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逃避行




最近の私は、毎日ささいなことにイライラして、やる事なす事全部上手くいかなくて、自分なんて最底辺の人間だと外にも内にも攻撃的であった。
意識は全て、何かを思い通りにしたいのにできない現実に向かっていた。

そんな日々が続くと、ふと思う。
遠くへ行きたいな、と。
旅行しよう!と決めたら、持ち前の行動力でバッサバッサと予定を立てる。
周りもびっくり、驚きの速さだ。

私は人生の中で、こうやって何度も何度も一人で旅をしてきた。






昨日思った。
人生で楽しい瞬間は、現実を見ている時ではない。理想を追いかけてる時とか、非日常な場面にいる時なのかもしれないと。

私の旅行は計画完遂に向けて常に能動的であり、夢中になれるから、日常から目一杯私を引き離してくれる。
私は旅行が死ぬほど好きだ。
会社員をしていた頃は、貯金をほとんど海外旅行に費やしていた。大学生の頃は、奨学金を一部残しつつ、ほぼ旅行に使っていた。


いつもそう。
現実の壁にぶち当たった時に、私は遠くへ行きたくなる。この現状から逃げ出したくなる。

私が旅行を死ぬほど好きなのは、
つまり、メンタルが弱いからなのだ。
現実に対峙する強い心を持っていないから、目の前の苦境から即座に立ち去りたくて仕方なくなる。
しかし、私が立ち向かっている現実なんてとてもありふれていて、そんな大層なものではない。
だからいつも、一度現実から解放された心は思う。あれ、今の私の状況ってそんな大変なことじゃないんちゃうか?と。

結局、追い込んでいたのは自分だけで、客観的に見れば大したことはない。
勝手に自分で苦しくなっていただけ。
心の荷が降りた瞬間にいつも気がつく。





昨日、香川県で自転車を借りて、一人でうどん巡りの旅をしていた。
昨日は本当は、以前の恋人との兵庫への旅行を予定していた日だった。でも振られたので、兵庫旅行への宿は泣く泣くキャンセルすることとなった。

この日にいつもと同じように過ごしながら
「本当は今日は彼と旅行していたはずなのに」
なんて思いたくなかったから、それならせめて日常と程遠い所へ行こうと、大好きな四国への旅を計画したのだ。

(こんな時期に旅行するなよって声はもちろんあると思いますが、行きました。ちなみに8月初めに2回目のワクチンを打ったので、今が最強に抗体あるはずです。むしろ今行かなければいつ行くのかと、それは私個人の考えです。)

うどん、とっても美味しかった。
コシすんごいわ。
私はそんなに大食いな方ではないから、2店舗しか巡れなかったのが残念。
3店舗は行きたかった…。
めちゃくちゃ暑かったけど、自転車だと風を感じられて、気持ちよかった。

高松駅にはフェリーが出ている港があり、そのため、高松駅のすぐそこに海がある。
海のすぐそばの道路を自転車で駆け抜けていた時に、何て気持ちいいんやと、私は爽快な気分だった。

そこで、今この瞬間が、私の人生史に残る心地よい瞬間なのかもしれない、と思った。

社会的な地位が全くないことを焦ったり、手に職になるような努力をしていない自分に憤ったり、日々色んなプレッシャーと戦っているわけだが、
たぶん50歳ぐらいになった頃には「何であの時あんなことで勝手に焦ってたんやろ、せっかく若かったのに」なんて思ってそうやな〜
と思った。

そんなことより今、この時、この瞬間が最高やったら、それでよくない?
刹那主義っぽいけど、たぶん、50歳になっても覚えていることって、25歳の時の悩みより、その時に何に感動したかとか、何が楽しかったとか、そういうことなのだと思う。





常識に雁字搦めに縛られている私は、自分のことをよく責める。

そして恐らくだが、自己への理想がとてつもなく高いのだ。
自己肯定感をトータルで見ると、私は比較的低くはない方だと思うが、その中で「自己受容感」という部分だけは、驚くほど低いんじゃないかとよく考える。

人生の目的は、立派に生きること。
人から支持されること。
自己実現をすること。

なーんて風に思っていたら、いつまで経っても私は、プライドが高く自分に厳しいくせに本当は小心者な、尊大な羞恥心と臆病な自尊心の自分のまんまだ。

だから、人生の目的なんて別になくていいし、最高に楽しい瞬間が随所にあったらそれでいいやんか〜と思ったら、肩の荷が降りた。

やっぱり旅行ってすごい。
いつか旅の神を祀る神社とかあれば、お礼しに行かんとやな〜




とか何とか考えながら、次の目的地に向かって自転車を漕いでいた時に、前から通行人が現れた。
その方を避けようとした瞬間、元々自転車乗るのが久しぶりすぎてグラグラしていた私は、車道側にバシャっと転んだ。

その瞬間、自分の真横を大型トラックが駆け抜けて行った。

もうあと何cmか車道に寄っていれば、頭がトラックに擦れていたかもしれない。

急いで体勢を整えて自転車を起こし、自分の膝を見たら、ジーパンが破れてしまっていた。
その瞬間に、私は何だかおかしくなってしまって、道路で一人で大笑いした。


海の見える車道のすぐ側で、自転車で豪快に転んだ後に大笑いする、ただの変な女なのだ、私なんてものは。


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