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君の記憶の中で生き続けたい。


鶯が鳴いた。
今年は僕にとって何回目の春だろうか。
900年も生きていれば春が訪れても感動しなくなった。


しかし、君に出会ってから。
春は僕にとって特別なものになりました。


春。
桜が満開の日に君に出会いました。
柔らかな髪の毛をなびかせながら一生懸命桜の写真を撮っていましたね。


君はよく笑う人でした。
僕はそんな君の笑顔が大好きでした。
そして。
君はよく泣いていましたね。
小説や映画を見ては泣いていました。
そんな君の涙はとても綺麗で温かかった。


コロコロ変わる君の表情を見ること。
となりを歩きながら君の鼻歌を聞くこと。
時にはちょっと喧嘩して。
美味しいご飯を2人で作って。


些細なことでも全ての瞬間が幸せでした。


ダメだと分かっていました。
僕は君に恋してはいけなかった。
それでもあと少し。もう少し。
君と一緒にいたいと願った。
でも許されなかった。


君に忘れられる怖さ。
君の記憶から僕の存在が消される怖さ。


神様が僕に与えた罰はこういうことなのだろう。
これまで大切な人の死を何回みてきたのか。
自分だけが取り残されることの辛さ。
人生に幕を閉じることが出来ない辛さ。


僕はもう大切な人の死を見たくなかった。
だから君との恋物語を終わりにしました。


涙が溢れる前に君にカスミソウの花束を渡した。
君は僕とお別れとも知らずに「また来年もちょうだい」なんて言ってたよね。
あれは僕の庭一面に咲いているカスミソウです。
君はカスミソウの花言葉を教えて欲しいと言いましたね。

「幸福」

僕は君に幸せが訪れるように願ってカスミソウをプレゼントしたんです。

あと、、。
カスミソウがきっかけで少しでも僕のことを思い出してくれたら。
そんなことを考えたりしました。
記憶を消そうとしているのに。
僕は自分勝手ですよね。
ごめんなさい。


最後に君に言ったことを覚えていますか?


僕が憂鬱な時は雨が降る。雨が降った時は僕が君のことを考えていると思ってください。
君は初雪を見ると喜んでいたから、時には初雪となって君に会いに行きます。


僕の言葉を聞いて君は困惑していたね。
君は何かを言いかけていたけれど、僕の気持ちが抑えられなくなる前に。

君の記憶から僕の存在を消した。

何も無かったかのように帰っていく君の後ろ姿を見て僕は泣いた。


その日の夜から雨の日が続いた。
僕は憂鬱な日が続いた。
ずっと君のことを考えています。
君がとても恋しい。



今年の初雪は早めになると思います。
早くあなたに会いに行きたい。
君が初雪を見て喜ぶ姿を早く見たい。



すごく遠いけど。
あなたのことを愛しています。
今でも。


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