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【手塚治虫漫画全集】全巻紹介 第13弾!277巻~300巻編

今回は手塚治虫の傑作中の傑作
「ブッダ」のご紹介です。
人はなぜ生きるのか?なぜ争うのか?なぜ人と比べてしまうのか?
何をするために生まれてきたのか?
人として生けるものすべてのものたちへ
巨匠手塚治虫が放つ一大叙事詩ご覧ください。

手塚治虫と言えば
ギネスブックにも載るほど膨大な数の作品を残している作家であります。
だから「名前は知っているけど何を読んでいいのか分からない」と言う方も多いと思いますし、ファンの方でも全部読んでいる方は少ないと思います。
そこでこの【note】では講談社発行の手塚治虫漫画全集をベースに
手塚作品をガイド的に紹介しています。

手塚治虫漫画全集は全400巻あり、今回はその第13弾!

277巻~300巻までのご紹介となります。
それでは本編をお楽しみください。



「ふしぎなメルモ」


1970年作
アニメの方が有名な作品ですね。
食べると年齢が変えられる不思議なキャンデーを持った少女メルモが活躍する、幼年向けのファンタジーマンガです。

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マンガの方は雑誌「小学一年生」に連載されたもので
子供達向けの性教育を意図した作品として有名
青いキャンデーを食べると10歳年をとり
赤いキャンデーを食べると10歳若返る
メルモが看護婦さんや学校の先生、婦警さんなどに変身を通じて
「性」や「女性」を学んでいくというスタイルです。


ちなみに、キャンディで年齢が変化しても、
記憶や知識は、9歳のメルモのままです。

大きくなるときにスカートが超ミニスカートになってパンツ丸出しになるんですが当時この変身でもちょっとエッチって言われたようですね。

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といっても思ったより問題にならなくて、拍子抜けしたそうです。
過去には悪書追放の攻撃をいろいろ受けていますから、
手塚先生は父兄から吊るし上げられてもいいと覚悟されていたそうで
『メルモ』を放送する時は、相当な覚悟で臨んだんですが
蓋を開けると、そんな反発はまったくなかった。…と。
むしろ思ったよりも性教育への理解があって、ある程度評判がよかったみたいですね。

さすが反逆のマンガ家ですね。
常にマンガには「多少の毒がないとダメ」と言ってた人ですから
常にパンクなんですよ。手塚先生って。ロックかな?
まぁ時代の常に先端に居ながらどんどん新しいものを切り開いていく
精神はまさにパイオニアであり
こういう危なっかしさに面白さが潜んでいるんですよね。

性教育を意図した手塚作品は本作以外にも、
『やけっぱちのマリア』『アポロの歌』があり
『やけっぱちのマリア』は対象が中高生
『アポロの歌』が大人向けの作品となっております。



「新宝島」

1947年作
手塚伝説は、ここから始まったと言ってもいいマンガ
戦後漫画の出発点、日本漫画史のスタートとして歴史に大きく位置付けられている作品であります

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とにかくこの作品に影響を受けたマンガ家は多く
この作品がなかったらここまで日本のマンガ文化は大きなものにならなかったであろう伝説の作品なんです。

戦後まもなく娯楽も文化も成熟していない時に
現れた革命的な表現方法は相当な衝撃だったようですね。

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そんな漫画の面白さ、漫画制作に目覚めた子供たちが
後に人気作家や著名人になっていくんですが
その著名人の名前を見ればわかります。

藤子不二雄先生、石森章太郎先生や赤塚不二夫先生
漫画家以外にも、立川談志さん、小松左京さん、宮崎駿さん、横尾忠則さん
早々たるメンツが胸トキメかせたわけです。


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日本漫画史のスタート、歴史の転換期であることに疑いの余地はないと共に手塚治虫という天才の出現は日本列島にある種のカルチャーショックを与えたワケであります

今見るとなんの他愛もない作品に見えるかも知れませんが
今の日本マンガ文化の隆盛もすべてはここから始まった
いわゆるプラットフォーム的な作品、
これがなければここまでの発展はなかったでしょう。

機会があれば見てみることをオススメします。


「一輝まんだら」

これはなかなかに問題作です。
正直これをご紹介するのはちょっとためらっちゃうんですが
可能な限りお伝えできるよう頑張ってみます。

…というのも。
コレ日本の支配者層の闇について触れているんで
正直どこまで書いていいのか分かりません
だから何言ってるのか分からない記事になる確率1000%ですけど
どうぞよろしくお願いします。(笑)


「ユニコ」

1976年作
手塚治虫漫画の中でも最もかわいいキャラクターじゃないかな。
観てるだけで幸せになれるくらい
ストーリーを忘れるくらいかわいい作品です

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手塚先生も
「このマンガで困ったことがひとつあります。
それはこのキャラが可愛すぎる」
と言っています(笑)
まぁとにかく愛らしくカワイイんですよ。

これはサンリオが発行していた少女雑誌「リリカ」に掲載される作品で
そういう背景もありサンリオっぽい要素と手塚先生が大好きなディズニーっぽい要素を足して2で割って完成した手塚キャラなんですね

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そして「リリカ」は海外版をつくる計画もあったために、
横書きで左綴じという、日本では珍しい雑誌になっています。

そして裁ち切りを、
全ページにわたって採用するという、凄まじい試みもやってます。
裁ち切りとは製本するときに切り落とされるか
見やすくするためのスペースみたいなもので本来は書きません。

それをコマの外枠をはみ出してページの端いっぱいまで
絵が続いているんですよ。慣れている人でも、断ち切りのことを考えながら原稿作成するのは非常に難しいものです。
しかも断ち切りいっぱいまで描く事ってマンガ家にとって面倒だし
見られて恥ずかしいところでもあります。

それをあえてやってのける手塚治虫って本当すさまじい作家です。
このスゴさは出版業界の方やマンガ家の方ならわかると思います。

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なので読めば分かりますがなんとも異様なマンガで初見で見たら
印刷が失敗したのかと思えるくらい特殊なマンガとなっています。


ストーリーは
伝説の一角獣=ユニコーンの子どもである“ユニコ”
永遠の幸福をもたらすと言われるユニコは、
人を幸せにする能力が強過ぎて神々から
「人々が簡単に幸せになりすぎる」
「誰もが苦労をせず幸せになってはいかん」

生まれてすぐ忘却の谷へ捨てられるんです(理不尽すぎ)。

ハンパじゃない哀愁感が漂ってますよね。
他者を幸せにする力をもって生まれたために
理不尽にも捨てられるって凄まじい悲劇

しかも行く先々で人々を幸せにするも
一度幸せになったもののところには留まれず
幸せにした途端に
その時の記憶を奪われたまま、またどこかに飛ばされるんです。

これは深いですよ。
愛の本当の深さってなんなんだと。
愛とは与えるものなんだよ、を徹底的に体現したマンガ

誰かのために一生懸命になり
報われない健気なユニコの姿に感動すら覚えます。

萌え要素満載の手塚キャラ屈指の萌えキャラマンガ
ぜひご一読ください。


「ブッダ」

1972年作
手塚治虫の最高傑作のひとつ
火の鳥に並ぶ、いや越えるかも知れない一大巨編です。

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この作品も語ることは難しいくらい凄まじい作品です。

ボクが初めて読んだのは小学2年生のとき
自転車屋さんにパンクを直しに行ったときの待ち時間に
このブッダが置いてあって、読むものもなく何気なく読み始めたのがキッカケです。だけど一度読み始めたらもう止まらなくなってパンクが直っても読んでました。

もっと言うと次の日以降、「ブッダ」の続きを読むためだけに自転車屋さんに行って読んでました(笑)
今思えばとんでもないことしてますね。
まぁ小学生なんで自転車屋のおっさんも許してくれたんでしょうけど
とにかく感謝してます。

あれから何年、何十年と経ちますけど、あの時の衝撃は未だに心に刻み込まれていますしストーリーは忘れちゃてる所もあるんですけど
要所要所で自身の人格形成にしっかりと糧になっている作品ですね。


ストーリーは
仏教の開祖シッダルタという後にお釈迦様になる人のお話です。
お釈迦さま、仏教と言っても
仏教の教えを説く宗教漫画ではありません。
仏教の経典も一切出てきませんし説教臭くもありません。

そして史実に沿ってはいますが、かなり脚色されていますので
ブッダの思想を手塚哲学をミックスさせアレンジした作品という方がしっくりきます。
手塚哲学なので「生命」「人間賛歌」をテーマに中心に据え
「人はどのように生きるべきか」という仏教思想をベースに物語は展開していきます。

苦行林にて3

まずシッダルタは当時の身分制度(カースト)に疑問を持つようになります。
同じ人間なのに、差別があるのか
なぜ人は苦しむのか
なぜ死ぬのか

お釈迦様の話なので聖者のイメージがありますが
本作では不完全なシッダルタがメイン

考え、悩み、苦しみ、それを永遠にくり返す、
自問と苦悩をくり返し常に悩んでいます。

「同じ人間なのに」
「どうして奴隷に生まれたのか」
「生命は平等ではないのか」

多くの悩みを抱えている人と出会い、悩み、苦しみ29歳で出家し
修行を重ねやがて数々の苦難を乗り越えた末、悟りを開いて
「ブッダ(目覚めた人)」となる姿を描いています。

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もう圧倒的なスケールです。
規格外です。
この作品が手塚後期の傑作と言われる所以は、先生がこれまで経験し
身に付けた技術と精神の粋を結集した作品だからだと思うんですよね。
脂の乗り切った天才の到達した境地
故にめちゃくちゃ完成度が高い作品です。
誰もこんなマンガ書けません、まさに天才
すごいとしかいいようがない

ストーリーはね、もうほんと読んでください。
火の鳥と同じでこれは語れないんです。不可能です。

命とはなにか?
活きるとはなにか?

ちょっと重いテーマに聞こえるかも知れませんが
時間あるときにじっくり読んでみてください。期待を裏切らないと思いますよ。


ブッダの不完全さ
悩みに悩む聖人らしくないブッダが最高にカッコイ。
ザ、人間って感じがします。
読むと現実世界に戻れなくなるくらい没頭しますよ
そして賢くなった気もします
大らかになれた気もします。
すべてのものに感謝したくなります
あくまでもそんな気がするだけですが
だけどここまで心の扉をあけてくれる作品ってないですよ

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自分の人生をムダにしないよう頑張ろうってなります。
精一杯生きていこうってさせてくれます。
これはただのマンガではない投資ですよ。
人生における投資、読書に費やした時間以上のものは必ず自分に返ってきますよ、そのくらいおすすめのマンガです。

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マジでおすすめ
2000年以上経った今でも人間の根本的な悩みが変わっていないって
単純にすごいことだと思いますし
それをあの時代に悟りというひとつの境地に達した人間を生涯を描いた作品

巨匠手塚治虫が放つ渾身の力作

ぜひこの「ブッダ」読んで損はありません。
お手に取って括目してみてください。

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今回はここまで

次回第14弾はこちら


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