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本当に大切なモノって。


自分にとって本当に大切なモノってなんだろうね。


私にとって大切な人が隣で呟いた。
「いつも唐突に深い話を始めるよね。」と彼に返しながらも、興味深い問いだと思った。

まず、彼が何故いきなりそんなことを言い出したのかと思い、チラッと横を見ると「たいせつなこと」と表紙に書かれた本を手に持っていた。私は春休みに読む本を探すために、彼と古本屋に来ていた。
彼の選ぶ本は考えさせられる本が多く、センスがいいなと毎回感心している。


本当に大切なモノか…と考えていると、彼が口を開いた。

「命って答える人が多いかもしれないね。でも俺だったら自分って答えるかな。」

私はその言葉の意味が理解できずに「へ?」と間抜けな声が出てしまった。

「自分にとって本当に大切なモノは自分?でも、自分が存在するためには命が必要だよ。だとやっぱり命が1番大切なんじゃないの?」と彼に聞くと

「たしかに存在するためには命が必要だけど。……仮に君が人質で、君を解放するために俺が死ななきゃいけない場面に遭遇したら、俺は死を選ぶよ。ロミオみたいにね。カッコつけとかじゃなくて本当にそうすると思う。」

「……。それだと、自分が1番大切なのに自ら死を選んでいることになるよ。君自身の価値よりも私の価値が高くなっているし、矛盾が生じているんじゃない?」

「確かにそうだね。でも自ら死を選ぶってことは命を捨てることだから、結局は自分の意思を大切にしていることになると思わない?そう考えると命よりも自分の方が大切なんじゃないかなって。」


……分からない!!!!!!
私は頭をフル回転させて考えたがどうしても分からなかった。彼自身も伝えたいことを言語化することに苦戦しているようだった。
彼が口にした「ロミオみたいにね」というのはロミオとジュリエットの事だろう。ロミオとジュリエットは切なく終わる男女の恋の物語である。その切ない終わり方を簡単に説明すると

(ネタバレ注意)

ジュリエットは仮死状態であったが、ジュリエットが本当に死んでしまったと思い込んだロミオはジュリエットの側で毒をあおり息絶えた。 目覚めたジュリエットはロミオの亡骸を発見し、ロミオの短剣で胸を刺して後を追った。


というような感じ。
誰かのために自らの命を捨てる。これが彼の「ロミオみたいに」という言葉の意味であろう。
そうなると…。「自分にとって本当に大切なモノは愛する人」と言ってもいいんじゃないのかと思った。これらの考えを彼に伝えると、「本当って本当に厄介な言葉だな…」と苦笑していた。そして彼はもう一度考えを述べた。

「そもそも、本当に大切なモノには内側と外側があるのかもね。さっきの話で言うと、1番外側は愛する人、その内側は自分、最も内側に。これじゃあ本当に大切なモノは1つには絞れないね。」

「確かに、本当に大切なモノを1つ述べろって言われてもそのモノには外側と内側があるから結局複数述べることになりそうだね。命と答えたら、じゃあ命ある自分は?ってなるし…」


考えれば考えるほど訳の分からなくなる話だったため、私たちは「もう終わり!!」と言ってこのお題に終止符を打った。


そして今度は

愛する人の為なら本当に命を捨てることが出来るか

というお題を私から出した。

彼は先程「俺はロミオだ!(誇張)」という発言をしていたため、

「現実でも、もし銃を向けられたら庇う立場になるし、男の人は本能的に大切な人を守ろうとするんじゃないかな。そうじゃない人もいるだろうけど。まあ、あくまでも個人的な意見だけどさ。」

とすんなり答えた。

愛する人、もしくは大切な人の為に死ぬことが出来るか。映画やアニメで良く見るシチュエーションだと思う。涙腺の弱い私はだいたい、このようなシーンで大号泣する。

それが現実だった場合。自分はどうするか。

ひえ〜、なんてお題を出してしまったんだと後悔しながらも、考え甲斐があると思った。

自分の身は自分で守る。という言葉があるが、それが不可能な場合、愛する人or自分が死ぬとなった場合。ロミオとジュリエットのように互いに愛し合っていたら、どちらも自分が死ぬという選択肢を選ぶだろう。

そんなふうに考えながら、愛って深いと思った。
それと同時に、愛というものに支配される恐ろしさもあると思った。

これ以上考えると話があちこちに脱線しそうだったため、「このお題も切り上げ!」と言って彼と共に古本屋を出た。


自分にとって本当に大切なモノは何か
愛する人の為なら本当に命を捨てることが出来るか

結局これといった答えは出なかったが、思考することだけでも面白かった。

皆さんもぜひ考えてみてください。

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