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Zen2.0 2022 セッションレビュー 〜DAY1 セッション#2〜

2022年9月10日 DAY-1 #2

ソーヤー 海さま・藤野 正寛さま

登壇者お二人のプロフィールは以下でご覧いただけます。

・ソーヤー海さま

・藤野 正寛さま

私生活でも小さな娘さんのパパであるお二人、Zen2.0初登壇のソーヤーさまと、お馴染みの藤野さまの対談。Zen2.0史上、「子育て」というキーワードの対談は初めてだったはずです。

「歯磨きの強制」が表す構造とは

冒頭藤野さまは、ご自身の経験に照らしてこう切り出します。「自分の中には、まだ子供のまま育っていない部分があって、その子供が暗い部屋でいじけているようなところがあります。母親と話すと、不思議とこの部分を的確に突いてくるので、例えば10日間のリトリートから戻ってスッキリした状態でも、母親と話すと10分もその状態が持ちません(笑)。この部分に反応しないようにしようとビクビクする感覚があり、これが子供にうつってしまうのでは?という恐れを感じています」

ソーヤーさまは続けます。「4歳の娘は、ぼくの禅の先生です。つくづく、自分がいないと娘は存在しないし、自分も親とそういう関係にあるという事実を実感しています。つまり、常に繋がりは存在しており、お互いの一部であるということです。それゆえ、親の嫌な部分も植え付けてしまっているのでしょう」

「『歯磨きの強制』は典型的な例です。遊んでいる時などに、親から『歯磨きをしなさい』と言われますね。楽しく遊んでいる時に、子供はすぐに動きません。そうすると、『歯磨きをしないとおやつをあげない』といった形で『◯◯しないと××できない、させない』という、子供にとっては怖い言い方に変わっていきます。歯磨きがなぜ必要なのかという本来の目的ではなく、生存のために歯磨きをするようになるわけです。つまり、力のある人に従わないといけない、という構造がそこに現れています」

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ソーヤーさまはこう続けます。「今の地球の状況は、私たちが好まないことや願っていないいろいろな暴力が起こっていますね。歯磨きは一例ですが、「学校に遅れてはいけない」もそう、小さい事例ですが「パワーで強制する」「その結果、力のあるなしという格差が生まれる」という、本来望ましくない形が再生産されるのが子育ての現場だと思うのです」

ハッとさせられる話ですね。「力で押さえつける」という感覚ではない無意識下の状況であったとしても、皆さんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

二元論的世界観と再生産のしくみ

さて、それではなぜ、子育てを通じて受け継がれてしまうのでしょうか。そして、私たちはそれに対してどう向き合えば良いのでしょうか。

「世の中には本当に多くのトラウマがあり、むしろそれは特別なものではなく蔓延しているもの、あるのが当たり前というのが今の社会です。小学校の体罰や刑務所もそうですが、失敗した人をさらに苦しめて追い込む仕組みが定着しています」ソーヤー様はこう切り出します。

「結果的に、力のある側・権力者に従うのが正しいという観念が前提になっています。子育てにおける親の存在も、『正しさを決めてしまう存在』であると言えます。これが、親子間で代々受け継いでいる苦しい体験が伝わってしまうしくみの本質であり、社会における前提が再生産のしくみになってしまっている構造だと言えます」

いわゆる二元論的な世界観では、「善と悪」「正しいことと間違っていること」という風に、物事を分離させて区別したがります。「結局ウクライナで起こっていることも同じです。ロシアにもウクライナにもそれぞれに理屈があって、『自分達が正しく相手が間違っている」という型にハマってしまいます。常に敵がいる状態を作り、この敵がいなければ良い、というパターンに陥るわけです」「これが社会に根付いている構造になっているために、変えるのは相当に難しいことですが、Give Upする必要はありません」ソーヤーさまはこう続けます。まさに今年のZen2.0が掲げている「The Stories of Interbeing〜すべての物語と共に生きる〜」のコンセプトと一致する文脈ですね。

ソーヤー藤野②

では、どうすれば良いのでしょうか。何がこの構造を少しづつでも変えていく力になるのでしょうか。「やはり、二元論的なものではない、繋がりの社会に変えていく必要があります。そのためにも、自己共感・慈愛、いわばセルフコンパッションがとても大切だと思います」自分を愛するということは、自分自身の不完全さを受け入れてあげること。そうすることで、他者の評価に左右されて自分で自分を責めてしまうサイクルから自由になれる。結果的に他者を愛せるようになる。子育てにおいても、その姿勢が子供の安心や、子供自身が劣っているのではないか・悪いのではないかと考えなくなることにつながる、とソーヤー様は続けます。

ネガティブ・ケイパビリティの重要性

「トラウマが伝わるというのは、ある刺激に反応するパターンが固定していること、だと言えます」ある特定の言葉や状況に直面すると、怒りや恐怖を感じ、それが何らかの行動につながってしまう。藤野さまはこう解説し、ある研究結果について言及します。「母親が自身の身体感覚一つひとつにラベリングできるような感覚を持っていると、その子供は感情コントロールが強く、乱れた時に元に戻る力があるという傾向が研究されています。ラベリングというのはすなわち状態の言語化なので、子供の状態(今は怒っているんだね、とか寂しいんだね、というように)を言語化でき、子供も自分の感情を理解できるようになるわけです。これができないと、『何かモヤモヤしている』から『ムカつく、キレる』という行動が引き起こされてしまいます。」このことからも、親が持っている「ある刺激に対する反応パターン」が子供にもうつっていく、という構造が導かれるわけです。

藤野さまはさらに、ご自身の子育て経験に触れます。「我々は『答えのある世界』でずっと生きているわけですが、子育てに関しては『答えのない世界』だと言えますね。そこで重要なのがいわゆるネガティブ・ケイパビリティ、「分からないことを認められる」「分からなければその態度をちゃんと保持する」という姿勢だと思います。要は、頭で分かった気にならないということであり、答えがあるはずだという思い込みも外すことが重要です。」ご自身も、夜中にぐずって泣いている娘さんに手を焼いた経験があり、その時のエピソードをこんな風に解説されます。「妻の時には泣かないのに僕だと泣いてしまう。何も理由は思い当たらないのに。そんな状況で気づいたのは、『泣いていないのが良い状態だ』という自分自身の思い込みです。何とか良い状態、つまり泣いていない状態に持って行かなければと考え、心がここにない状態だったと気づきました。娘が泣くことを求めているのであれば、ただそうさせてあげて見守れば良いと。こう気付けてからは、泣くことがあってもその状態を楽しめている自分がいます」

子育てを通して繋がりを取り戻す

「子供と、ただ共にいてあげる。全てを任せていく。このことによって、子供の中に自然と信頼感が生まれてくるのだと思います」

ソーヤー藤野③

脳科学者のダン・シーゲル氏は、トラウマの原点、The original Traumaについて「人間と自然が分離したときに生まれた」と言っているそうです。「本来自然の一部である人間を分離して捉えるようになったことで、循環し続ける自然とそうではない人間、という形に離れてきてしまっている。さらに、人と人も分離したためにコミュニティを欲したり、ついに自分探しということも言われるようになっている。つまり、分離した社会構造を作ってきてしまった中で、改めて繋がりと取り戻すということが重要になってきている」ソーヤーさまは子育てを通してまさにこれを実践中だと言います。「まさにその繋がりを取り戻すということが、社会への信頼感につながると思います。子育てを通して、この感覚を育んでいきたいです」藤野さまのコメントで、対話は終了しました。

対談中、ティク・ナット・ハン老師のある言葉をソーヤーさまが紹介してくださいました。「人の中にはいろいろな種があります。健やかさや繋がり、養いといったものもあれば、トゲトゲした感覚・批判・罪悪感や恥などもあります。そのどれに水をやるのかが大事です」子育てにおいても人を育てる場面でも、よき種に水をあげたいですね。

2022.09.19(text by Joe Okouchi)

<Zen2.0 公式Webサイト>