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UXデザインにおけるダークサイド

今回のお話

サービス・プロダクトのUXとは何でしょうか?
サービス・プロダクトとユーザーの相互コミュニケーションを上手くつなげたり、ユーザーの目的を達成するためのデザイン(=仕組み・設計)がUXとも言えるかと思います。

サービス・プロダクトのUXをより良くするために、様々なデザインを考え実施していくことになりますよね。

その中で「邪悪だ」とか「ダークサイドに落ちた」と思ったことはあるでしょうか?
また何かしらのサービス・プロダクトを使っていてこれは邪悪だと感じるようなデザインに触れたことはありますでしょうか?

今回はこの記事を見ながら、UXにおけるダークサイド・邪悪さについて考えていきましょう。

①ダークサイドUX=「企業の利益>ユーザーの利益」という状態

この記事では、ダークUXと記載していますがスターウォーズ好きのためダークサイドと記載させていただきます。

さて、この記事でのダークサイドUXの定義は以下の通りです。

Dark UX is when designers create an experience that pushes users in a direction that benefits the interests of the company rather than the user.
意訳)
ダークサイドUXとは、企業にとっての利益をユーザーのそれよりも優先してしまう方へとユーザーを追いやってしまう体験を指します。

お客様第一、ユーザーファーストと声高に叫んだ結果、自社の売上を優先してしまっている作りになっているサービス・プロダクトはごまんとありますよね。

一体なぜこのような状態に陥ってしまうのでしょうか。
誰しも邪悪であれと思ってサービス・プロダクトに携わる人はいないかと思います。

そのような状態でダークサイドに陥ってしまうのは以下が理由にあるかと思います。

①四半期目標神話体系(またの名をエージェント・プリンシパル問題)
②ハウルの動かない城(またの名を局所最適解による増改築)
③鈍らの錬金術師(またの名をトレードオフクラッシャー)

①四半期目標神話体系(またの名をエージェント・プリンシパル問題)

なんとなくわかるようで伝わらない言葉になっていますが、サービス・プロダクトに携わる人の多くは、サラリーマンです。上司や部下がいて目標や予算があります。

そうすると、期初に立てた目標や予算を達成しようと四半期ごとになにかしらの施策を検討します。

その目標達成がギリギリな時によく売上を上げるために、CVR高いユーザーを優遇したりする機能を入れたりします。

そういったことを繰り返して発覚した際は炎上してトップが謝罪するといったこともあったりしましたよね。

短期的なKPIを達成するために長期的なUXを蔑ろにしてしまうことが問題だと考えています。そのためプロダクトオーナーやマネジメントの立場だけでなく実際に手を動かすデザイナーやディレクターであっても長期的視点を持つ必要が大事だと感じます。

②ハウルの動かない城(またの名を局所最適解による増改築)

ハウルの動く城は増改築ながらも全体的には超魔法的な要素で「動いて」いますが、局所的最適解ばかりをした機能を盛り込むと得てしてサービス・プロダクトの全体的なUXを阻害しているようなケースが見受けられます。

ここでも長期的視点と共に全体感を押さえたUXを意識する必要があります。

「木を見て森を見ず」という諺にあるように、サービス・プロダクトはいわば「都市国家」だと思っています。都市国家の全体を見ずに一部の地域だけ最適化されていても全体的には不便ということはあります。

UXにもそういった視点が必要になります。

③鈍らの錬金術師(またの名をトレードオフクラッシャー)

クライアントワークや上司やトップの言うがままにUXをよくするための検討をしているとダークサイドに陥りがちです。

世の中すべての事象にはトレードオフが存在します。あっちが立てばこっちは立たずです。

それを理解せずに(あるいは理解していても)今までのサービス・プロダクトの価値を落とすことなく機能を良くしようというような声があがるケースがあります。

そういった時にもちろんこれまでの価値を下げることなく検討や提案を進めますが、得てしてトレードオフを踏み抜いてしまいバッドUXになることがあります。まさにハウルの動かない城状態です。

ここでも全体感と共に、改善施策の最悪のシナリオを想定する必要があります。その最悪のシナリオを意思決定者が飲み込める程度のものになっているかは手を動かす側としては考えておく必要があるかと思います。

②UXを邪悪にする10カ条

さて再び本題に戻ると、この記事ではUXを邪悪にしてしまう10個のパターンがあると言っています。その10個とは以下です。(意訳したもの)

1.釣り針
2.DOWNLOAD NOW
3.ミスディレクション
4.チェーンメール(これってもしかして死語ですか?)
5.隠された費用
6.理解に苦しむ質問
7.自責させるキャンセルリンク
8.逃れられないキャンセル
9.失うことの恐怖を煽る
10.カートにさらっと入れる

実際には記事に書かれている画像を見ていただきたいのですが、どれも悪質と思わせるデザインとなっています。

他にも良く見るものでは、よくゲームアプリの広告にある「広告を閉じるボタンに見せかけた×ボタン」です。

どれこれも人間心理にある損失回避性を利用したものとなっています。
損失回避性とは、利益から得られる満足度よりも同程度の損失から得る苦痛の方を大きいと判断することです。まあなんとなく100円もらった時の嬉しさよりも100円玉落として溝に消えていった時の悲しさの方が強く感じますよね。

損失回避性を上手く利用することでユーザーに特になる場合は、利用すべきだと考えますが、それを悪用するとこの10カ条のように悪質なUXを生み出すことになります。

③UXジェダイになるには暗黒面も想定しておくこと

では実際にダークサイドに陥らないためには何を意識すべきかというとここまで書いた通り、以下の3つの視点を持つことが重要だと考えます。

1.短期的利益より長期的利益
2.局所的最適解より大域的最適解
3.最悪のシナリオ(ダークサイド)を想定する

いろいろと書いてきましたが、良いUXを生み出すには、悪いUXも知っておく必要があります。

普段使っているサービス・プロダクトの良し悪しの両面を見て学んでいくことで初めて施策の良さや悪さを比較検討することができるかと思います。
それのまたの名を「リテラシー」とも呼びます。

パダワンがフォースの良し悪しを身を以て知ることで初めてジェダイ・ナイトになれるように、UXジェダイを目指すにあたっては時には邪悪なUXを見て使って学ぶことでその体験の悪さを身を以て知ることで掴み取ることができるかもしれません。

最後に

何かしらサービス・プロダクトを使っている時にヘッダーだけに着目したり、ハンバーガーメニューのみを見比べたり、ボタンの大小を感じてみたりなどある1要素とそれが全体に与える影響を考えたりするのが、UXトレーニングの一環かと考えています。

悪質な邪悪なUI/UXを批判することは非常に簡単です。
ただ、個人的にはそこで終わるのではなく、何が邪悪たらしめているのかを言語化するなり、メモるなりすることが重要かと思っています。

何らかの解釈には、その解釈の元となる事実が存在します。
その事実の積み重ねや組み合わせがまた新たな解釈を生むことになります。

UX(ユーザー体験)とは人間心理の探究であり、人の行動(解釈を伴う事実)の原動力を支えるものでもあると考えています。
そういったものを引き続き探究していきたいですね。

それでは、また。


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