『お父さんはウルトラセブン』を観て
先日、銀座博品館劇場にウルトラマンのショーを見に行きまして。
『ウルトラヒーローバトル劇場!スぺシャル お父さんはウルトラセブン~大きな背中を超えるその時まで~』
どこからどこを表記したら適切か分からない! とにかく、博品館劇場で毎年開催していた公演の、スペシャル版ということらしい。
内容は一部と二部に分かれており、一部は近年のウルトラシリーズの主題歌の多くを担当する『ボイジャー』によるライブ。二部はタイトルにもある通り舞台劇『お父さんはウルトラセブン』の上演という形だ。
お父さんはウルトラセブン
それでもって、今回は主にこの舞台の感想ということになる。
いやぁ、良かった。夏のウルフェスとか冬のEXPOとか合間のソラマチのイベントとかには結構行ってる方なのだけど、ショー単体イベントってあんまり行ってなかったんだよね。それでまぁどんなもんじゃろと思って観に行ったら、ガッツリ劇でしっかり面白かった。うんうん、良いものを観た。
ざっくりあらすじを説明すると、
仕事が忙しくて子どもに構ってやれない父と、内心それを寂しく思っているウルトラマン好きの息子タツヤという一組の親子がいた。
悪い宇宙人がそんなタツヤの心の闇に付け込み、ウルトラマン達をその次元に呼び出させ……
という、「なるほどつまりこれはああいう展開になるやつだな!」という親子のストーリー。
事前情報をあんまり仕入れないで観に行ったから、いきなり男の子がDVDとして『ウルトラマンジード』を観始める展開にちょっと戸惑いつつ、タツヤの部屋に呼び出されたウルトラマンジードとゼロのコミカルな様子が楽しかったりなどした。「絨毯が汚れるとママが引くほど怒るから、足洗ってきて!」と言われたりする。ママに引くほど怒られるウルトラマンが見たい。なお舞台なのでサイズ感は統一されています。
このお話には、三組の親子が登場します。
一組目は、あらすじでも紹介した人間の親子。あまりコミュニケーションを取れておらず、息子のタツヤは父と遊びに行く日を楽しみにしていたが……
二組目は、ウルトラマンゼロとウルトラセブン。口喧しく説教をする父セブンをうっとおしがりながらも、ゼロはセブンを、セブンはゼロを誇りに思っている良い親子(最初からそうだったわけではない)。
三組目は、ウルトラマンジードとウルトラマンベリアル。ベリアルはかつて光の国を壊滅寸前まで陥れた悪のウルトラマンであり、ジードは彼の完全復活の駒として産み出されたクローン。だがジードは正義の味方に憧れており、運命に逆らい父ベリアルに立ち向かう。
……うん。うん。ジードってそういう話だからね。親子の感動ストーリーに出てくるキャラの背景じゃないよなって思うけど、そこが良かった。
タツヤ親子とゼロ・セブン親子
作中で、仕事に忙しい父は息子との誕生日の約束をつい忘れてしまい、それがために息子は「お父さんはぼくを嫌いだし、ぼくもお父さんが嫌いだ」と心に暗いものを抱えてしまう。
その暗闇に付け込まれ、特殊なアイテムで怪獣を呼び出しウルトラマンベリアルの力の源にされてしまうタツヤ。ウルトラマンゼロは、そんなタツヤを守るためにタツヤと一体化し、闇を抑え込もうとする。
一方で、自分が息子に向き合えていなかったと自覚した父は、ウルトラセブンの力を借り、タツヤの元に向かう。
セブン・ゼロの肉体を介して、父は自分の想いを息子に打ち明け、息子は父に愛されていると自覚し、闇を打ち払う……
冒頭からして期待された通りの展開、というやつだ。想いを伝えた場面では、タツヤの成長風景と共にかつてウルトラ映画の主題歌にも使われた『星のように…』が流れ良い雰囲気になった。
……。というわけで、タツヤ親子やゼロ・セブンの話は一旦置いといて。
ジードの決意
タツヤ親子の問題が解決し、怪獣軍団も殲滅した後、セブンはベリアルに「今からでも遅くはないからいい父親になれ」と諭す。タツヤの父やセブン自身のように、最初からうまくは行かなくても、子を想う気持ちがあれば良い父になれる……ということだろう。
だがベリアルにそんなことは関係ない。
終結したウルトラ戦士たちを前に、溜め込んだ力で大暴れしてみせようとするベリアル。ウルトラ戦士たちは力を合わせてそれに対抗しようとするが……
「……ボクにやらせてください」
息子であるジードは、ただ一人で父ベリアルに立ち向かう決意を固める。
ウルトラ戦士たちはジードにエネルギーを与え、ロイヤルメガマスターの姿となったジードはベリアルと一騎打ちする。
互いを想い合う二組の親子の姿を間近で見た上で、ジードは、自らの父親を自らの手で倒すと選択する。それだけでもう、心に来るものはあるのだけれど……
ベリアルはジードに「闇の軍門に下れば家族として迎えてやる」と語る。本編中でもあったことだけれど、ジードはそれを断る。ジード=朝倉リクには、既に家族に等しいくらい大切で、互いに想い合える仲間がいるから、闇の誘惑には屈しない。
むしろジードはベリアルに語る。「握ったままの拳じゃ何もつかめない」。
だけどベリアルの持つ憎しみの闇にその言葉は届かず、結局の所、二人は戦う以外に道はない。
……決着がつく。ベリアルは息子の言葉に答えを返さず、力を失い倒れこむ。ジードは動かなくなった父の身体を抱きしめ、ゆっくりと寝かせ……
光となってベリアルの身体は消え去り、ジードは涙を堪えるように、黙って肩を震わせる。
カーテンが開き、仲間たちやタツヤ親子がやってくると、ジードは何事もなかったかのように明るい態度を見せる。
……。少し本編の話をする。『ウルトラマンジード』本編において、主人公朝倉リク=ウルトラマンジードは、父であるベリアルを二度倒す事になった。二度目には、『もう疲れたよね』と呼びかけ、何度も復活する彼を眠らせるため、渾身の光線を放つ。
朝倉リク=ウルトラマンジードの物語は、『悪のウルトラマンの模造品』である自分の運命に逆らい、かつて憧れたヒーローのような『みんなを守れる存在』になるまでの物語だ。ジードは既にベリアルの息子であるという事実を乗り越え、一人の立派なウルトラ戦士として活躍している。
それでも、ベリアルが自分の遺伝子上の父である、という事実は決して変わることが無い。そのために、他の宇宙人から『ベリアルの息子』と呼ばれたり、復活したベリアルと何度も相対することになったり……
ウルトラマンジードとベリアルは、そういう呪縛としての絆で繋がれてしまっている。親子である、ということは必ずしも美しく素晴らしいことでは、無い。
……けれども、繰り返すがジードは既にベリアルの息子であるという事実を乗り越えている。誰に何と言われようが『ボクはボクだ』と返す事が出来るし、闇の誘惑に負けることも無い。何度父が復活してきたって、その行いが間違っているなら全力で止める。それがジードの覚悟であり、強さだ。
でも、悲しくないわけではないんだよね。リクは優しい青年に育ったから、たとえ父が極悪人でも、手に掛けた時に何も思わないわけではない。
時間にして十数秒の、セリフの無い一連の動きだけで、観客の胸にその事実を叩きつけてきたジード。タツヤ親子やゼロ・セブン親子の在り方を素晴らしく思えば思うほど、感じてしまう彼の運命。
ジードという存在の魅力が、そのわずかなシーンに詰まっていた。
その他
どうしてもそのシーンがメインになってしまいましたが、他にも見どころがたくさんありました!
一部のライブも楽しかったし、劇中での曲の使い方は激アツだったし。
ストーリー終了時には客席に巨大な風船が投げられて、ウルトラ戦士たちが客席を回っている間どんどん回して遊ぶ、みたいな時間があったんだけど、終わり際になってジード君がせっせと風船を回収していたのがめっっちゃ可愛かったり。
客席近くにまで来たウルトラマンたちはもうみんなカッコよくって最高だったんだけど、穏やかに手を振るマン兄さんとかもう惚れ直すよねっていう……良いカッコよさで……!
こういうリアルのイベント、とにかくウルトラマンたちと間近で会えるっていうのがあまりにも最高なんだよね。早く夏が来ないかな!
ところで、今回紹介したショーなんだけど、
以前に佐賀で同脚本の公演をした際のDVDが出るそうなんだよね。博品館では先行発売していましたが、6月には一般で出るそうで。
細かい部分とかはちがうかもしれないけど、機会があったらチェックしてみてね。全然書き足りてない見どころとか無数にあるので。ルーブとか交通手段エックスさんとかレオゼロ指定コンビとか。マグマ長兄……はどうなんだろう……分からん……
と、まぁそんなこんなで書き連ねましたが、要するにウルトラマンジードはマジで応援したくなる子だよね、って話でした。
また何かの記事でお会いしましょう!
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