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【ss】 49

幼い頃の姿をした妹がプレゼントを持ってやってきた。妹は今17歳のはずだから、ああこれは夢なんだとわかった。

おかっぱ頭に不揃いなガタガタの前髪だから幼稚園の頃だろうか、母が散髪していたあの当時の私たちの前髪はいつもガタガタだった。幼い姿をしているクセにやけに大人びた口調で、「私にはもう必要ないものだから、お姉ちゃんにあげるね」と黄色いリボンのかかった包みを渡してくる。

リボンは指先でそっと触れただけでするりとほどけて、展開図のようにパタパタと箱が開いた。

中には何も入っていなかった。

勉強も運動も苦手、母に似て不器用な妹はとにかく人に甘えるのが上手だった。

夏休みの宿題は毎年、最終日まで溜め込んでは、「お姉ちゃん出来ないー」と上目遣いで甘えてくる。ガミガミ言いながらも結局手伝ってしまうのだから私も大概なんだけど。

苦手な事がたくさんあるのに、妹はやけに運がいい。一緒にベランダで流星群を見ている時も、私は見ている方向をいつも間違えてちっとも見えないのに、妹はタイミングよく何個も見る。

「お姉ちゃんは流れ星みつけるのがヘタクソだねぇ」

いつも笑っていた妹、私とは違って誰からも愛された可愛い可愛い妹。

妹の葬式にはたくさんの人がきた。

ここ最近、喉元まで出かかってはなんとか飲み込んでいた言葉を、決して口にしてはいけない言葉を両親にぶつけてしまった夜だった。

空っぽの箱をぼんやりみつめていると、「じゃあお姉ちゃん、もう行くねー」と言って妹は消えた。あの朝、家を出た時と同じような気軽さで。

そういえば、幼稚園の頃妹が持っていた傘が黄色だったな。私がミントブルーでお揃いのウサギの絵がついていた。あの子は私のミントブルーの傘を欲しがった。あんなに欲しがっていたんだから、交換してあげればよかった。

その日から何故だか流れ星がよく見えるようになった。


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