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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【5月17日㈬~5月23日㈫】

木曜夕方カンヌ映画祭出張から戻り、金曜は通常通り出社。当通信更新日の水曜はちょうど移動日で機上の人(今どきは機内WiFiがあるので更新しようと思えば出来るのですが…)、帰国直後もバタバタして3日遅れの更新となってしまいました。

只今、時差ボケ真っ最中。何時に寝てもパッキリ午前3時半とかに目が覚めて、その後眠れません。やっぱり機内ではあまり眠らないほうが良いのでしょうか?食事の時以外はほとんど寝てて、下手をすると離陸前や着陸時にも寝てることがある私なので(よく『エアポート’75』とかの乗り物パニック映画で、生きるか死ぬかの危機が襲ってきて、主人公の活躍によって皆が助かるまで、その間何も知らずにずっと寝てた、みたいなキャラクターがいますが、そんな感じ。笑)、睡眠のサイクルがメチャクチャになってしまうのでしょう。ならば眠らずに、機内エンタテインメントで映画でもまとめ観すれば良いのですが、観たいと思っていた映画はほとんど劇場で観てしまっていて、劇場で“敢えて”観なかった映画しか残っていません。今回は仕方なく(笑)行きと帰りに映画『イチケイのカラス』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』を1本ずつ観ましたが。

さて。カンヌ国際映画祭。受賞結果も間もなく発表になりますが、私がコンペ部門で観た映画は数本なので予想のしようもありません。そちらは矢田部さんのnoteにお任せすることにして、ここはやはりうちの会社ならではのエピソードなどを少し。会期中、ビーチのレストランで「MONGOL NIGHT」と銘打ったパーティが開催され、『セールス・ガールの考現学』のプロデューサーに声をかけて頂き、参加してきました。今回、“ある視点”部門にエントリーされているモンゴル映画『If Only I Could Hibernate』をプロモートするのと同時に、モンゴル映画人と世界の映画人の交流を目的とする催しです。残念ながら『セールス~』のジャンチブドルジ・センゲドルジ監督や、サロール役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルさんはカンヌには来てなかったけど、画像の通りの馬頭琴の演奏、ホーミー歌唱、アクロバティックな雑技(コントーションというそうです)、モンゴル文字で名前を墨で書いてくれるコーナーなどがあり、気軽なカクテル・パーティを想像していた私はちょっとビックリ、世界に向け自国の映画を発信するモンゴル映画界の本気度を感じたりしました。

“モンゴル・ナイト”の様子。馬頭琴の音色とホーミー歌唱がカンヌの浜辺に響きます。

前述の、“ある視点”部門で上映された『If Only ~』は残念ながら観ることが出来なかったので、権利元に問い合わせて、もし日本に売れていなければリンクをもらって観てみようと思っていますが、監督のゾルジャルガル・プレブダシさんは日本とも縁があり、2017年に東京フィルメックスの「タレンツ・トーキョー」に参加、短編『裸の電球』(21)が21年の大阪アジアン映画祭で上映されていて、今回の作品が初長編だそう。数学の得意な少年が、出稼ぎで不在の両親に代わって幼い弟や妹の面倒を見ながら、奨学金の獲得を目指す…というようなお話のようで、『セールス~』とはまた違ったモンゴルの姿が垣間見れそうです。

グランドホテル6階のセールス・ブースからの眺め。後半数日ぶりにやっと晴れました。

さて。Screen International やらHollywood Reporter やら、業界紙の「あの映画は、どこそこの会社に売れました」というニュースが、日本にいてもネット上でチェック出来る今日この頃。俗に言う(のか?)“売った買った情報”、別名“切った張った情報”が業界内外に飛び交っています。著名な監督の新作は、今回のお披露目のとっくの前に日本の配給元が決まっていることも多いのですが、パルムドールの下馬評も出ているA24の『The Zone of Interest』(『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー監督作)などは出来上がりを観てからの買付合戦だったようで某社が獲得した、との報も聞こえてきました。ザジはそんな“切った張った”の世界から一線を引き(引かざるを得ない)、新人監督作品や、メインどころではない製作国の映画、見た目は地味だけど内容的には引っかかりのありそうな映画などを中心に、コツコツと試写する日々でありました。

が、今さらなんですけども、映画の買付ってホントに難しいです。たとえば今回も「あ、このネタはパブリシティ的にも興行的にも、日本のマーケットで可能性があるのでは?」と思って観に行っても、自分自身にはイマイチ響かない映画だったり(ベタ過ぎる、とか)、逆に心に響いても「う~ん、こんな特色のない映画、どうやって宣伝すればいいのだろう?」と、最初から悩んでしまう映画だったり…。何年この仕事をやっていても、方程式を見出せません。だから面白い、という話もあるのですが…。

…ということで、悩みながら、私のカンヌ映画祭は終わりました。毎日アパートで自炊に励んだザジ・チームでしたが、最後の夜はお誘いを受けて、中心地からタクシーで10分ほど行った静かなエリアにある、シーフードが美味しくて有名なお店に行ってきました。生牡蠣にカルパッチョ、海老の塩焼きにアーティチョークのサラダ。メインはスズキの塩釜焼き、デザートはストロベリーメルバ、というアパートでは決して作れないメニューの数々を堪能。毎晩肉じゃがを作ったり、唐揚げを揚げたり、ソース焼きそばを作ったりしていましたが、最後の最後に地中海な気分を味わえました。

本格的なレストランでの食事は、滞在中この1回だけ。

7日間のマーケット参加を終え、23日ニースからロンドンに移動。帰国の羽田便に乗るまで丸1日、束の間の休息です。物価高騰に加えて、円安ポンド高。到着後に遅い昼飯で食べた中華街のワンタン麺が、日本円に換算すると2,600円という事実にビビりつつ、夜はウエストエンドで舞台版「ブロークバック・マウンテン」を鑑賞しました。インターネットで数か月前に取っていたチケットのQRコードを入口で読み込むと、「アップグレード出来てるからBOX OFFICEに寄って」ともぎりのお兄さん。2階席だったのが、1階の前から3列目に替えてもらえました。ラッキー。会場のSOHO PLACEは円形劇場で、私のすぐ横の花道を主演のルーカス・ヘッジスとマイク・ファイストが出たり入ったりするので、手を伸ばせば彼らが躓いてしまいそうな距離感!ルーカス・ヘッジスはもちろん知っていましたが、「マイク・ファイストって誰?」と思ったら、スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』のリフ役の人なんですね。ちなみに音楽はエディ・リーダーが舞台上で生で歌う、という贅沢な演出。その情報は入手していなかったので、嬉しいサプライズでした。

プログラムは全ページカラー52Pで£5。良心的値段ですが広告が多め。

短いながらもロンドンでの休日気分も味わえて、出張は終了。さあ、また来週から頑張りましょう。カンヌで得た情報、ぼちぼち形にして行かなくては!

texte de Daisuke SHIMURA

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