IKEAのScan & Goから考える、店舗会計時短サービスの更なる可能性
Scan & Goは快適な顧客体験を提供する会計時短サービス
先日、IKEAに行く機会がありました。IKEAについて簡単に紹介すると、スウェーデン発祥の家具・インテリア雑貨の販売を行う企業で、特徴的な点としては、自分で組み立てるフラットパック(平たく梱包された状態)の家具や、シンプルで機能的なデザイン、そして比較的低価格なことがあります。また、環境にも配慮し、再生可能な素材を使用するなど、社会的責任を果たす取り組みも行っており、世界中で多くの人々に愛されるブランドであり、家具やインテリア雑貨を販売するだけでなく、ライフスタイルを提案することでも知られています。
そんなIKEAに行って少し面白い体験をしたのが、IKEAのScan & Goというサービスです。Scan & Goは、店舗内で商品を購入する際に、スマートフォンを使って自分でレジ手続きを行うサービスです。レジには、Scan & Go専用の優先レジがあり、アプリから会計用のQRコードを表示し、レジの端末でスキャンすることで支払い情報が端末にすぐに連携され、簡単に支払いを終えることができます。
なお、Scan & Go自体はIKEA以外にも他の小売店舗でも導入されており、そこまで新しい技術・サービスではないです。2018年にWalmartが導入(その後、失敗し撤退したものの、コロナの影響下もあり再挑戦)したり、イオングループが開発した「Scan & Go Ignica」や、イトーヨーカドーの「IYマイレジ」 等、様々な店舗で導入されています。
さらに、これの発展型であるScan & Payという、店舗チェックアウト時に支払いも完了するタイプのサービスも米国の7-Eleven等では導入されています。
購入者側のメリットとしては、購入予定額を簡単に把握できたり、優先レジ利用による待ち時間の短縮があります。なお、レジの待ち時間は顧客満足度向上に割と影響を与える点と考えられており、例えば、全米第2位のスーパーマーケットのKrogerでは、顧客の会計時間を如何に短縮するか?という点を改善するために策を練った結果、平均4分から26秒まで短縮させたという取り組み例もあります。
一方で、当然ですが万引対策やスキャン忘れ等の対策はかなり重要になります。ただし、具体的にScan & Go実施店舗での万引等の対策が既存店舗等と比べて何が異なるのか?は明確な情報は出ていません。(実際、どう対策を強化してるかは非常に気になる所…)
Scan & Go以外にも会計時短による快適な顧客体験提供を志向するサービスは多い
会計時の待ち時間を短縮するサービスはこの他にもいくつか存在します。
セルフレジ
身近な所からいくと、セルフレジがあります。セルフレジは購入者自身で商品バーコードのスキャンをし、会計を済ませることができるため、セルフレジ端末を複数台用意することで、限られたレジ打ち店員の状況下でもレジ待ち時間の短縮が見込めますが、一方で、購入者自身が商品バーコードをスキャンするのは逆に時間がかかる点や防犯上の懸念 等もあるため、商品スキャンは店員が実施し、会計だけを顧客側がセルフで実施するタイプのセルフレジもあります。
RFIDレジ(ユニクロ 等)
RFIDレジは、商品に取り付けられたRFIDタグを読み取ることで、商品の種類や価格等の情報を瞬時に読み取ることで、レジでの会計作業を効率化する技術・サービスです。これは、従来のバーコードスキャンに比べて、会計作業のスピードを大幅に向上させることが可能です。一方で、RFIDレジは、現時点では全ての企業・店舗で導入できる技術・サービスではありません。というのも、RFIDタグ自体のコストや、全商品にRFIDを取り付けるための設備・オペレーションが必要なためです。
レジなし型(Amazon Go 等)
レジなし型は、店舗内にレジスタッフがいない状態で購入者が商品を自由に選び、退店時に選択していた商品の支払いが自動的に完了している技術・サービスのことで、代表的なサービスとしてはAmazon Goがあります。Amazon Goとは、店舗内に設置されている複数のカメラとセンサーを使って、購入者が商品を取り出したり戻したりする度に商品情報を認識し、その情報に基づいて、購入者が店舗から退店する際に自動的に会計が行われる非常に画期的な店舗です。
日本でもレジなし型店舗の取り組みは一部で進みつつあります。例えば、高輪ゲートウェイ駅に存在する駅ナカ無人コンビニ「TOUCH TO GO」は、2020年3月にオープンした店舗であり、来店客は店内で商品を手に取り、出口付近でSuicaなどを読み取り機にかざすだけで買い物を完了させることができる。なお、このレジなし型店舗の面白い点は、単に待ち時間を短縮するだけでなく、店舗側としても、なぜこの商品が売れなかったのか?という情報を来店客の動線を分析することで要因をあぶり出すこともできる。
会計時短サービスは、活用技術 x 集計場所 x 支払場所の観点から進化の過程と方向性が読める
様々な会計時短サービスが登場していますが、これらの進化の流れは、「活用技術」x「集計場所」x「支払場所」の3つの構成要素の観点から整理することができます。
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