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『戦場のメリークリスマス』 テーマ曲ばかりが有名に。映画は分析するだけじゃ面白くない。みんなが蓮實重彦になる必要はない。

評価 ☆☆☆



あらすじ
1942年ジャワ島。日本軍の捕虜収容所で、イギリス軍中佐であるジョン・ロレンスはハラ軍曹に呼び出される。ロレンスは日本語が話せるため、ハラ軍曹に重宝されていた。案内された砂浜にはカネモトという朝鮮人軍属の男性とオランダ兵のデ・ヨンとい捕虜がいた。



1983年公開の『戦場のメリークリスマス』を観にいった時のことを良く覚えている。出演はデヴィット・ボウイ ビートたけし、坂本龍一など。監督は大島渚。僕はある女性と一緒に行ったのだが、彼女との関係を説明すると長くなるで割愛。簡単にいえば僕の憧れのひとでした。




ふたりで映画を観た後、彼女はこの映画を観た後でロビーでポロポロと泣いておりました。彼女に言わせると「この映画は魂のふれあいを描いている」という。憧れのひとが隣で泣くなんて体験はなかったので、当時の僕はどうしていいかわからなかったけれど、「この映画はそれほど人を感動させる何かを持っているんだ」と感じたのを覚えている。



それに「どうして彼女がこの映画に感動したのか」もその時はよくわかった。当時、僕は「彼女が何をどんなふうに世界を見ていてるか、自分や他人に対してどんなふうに考えているか」も理解できた。



話を戻すと『戦場のメリークリスマス』は男性同士の愛情を描いているが、それは男性同士というより、性別を越えた人間同士の愛情を描いた作品になっていた。クライマックスシーンは不自然なのだが、それもまた映画だし、感動的でもある。



大島渚監督の作品はそんなに観ていなかったので『戦場のメリークリスマス』がどういう位置付けなのか、彼の特色をどのくらい表現しているのかはよくわからなかった。だが、映画は分析するだけじゃ面白くない。みんなが蓮實重彦になる必要などない。



僕はこの映画やこの映画のテーマ曲を聴くたびに、あの時の映画館の様子、僕の隣で感動して泣いていた憧れの女性のことを思い出す。映画にはそういう効用もある。



そういうのを含めて映画である。そういう映画体験を僕はずっと大切にしたいと思っている。



追記



あれから年月が経ち、大島渚やデヴィット・ボウイは鬼籍に入り、映画だけが残された。この映画はあまり人気がないようだが、坂本龍一が作ったテーマ曲は人気を集めている。でも、坂本龍一はこのテーマ曲はあまり好きではないらしい。不思議なものである。




初出 「西参道シネマブログ」 2005-12-30



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