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「せっかく」って口癖、やめませんか?〜サンクコストとは 〜

このシリーズはわたしが学んだヒトの行動について、経済学と絡めて(それを行動経済学という)勉強したことをアウトプットをこのnoteで共有していくものです。

サンクコスト とはすでに払ってしまって、取り戻すことのできないお金のこと

いつの間にか私たちはサンクコストの呪縛にはまっています。
もったいないから」「せっかくだから」などと口にしていないでしょうか?
わたしはよく口にしていました。根っからサンクコストの呪縛にはまっていて、要は貧乏性です。

お金は一度払ってしまえば、何か返金保証がない限り、わたしたちが払ったお金は返ってきません。

具体的な例を挙げて、サンクコストの実態を知っていきましょう。

事例1 つまらない娯楽

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Photo by Felix Mooneeram on Unsplash

🎬1,800円払って映画館に来たあなた。
冒頭からつまらないなーと感じたものの、後半にかけて面白いことがあるに違いない、「せっかく」1,800円払ったので全部見ないともったいないと思い、2時間映画館にいることにした。
📕3,000円の本を買ったあなた。
レビューや目次を見て、興味があると思って買ってみたものの、どうも文章が自分に合わない。
しかし「せっかく」3,000円も払って買った本なので、頑張って最後まで読むことにしたが、何も頭に残らなかった。
📺ドラマシリーズを長期間みていたあなた。
何シーズンにも渡ってみていたドラマがいよいよつまらなく感じてきた。シリーズが始まった当初は好きな俳優も出ていたし、ストーリーも面白かった。しかし、最近マンネリ化で観ても面白くない。
「せっかく」何シリーズも観続け、次こそは面白いはずと思い、結局ドラマを観続けることにした。

これらの3つの事例で共通していることは「明らかに時間を無駄にしてしまっている」こと。
要はどれも「つまらない」。面白い、楽しいと思っておらず、惰性で続けているんです。

逆の発想で、映画をつまらないと感じた瞬間に、映画館を出て、気になっていたコーヒー屋さんに行ってもいい、家に帰って読みたかった本を読んでみる、そんな有意義な時間に当てることができます。

人間はそこまで馬鹿じゃなく、わかっているものの、思わずつまらない娯楽に時間を費やしてしまっています。私を含め。

事例2 費用の回収を試みる

あなたは毎月どれだけ固定費を抱えていますか?
蓋を開けてみると、家賃、光熱費以外にも、Amazon PrimeやNetflix、Spotify、ジム…といつの間にか固定費がたくさんあることに気がつきます。

🎮お試しのつもりで契約を始めてみたストリーミングサービス
普段忙しく、あんまりドラマや映画を見ないあなた。友人に勧められとあるストリーミングサービスを使ってみることにし、土日を使ってう友人から勧められたドラマや映画を観賞することにした。しかし数週間たった後、いつも土日は外出することが多いあなたは、全然外出して、平日にできなかったことをする土日を活用できていないことに気づく。(それが普段会えない友人と会うことだったり、旅行をしたりと言った具合に)
解約まで後2週間、「せっかく払ったし、もったいないので今月は勧められたドラマを見終わらせることにしよう」と思い、今月は家にこもることにした。
💪筋トレで始めたジムへの入会
今年こそは体脂肪を落として、筋肉量を付けようと1月1日にいき込んだあなた。年会費を払ったので、お金の力で自分を強制してジムにいくことを習慣化しようとする。
無事に週4でジムにいくことに成功し、継続することでジムにいくことが楽しくなってくる。
しかし、ダンベルをあげているときに、腕を痛めてしまった。近所の整骨院にいくと、軽度ではあるものの、2週間くらいは安静しておくべきと告げられたが、もはや習慣になってしまったジム通いをやめたくない気持ちと「せっかく年会費払った」から、1日だけ休んで、ジム通いを継続した。
その数日後、痛めていた箇所がさらに悪化してしまい、整骨院では半年は行くなと言われ、いよいよ好きなジム通いができなくなってしまった。

冒頭でも書いた通り、一度払った費用は回収できない。それを回収しようとすれば、「もと取れた」気分になれ、回収できないと感じれば「損」と感じます。

人は損失回避傾向にあるので、上記のケースでは無理してでも回収を試みようとしたことがわかります。その無理が、元々週末楽しんでいたことができなくなった、腕を痛めてしまった、という結果になります。


事例3 恋にかけたコストの回収

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写真:Photo by Wiktor Karkocha on Unsplash

恋愛はエネルギー、時間、お金を費やす。もしあなたの恋愛におけるゴールが「付き合う」ということであれば、「結婚」することよりはコストは低いものの、恋愛にかかるコストは高くなります。

❤️あなたに気になる人、付き合ってみたいと思える人がいる
普段出会いがないからこそ、貴重である。まずはデートに誘い、慎重に映画を観に行き、ランチに行き、お茶に行き、ディナーに行き、何度もデートに行くことができた。

ここまで3ヶ月経っていて、デートも大半は自分のおごり、デートプランも考えてきたし、「もうこれは付き合える」という感触を得た。向こうからの反応もいつも悪くなく、むしろ良い。

勇気を出して「そろそろ付き合わない?」と言ったら「え?」と回答される。

結果、付き合うことができず、あなたは「今まで費やしてきたエネルギー、時間、お金ってなんだったんだろう」「貴重なチャンスを水の泡にした」と考える。

もちろんこのコストは返ってきません。さらに、あなたが「恋愛対象」とみていた傍ら、相手は「親しい友人」と見ていた。悲しいことに、その友人との関係が壊れてしまうことだってあります。

事例4 もう後戻りできない

💊あなたはとある製薬会社の開発責任者
新薬の開発のために長期投資が必要で、コストも時間もかなり必要な大きなプロジェクトだ。
プロジェクトも過渡期を迎え、そろそろ市場にローンチだ、という時に、副作用があることがわかった。ただ、生命には影響がないと実験の結果と長期間のプロジェクトで変更は許さない上層部の意見もあり、ローンチすることにした。
しかし、案の定副作用が予想以上にユーザーの心理状態に訴えられ、ユーザーの副作用報告が届いた。

投資額が大きくなればなるほど、時間をかければかけるほど、「せっかくここまで来たんだから」と後戻りできません。例え倫理的に間違っていても、何か問題が発生していたとしても、今までかけた時間とお金とで天秤にかけても、進行しているプロジェクトが優先されてしまう、ということが起こってしまいます。

事例5 効果がわからない学習

👱‍♂️あなたはとある部門の課長
部下の教育として、計画を立てて費用と時間を投資することにした。部下たちもやる気もあり、課長が足りないと思った課題を中心に教育を始め、半年、1年後には効果が出るだろうと仮定した。
半年後も教育を継続していたが、自分たちのチームの成績がうまく上がらず、どうしたらいいものかと頭を悩ませたが、「せっかくここまできたんだから、あともう一息で効果が見える」と考え、継続することにした。
1年後も同様の傾向。いよいよ部下のやる気もそがれ、継続が危ぶまれたが、課長としてはお金も時間も書けたんだから、と思っていた。さらに上司からはいつ教育の投資回収ができるんだと問われてしまった。

投資先を間違ってしまった例です。仮説を立てて、検証した上で、教育に持ち込めばよかったものの、課長の思い込みによって教育を進めてしまい、そこにかけた時間とお金が1年後ロスになってしまいました。そのコストはもちろん返ってこないし、時間も返ってきません。

という感じで、ざっくりと身の回りのサンクコスト を紹介しましたが、これを書いていて自分もサンクコストの呪縛にハマっているな、と感じました。



サンクコスト を切り離すには

やはりどうやってサンクコスト を切り離すのかが一番気になるところ。
と言いつつも、知らぬ間に「せっかく」「もったいない」と言い、サンクコスト にハマってしまっています。

切り離していくには、サンクコスト と意思決定を分けて考えていかないといけません

例えば、コストコの会費について、コストコで買い物をするには会員にならないといけません。
これもサンクコスト になり得ます。別にコストコに行かないといけないというわけでもないし、会員制じゃないスーパーや、また近所にコストコがないと、いくことが億劫になったり、特別な時しか行かなくなる、こともあるでしょう。

逆にサンクコスト を利用してみましょう。

💰1. 「投資」として捉える
年会費を1年間の投資と捉え、買い物に行くたびに、その年会費を均等に割ります。
1ヶ月に1回コストコに行くのであれば、1回あたりのコストコでの買い物コストが算出されます。

毎月の固定費として考えていくのも手ですね。

💪2. 「動機付け」に利用
サンクコスト の特徴として、「せっかく」「しないと…」と思わされています。
その心理状態を利用して、コストコへ買い物をいくための「動機」として利用します。

考え方はいっぱいあると思いますが、考え方によっては、サンクコスト は味方にもなるし、自分の行動を促すモチベーションにもなる、と思います。

実際に自分がプロダクト開発者なら、うまくサンクコスト を利用するのも手です。
新しいサービスをリリースしたら、初めの日は、ユーザーは目新しさに飛びつき、使い始めます
数日経つと、「せっかくダウンロードしたんだから」とサンクコスト が発生します。
ここを利用して、ユーザーを飽きさせないような体験や期待を見せていくことで、サンクコスト から、習慣化に変えていくことも可能です。

おしまい


参考文献



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