのかとか、そうなってくると写真はずっと自分で撮ってたので自分が好きなことだったりしますし、自分でやりたい部分っていうのが少しずつ大きくなっていったんです。

宇都宮:趣味とかじゃなく?

吉田:そうですね。お金を取れる形だからできる関係性がありますよね。趣味で友達ででも悪くはないんですけど、ちょっとそこから一歩違う形にズレた形も作れたらいいなと。

宇都宮:設備投資とか発生しかねないですもんね。個人でやるにはちょっと投資しづらい金額のものが光学機器にはあるじゃないですか。

吉田:ありますね。

宇都宮:それは会社にしてしまうと経費として?

吉田:そうですね。ふと思ったことがあるのは、写真ででもですけど、自分が撮りたいと思ってるものって自分の手元になかったりするんです。他の人が持ってるとか他の人も含めた環境の中にあるとかっていうのがあって。

宇都宮:個人だとアクセスがしづらいということですか?会社になってたほうがいいという?

吉田:そうですね。だからそういう形が見えてきたというのもあるので、それだったら自分で看板を出したほうがいいかなと思ったというのが気持ちの変化です。

三木:それは段々とそうなってきたんですか?

吉田:そうですね。

宇都宮:zenschoolを受講する前からあったんですか?

吉田:zenschoolを受講する前にもありましたね。2011年の末に体を壊しまして、そこで会社の仕事は大変なので疲れるなというのがあったんですけど。

宇都宮:仕事のし過ぎで?30歳前後ですか?

三木:心理的なプレッシャーが?

吉田:そうですね。30歳前後、そういうのも含めてなのかなというのはちょっときっかけとしてはありまして、そこから社外の人と色々会うことが増えたんです。

宇都宮:社外の人と付き合うとまた色々と視点が変わりますよね。社内にずっといる時と違って情報が…

吉田:そうです。だからそれまでは自分の会社も自分の仕事も割と無条件に好きではありましたけど、そこから段々意味付けがちょっとずつ変わっていったんです。好きなんだけど結局それが全てじゃなくて、他には実はこういうものが色々あった上でのここのこれだなということです。だから逆に言えばここにあったものというのはある意味ではここだけでしか通用しないんだけど、もしかしたらここにあったものを本当はもしかしたらこっちの人がほしいかもしれないし、こっちの人も案外おもしろそうに見てるかもしれないし、そういう可能性も含めて、そういう意味での新しいつながり方というのがあり得るんだろうなというイメージになったというのはありますね。

三木:なるほど。それはおもしろいですね。段々と変化するというのは。

吉田:今会社に勤めていると自分の持ち場、自分の仕事っていうところでクローズすることが多い。規模の大中小関係なく。研究テーマの、ユーザーを入れちゃうというのも社内のあまり外の人と関わりが薄い部署の人たちもオープンにしちゃうというようなことができてもいいのかなというのも最初そのイメージになりますね。

宇都宮:オープンマインドにする必要がありますよね。

吉田:そうですね。だから「これはこれで正しいんです」というのも1つの方向性なんだけど、それを見た時に違うアイデアが浮かんじゃう人がいるという事実も含めて、その事実がある可能性を想定するということなんです。

宇都宮:そういう時にぜひzenschoolワークショップをご活用いただければ。

三木:そうですね。一緒にやるといいかもしれないですね。

宇都宮:心の中をオープンにするのは結構僕らの経験では、できない人がいるんですよ。自己開示ができるとガラッと変わるんですけど結構できない人がいる。

吉田:そうでしょうね。たぶんそこに1つのリアルなアプローチとしてはお客さんと直接会うというのはあるかなと思いますね。

三木:なるほど。ありがとうございます。


●マイクロモノづくりについて大企業側からの視点

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三木:我々マイクロモノづくりという自分で商品を企画して作って売るというような考え方をしているんですが、これを大手メーカーにいらっしゃった吉田さんから見るとどういう風に映るのかなと。

吉田:でも「ベースはこれですよね」というのはすごく思っていて。今でも。

宇都宮:分業ですもんね。大企業は。

吉田:そうですね。ただ自分がほしいと思ってないモノは仕事だからとはいえ興味が湧かないというか、何か良いアイデアがすごい出てくるかというと、そうじゃないというのが人間なのでしょうがないんじゃないかなと思うんです。

宇都宮:それってクオリティが違いますよね。数字には出なくても。

吉田:だから大きい会社が大きい会社として考えちゃうと、やっぱりユーザーとして想定する相手も大きくなって最大公約数になりがち。

宇都宮:そうすると見向きもされなくなっちゃうようなモノがマーケティングでごまかそうという…

吉田:そうなんです。だから星形の結局真ん中しか埋まらない。だけど今のニーズは結局のところ星形の尖がってるところをどう埋めるというところを含めてのニーズがたぶんあると思うので、そこに対するアプローチはもうこれしかなかろう。だから当事者ということなんです。

宇都宮:でもメーカーの商品企画ってそうなってないケースが多かったりする。でもまずいって自覚し始めてるんですか?

吉田:し始めてるんだとは思うんですよ。ただそこで足枷になる可能性があると規模なのかなと思います。

宇都宮:市場が10億あってとか100億あってとか…

吉田:だから社内に人がいるし販路もあるんだけどそれを動かすためにどれぐらいのパワーがまずいるよねという。子育て中のお母さんが考えただけのアイデアだけだとなかなかそこまでのパワーになるのかが分からないから結局商品ができないみたいな。そうなってくると結局大企業として見ると企画者と製造が分離しちゃってる状態が出てきてる。だから企業側からすればユーザーに近づくとか、あとは企画者がどういう風にそのプロジェクトにコミットするかとか、そういうことになるのかなと。

三木:企画者は情熱というか腹積もりが圧倒的に重要だと思うんですけど。

吉田:その企画者が本当に最初に目をつけた

三木:その人が最初から最後までプロジェクトのマネージャー的にずっと並走する形じゃないとまずいと思うんですよね。

吉田:そうですね。そうなってくると必然的にマイクロになっちゃうんじゃないかなと。

三木:今の大企業の中が分断されてるんですよね。企画者と開発者は。

吉田:そういうこともたぶんあるんだと思うんです。「これがいいんです」って言いながら作るんだとは思うんですけれども、なかなかそうなってくると色んな意見が出てくるでしょうし。

宇都宮:しかもリリースタイミングが決まってるじゃないですか。2年後とか。「何が変わったの?」っていう商品が出てきたりしますもんね。

三木:色んな意見を取り入れてると全然つまらないモノになってしまうということですね。声の大きい部長とかね。

吉田:だからそういう社内的な要素があとは何から来てるのかなんですよね。

宇都宮:過去に成功したからというのは、外しづらいんじゃないですかね?

吉田:それもあるんだと思うんですけど、あとは怖さもそうだし、案外そういう人も含めて「実は自分が見てきた所ではこうだったよ」というのが入ってるんだと思うんですよ。だからそれがある事例とかある可能性の1つとして捉えられていればいいけど、それがその社内でとかチームの中での話で盛り上がったところだけになっちゃうと、結局それが全てになるということは人が集まると起こりやすいのかなという気はします。だから企画者が作る本人というのが一番いいんだと思うんです。

三木:チームもあまり大所帯じゃなくて最初は4、5人で。

吉田:会社もそうだしプロジェクトもそうですけど、1回1回解散するのでもいいんだと思うんです。会社にしちゃうとなかなか解散しづらいですけど、プロジェクトの場合には組み替えが起こっても全然いいと思うし。

三木:いらっしゃった所ではそういう感じではないんですか?固定化しちゃってるんですか?

吉田:それに近い感じはあるんですけど、担当部署があるので1つの製品が終わって次の製品にいくと担当しているのは同じ職場の別の人とかそういう掛け持ちは多少あります。

三木:何点か掛け持ちしているんですね。

吉田:そういう感じはあると思います。私がいた所はプロジェクトごとに個別にチームを作ってみんなで相談できたので、そういうやりやすさはあったんですけど、ただ企画全体とか、商売としての上がりを会社として出すということも考えると、そのプロジェクト1個1個が大きいですよね。なかなかチームとしては何人か顔を合わせられる範囲かもしれないけど、モノづくり全体としてマイクロかというとまたちょっと違うかなと。

三木:その中でクオリティコントロールというのは重要なポジションを占めるということで、吉田さんの会社が…

吉田:出ちゃうのかと(笑)。

三木:たぶんこれって中小企業とかメイカーズだけじゃなくて大企業でも必要だと思うんです。

宇都宮:大企業はたぶん細分化していくじゃないですか。リストラしたりして。外出た人が何か事業を興すにしても持ってるものを事業にできないから、そうするとつながり合わないと事業が成り立たなかったりするんですよね。

三木:大企業にも営業したらいいじゃないですか。

吉田:そうですね。規模問わず使えるパッケージにしたいなと。

宇都宮:オープンイノベーションという言葉が花盛りじゃないですか。光学機器メーカーさんも色々各社やられてますし。

三木:みんなこぞってオープンイノベーションしてますけど。

吉田:ただオープンイノベーションっていう単語はあっても、オープンイノベーションっていう単語が消えて別のものに細かく分かれていかないと進まないんだと思うんですよ。

三木:もわっとしちゃってるんですね。「わー」「楽しい」って言って以上みたいな、「だから何だったんだよ」みたいな、そういう事例がたぶんこれからまた山ほど出てくるでしょう。そんな時にお勧めなのがzenschoolです。

一同:(笑)

三木:これだけオープンイノベーションでおそらく何もうまくいかないという状況が、いよいよ我々の時代が来るということで。

宇都宮:吉田さんにもぜひお手伝いいただいて。


●吉田さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

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三木:吉田さんが考える「日本の○○の未来」について教えてください。

宇都宮:○○は色々キーワードを入れていただければ。日本でなくても世界でもいいですし。

吉田:日本という括りで言えば日本なのかもしれないし、別の括り方をしてもいいんだと思うんですけど、それこそ日本全体が1つの工場になるというか、誰かが「こんなのほしい」って言ったら「じゃあこうやったらできるよ」というアイデアと、「その日だったらうちの機械が空いてるよ」って言ってくれる工場さんと、「そしたらうちの倉庫、作業するのに使っていいよ」って言って組立場所を貸してくれる人と、あとは置いてくれるお店と、そういうのがバラバラになっちゃった上で、そういう風に組み替え自由になったら1つの工場になれるなと。

三木:まさにzenschoolの卒業生同士みたいな感じですね。

吉田:だから本当にその形がたぶん散発的に起こってきて、それをつなぐプラットフォームみたいなのが必要になってくるんだろうなと。

宇都宮:機能として提案する人はいるんだろうけども、現実問題それを回すというとたぶん僕らはOSが必要だというイメージがあるので、だからzenschoolでの基本OSを注入するということをやって仮説。たててます

三木:共通のマインドセットがないと無理なんですよ。

宇都宮:企業同士をつなぐっていうのはビジネスマッチでいっぱいあるし。

三木:金銭取引関係だけではもう無理だろうって。

宇都宮:契約じゃ縛れないしね。品質保証とかは特にね。

吉田:そうですね。だからそういうのがもう極論契約関係を超えて起こったらおもしろいなと。

宇都宮:紳士協定ってやつですか?

吉田:そうですね。なかなかそういう意味で文字になりにくい話っていうのがたぶん増えるんだと思うんですけど。

三木:吉田さんの修論がどうなるか分からないけども、今言ったバーチャルファクトリー的なものが何か論文に…

宇都宮:文字にしづらい。

吉田:そうですね。だからそういうのも含めて何か少なくともそこにあるというのが分かる形が作れれば。

宇都宮:幸福度はどうですか?幸福度。

吉田:それもいいと思うんですよ。

三木:共通のマインドセットみたいなのを論文にできるといいですね。同じ手法をみんな学んできたzenschoolみたいなものがあれば、その上にプラットフォームがあって、金銭関係、取引関係がそこにあって。

吉田:それが派生しつつある形が1つあると。

三木:そういう論文を書いて、ご卒業はいつぐらいなんでしょうか?

吉田:2019年の3月になるんですけど。今も実は実験をしつつデータを取りつつ、そういう場を持てる作れるという方向に発展するとおもしろいなと思いながら…

三木:ぜひ我々も研究対象にしていただければ、データご協力しますので。

吉田:ぜひよろしくお願いします。

三木:本当に今日は貴重なお時間ありがとうございました。

吉田:こちらこそありがとうございました。


対談動画


吉田貴洋さん

:⇒https://www.facebook.com/takahiro.yoshida.77


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