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ドラマから学ぶ顧客起点マーケティング

波瑠主演のドラマ「魔法のリノベ」をNetflixで観始めたら、これが面白い!
自分の仕事とついつい重ねて観てしまう。
正にお客様の要望に応えて、自宅をリノベーションするというのがドラマのストーリーだ。そこには、営業、マーケティング、クリエイティブ、職人等相関関係で構成され、そこにドラマを面白くする演出要素とリズミカルな編集、全体的にバランスの取れた世界観で仕上がっている。
そして、これは顧客起点の体験型ドラマであり、マーケティングの教本だと思って観る事をオススメする。

序・破・急

顧客起点マーケティングのデザイン思考の「型」から紐解いてドラマを振り返ってみたい。

序・・・傾聴、同調、共感

最適な提案ができる様にお客様のお悩みにしっかり耳を傾ける。

破・・・価値、未来、興奮する

明るい未来を思わせ、ワクワク出来る様な価値提供をできるか提案する。

急・・・今買わないと損ですよ

今回の商品やサービスを購入する事で付加価値を与える。

ここで、この部分のクロージングと呼ばれる「急」に関して補足したい。
通販番組の煽り表現である「30分以内限定価格、今ならこれもプレゼント、さらに送料無料」等と謳った手法は、視聴者(お客様)の心理を煽って衝動買いさせる事を目的としている。
これは、マーケティング用語で「CTA=Call To Action」と言われる。
そして、この「CTA」に関して、私の持論がある。
それは、上記の様なお客様の心理を煽る様な手法には限界が来ていると思う。現代の情報過多やSNS等の口コミが散乱する中で、消費者は自分なりに情報収集して、買い方を身に付けている。ましてや、通販番組を観ている層は、もうこれらの古い煽り手法には慣れているはずだ。衝動的に買って後悔した商品も多いはずだ。そうやって学習してきた消費者も増えてきた事もあり、以前のような「CTA」の効果は薄いと思っている。消費者は、衝動買いする前に、「本当にこの商品は自分に必要か?メリットがあるか?」を内省して、行動変容を起こしていると考えた場合、表現を変える以外にも売り手の思想も変えて行かなくてはならない局面に来ていると思う。

現代版「ダイレクトマーケティング」

そこで、私の考える現代版「ダイレクトマーケティング」のお話をしたい。
マーケティングの4P、4C分析、顧客インサイト等踏まてクリエイティブを考える。更に、そこにダイレクトマーケティングのベストプラクティスと呼ばれるセオリー「興味・関心・納得・信用・共感・満足・行動」の構成でお客様を説得して行動変容を促す設計でクリエイティブを考える事が多い。
しかし、先程も申したようにこの手法は効かなくなっているのではないかと思う為、私の考える現代版ダイレクトマーケティングにおける必要な要素を考えてみた。

①why-問題提起
→なぜ?お客様にこの商品を紹介、情報提供するのかを謳う。
②share-共有・共感
→お客様のお悩みを共感、解決方法を導く。
③evidence-価値への根拠
→実験データや市場調査を示すことで、信頼感を得る。
④value-付加価値
→この商品を使う事で、お客様の生活に変化が起こり、ワクワクする感情を誘引する付加価値の提供。

基本この4つを抑えてクリエイティブの構成を考えればお客様に説得感のある提案をできると思う。後は「煽らず」「急がず」お客様に寄り添いながら信頼関係を築き、購入まで至るプロセスが重要だ。
一方通行でのコミュニケーションではなく、この様なインタラクティブな関係が、最終的に「LTV=Life Time Valueの向上」へと繋がるはずだ。
確かに今までのやり方を変えるには勇気が必要だし、大きな組織ほど新しい事にチャレンジするリスクを恐れる。ただ、大切なのは、お客様が自社の商品を購入するメリットを示すことで信頼関係を構築する事が重要だと思う。
このドラマ「魔法のリノベ」は、そのプロセスを分かりやすく教えてくれるので、話をドラマに戻したい。

ドラマ「魔法のリノベ」の顧客起点マーケティング

波瑠が扮する「小梅」は、まるふく工務店の営業担当であり、お客様のお悩みを聞く事に長けているだけでなく、お客様の生活背景や仕事、家庭環境等からお客様にニーズを深堀りし、最適なプランを提案する事の出来て、更に痒いところに手が届くキャラクターだ。さて、このドラマで重要なポイントを見逃しては行けない。それは、私も顧客インサイトを考える時、アンケートや市場調査から導き出す事が多い。他方で、データからは見えない所に本当のインサイトがあるという事だ。実は、ここを怠りガチな人が多い。お客様は必ずしも本音を語って無い事の方が多い為、そこに気付くには、自ら顧客と同じ導線で動きいて、初めて日常の生活習慣の中で得る真のインサイトを発見できたりするのである。
また、「玄之助」役の間宮祥太朗は、小梅のアシスタントとして、顧客視点での営業スキルを身に付けて行く成長過程にも注目して観て欲しい。その中で、素敵な台詞がある。それは「お客様の気持ちを可視化出来るチャート表を作る」と言い、小梅がその成長に感動するシーンがある。これは、データに基づいて顧客ニーズを導き出す上での重要なシーンとして捉えてドラマを観ると面白いかもしれない。
更に、この第6話が面白い。マドリストの「飯星靖子」演じる真飛聖の優柔不断なキャラクターに小梅、玄之介、そして玄之介の弟役「寅之介」(落合トモキ)の提案も客観的に観ていて面白かった。小梅と玄之介は、ご要望や予算を考えてお客様に寄り添った提案を3パターンプレゼンする。一方で不動産屋の寅之介は、物件を即決して欲しいばかりに「煽り」を入れるのである。「今買わないと売れちゃいますよ」という具合に。それはそれで、ビジネスとして正しいのかもしれない。会社の売上と利益をを目的とする会社員なら言わば当たり前かもしれない。しかし、玄之介は、お客様に後悔して欲しくない思いで、マドリスト飯島の過去の物件資料を小梅と分析して、更に顧客ニーズに合った提案を持ち掛けるのである。予算内、理想の物件イメージ提案でグッと心を鷲掴みにするのである。そこで、注目するべきは、寅之介の提案である。それは、マドリスト飯島が過去に欲しかった物件を見つけてきて、予算内で収まるが故に、過去に気に入ってた物件だという切り口で提案するのである。客観的に見れば、それは、お客様に全く寄り添ってない。自分の営業成績と会社の利益が先行している。この2方向からプレゼンされたら、小梅と玄之介さんでお願いしたいという感情が起こり、行動変容を起こすのは当たり前だという感じでドラマを観てしまった。
冒頭の「序・破・急」に沿って観ると、小梅と玄之介はお客様の声を傾聴し、明るい未来を掲示、そして最後にお客様の背中を押したのは「信頼」だと思った。
「RTB=Reason To Believe」この商品やサービスを購入する上での「信じる理由」が顧客の中に根付いた結果だと思って「魔法のリノベ」を考察してみた。このドラマは「顧客起点マーケティング」の初心者向け教本としてオススメしたい。

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