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【企業に学ぶ】「ヤマトグループ歴史館 クロネコヤマトミュージアム」へ


2023年11月28日、“ざわざわ”では初の「社会科見学」を企画し、宅急便でお馴染みのヤマトグループ歴史館 クロネコヤマトミュージアムを訪問しました。ミュージアムが入居するヤマト港南ビルは、創業100年の節目にあたる2019年10月に竣工。ミュージアムのオープンは2020年7月。品川駅港南口から徒歩10分、高浜運河を見下ろす、心落ち着くロケーションにあります。

歴史館から見る高浜運河



当日は、ミュージアムの初代館長、白鳥美紀さんにご案内いいただきました。

白鳥さん(前列左)と“ざわざわ”のメンバー


空間を有効活用した設計

建物は、1階から5階までは宅急便の営業所。6階が歴史館のフロア。7階が宅急便営業所の事務所、8階から10階はナレッジファームというヤマトグループの教育機関だそうです。

私たちは2階の受付を通り、最初に紹介されたのは、ヤマト港南ビルの全体模型でした。


模型の全体像
俯瞰図
サイドから

建物の特徴は、外周のスロープ。スロープは二重構造になっていて、ひとつは宅急便を運ぶ車路、もう一つがミュージアムの回廊です。
創意工夫を凝らしたビルの構造をひとまず理解したところで、私たちはエレベーターで6階へ上がります。ここからが、いよいよ本格的な歴史館の見学のスタートです。見学ルートは、6階の歴史館フロアから始まり、その後はスロープを下りながら、ヤマトグループの創業から現在までのあゆみを辿っていきます。6階フロアの受付周辺には、箱をモチーフとした装飾がなされ、回廊には、時間の経過と心落ち着く空間が演出されています。


このような、コンセプトが伝わる印象的なデザインは、社会的にも高く評価されて、2023年6月には日本展示学会が主催する「第7回日本展示学会賞」を受賞しました。


挑戦、変革の100年

まず6階では、ヤマトグループが歩んだ100年をコンパクトにまとめた10分間のアニメーション映像を見ることができます。アニメは、ヤマトグループとともに歩んだある家族4世代を通してヤマトグループの変遷を追うストーリー仕立てです。子供にも分かりやすく、大人にとっても興味をひくアニメ。会社の歴史を、ひと家族を主人公にして紹介したのは、「ヤマトグループの100年は、常にお客様と共に歩んだ100年なので」と白鳥さん。

アニメで、ヤマトグループの歴史を大まかに把握したところで、私たちはヤマトグループの4つの時代を見ていきます。

ヤマトグループの4つの時代
1919~創業の時代
創業の物語
ヤマトグループの原点

1928~大和便と事業多角化の時代
時代を先がけた
新たな事業創出

③1971~宅急便の時代
宅急便の誕生と成長

④2000~新たな価値創出の時代
未来に向けたチャレンジ

内容については、以下の感想をもって紹介させていただきます。

見学を終えて~メンバーの感動と感想

100年の歴史秘話は、どれもが魅力的

物流ターミナルとしての構造を持つ社屋をうまく活用されたミュージアム。発想がとても豊かで、限られたスペースを生かし、どれだけ効率よく、荷物を安全に積み込むかを常に考えられてきた視点が、そこかしこに生かされ、感心しました。
白鳥さんが展示コーナーの一つひとつを紹介する姿は、まるで、ご自身が長年使用している愛用品について解説されるかのように、情熱をもって説明されたのがとても印象的でした。
ものづくりはクリエイターだけのものではありません。何かを生み出したり、何かを作るという行為は、担当者の思いも同じように制作物に投影されるということを改めて感じます。

運送業の黎明期から現代まで、100年に渡る歴史秘話は、どれも魅力的な物語になっていて、100年続いてきた理由を納得させられた気がしました。(井上)


労働組合との強い絆で実現した宅急便事業

白鳥さんの説明で一番感動したのは、「小倉昌男社長(当時)が宅急便事業へ舵を切ろうとしたとき、役員は全員反対したが、最終的に労働組合の後押しがあって実現した」というエピソードでした。経営難で苦しいときにリストラをしなかったことで、組合は社長に恩義を感じるとともに、そのことによって両者の間に強い信頼関係が構築されていた、と。
当時は今よりずっと労働組合の力が強く、組合と対立関係にある会社も多かった頃だと思います。そんな時代背景を勘案すると、余計に相互の絆が強固であったことが察せられます。(三上) 

会社愛=社員を大切に考えた経営の賜物

三上さんの意見に同感です。「労働組合の協力」のエピソードは小倉昌男社長の経営者としての偉大さを感じる事例であり、“会社愛”=“社員を大切に考えていた経営”の賜物だと感じました。「企業は経営者の器以上には大きくならない」と言う小生の元社長の言葉が思い起こされます。また街中でよく目にする配送車は、営業ドライバー自らが効率良く動けるようにベニヤ板で試作・設計したものとのこと。社員の考えが経営にも活かせるオープンな企業文化ですね。白鳥さんの“会社愛”を感じる説明に、多いに納得すると共に、年史発刊、歴史館開設に対するパッションが印象的でした。(高山)


創業者の強運や、宅配事業黎明期からの女性雇用

僕が面白いと感じたのは、「強運」です。
関東大震災の時に難を逃れたこと。
戦時中、会社を日本軍に接収されるまえに終戦を迎えたこと。
事業の先見性だけでは今日のヤマトはなかったと感じました。
経営者の方の多くは自分をラッキーだと語りますが、創業者の小倉康臣氏は単なるラッキーに収まらない「強運」を感じます。そして、そのラッキーがそのまま事業拡大の転機に繋がっていたのもとても興味深かったです。

もうひとつは、宅配事業の黎明期から女性ドライバーを雇用していた点です。
女性ドライバーの活躍は最近の話だと思い込んでいました。
白鳥さんがおっしゃっていましたが、女性はご自宅に入れやすいとか、宅配なので荷物が軽いとか、時間の融通が効くとか、言われてみればメリットばかりです。(コグレ)


コーポレートコミュニケーションの底力を体感

小倉昌男さんの経営者としての凄腕っぷりと、人間としての大きさを感じました。そして、何も知らずに訪れた私のような部外者にもそれをきちんと伝えられるミュージアムであることに、白鳥さんをはじめとする広報担当の皆さんの努力と成果を見る思いがしました。社内、社外を含めたコーポレートコミュニケーションの力を感じた経験でした。(藤野)


連綿と受け継がれる社訓が企業成長の礎に

父・小倉康臣が創業した大和運輸の社長を47歳で引き継ぎ、父が引いた路線を「宅急便」によって劇的に転換した第二代社長・小倉昌男。親子の間にはさぞかし確執があったに違いないとのイメージをもってミュージアムを訪れたのですが、白鳥さんの話を聞いても、そんな気配は一向に伝わってこない。それどころか、二人の間は、表面的にはもちろん数々のバトルがあったのでしょうが、深いところで互いをとても信頼し合っていた――そんな印象を今回の見学を通じて持ちました。そしておそらく、このことこそが今日に至るヤマトホールディングスの成長の礎になってきたのだと思います。

それを確信させたのが「社訓」の継承。康臣が31歳のときに制定した「ヤマトは我なり/運送行為は委託者の意思の延長と知るべし/思想を堅実に礼節を重んずべし」の三つの戒が、今日に至るまで一度も変更されることなく連綿と受け継がれているという事実です。(馬渕)


おなじみのクロネコマーク、実は変わっていた

誰もが一度は目にしたことがあるクロネコマーク。
元は、米国の運送会社アライド・ヴァン・ラインズ社の親子猫マークがヒントに。そこから許可を取り、オリジナルのマークをつくるにあたって、当時の広報担当者の「子どもの落書き」がヒントになったと言います。
その原画が展示されていて、有名絵画を見るかのように釘付けに。
(デザインをやる人間にとっては、こういうの上がるなぁ~)
経営者だけではない、こういった社員のエピソードも好感が持てる。
2021年4月1日から、このマークが変更されたということで、
手足は4本から2本へ、目や耳の細部までこまかなところがアップデート。
新たなヤマトが、走り出しています。(吉田)


「負」の開示にも垣間見る真摯な企業姿勢

高度経済成長期の「時代の波に乗り遅れた負の歴史」をきちんと内外に示していて、それは、
1)第三のターニングポイントを広く理解してもらい、今のヤマトの基盤を知ってもらう。
2)IC視点からは、「負」の部分を開示し、真摯な姿勢で取り組むという組織カルチャーの醸成に寄与する。
という2つの効果があった(ある)のではないかと思いました。

他、さまざまなアーカイブ資料が思いのほか多くあり、100年の歴史を裏付ける展示となっていたと思います。
これらの中にも、クロネコマークのヒントになったものやデザインの元になった落書き(とてもアートでした!)など、CI(コーポレートアイデンティティ)とICの関係性を示すものもあり、深読みをすれば、単なる100年の歴史を「どうだ!」と言わんばかりに示しているのではない、と思いました。(前田)


ヤマトの社員を疑似体験

ヤマトの社員と同じ制服を着てトラックの運転席へ。
ミニチュアではなく実物が置いてあるのは、やっぱりテンションが上がります。
運転席から見える景色は、広くて高い!サイドミラーも広くて、とっても安全安心感がありました。
(大人になってもこういう体験は楽しいなぁ。やってみて良かった。)
しっかり子供サイズの制服まで用意されていて、家族で訪れてもシンプルに楽しめそうです。
記念写真をとることで、深く考えずともミュージアムの記憶が残る施策。
これを体験した子供たちは、きっと宅急便のお兄さんお姉さんに愛着持つだろうなと感心しました。
もっともっとこのミュージアムの認知が広がることを願っています。(吉田)


人を大切にする企業姿勢を象徴する「ウォークスルー車」

運送業の人は腰を痛めることが多いと聞きます。ヤマトグループでは、ドライバーが腰をかがめずに荷物を出し入れできるようにと、社長(当時)の発案で、立ったまま作業ができる「ウォークスルー車」を導入したそうです。もちろん、作業性や効率を上げるため、ということもあるでしょうが、こんなところにもヤマトグループの「人を大切にする姿勢」が現れていると感じました。(三上)



ヤマトの歴史を俯瞰する白鳥さんの眼力

初代館長の白鳥さんは、2012年4月に100周年記念担当の辞令をもらい、ミュージアムがオープンしたのが実にその8年半後の2020年9月。白鳥さんがスゴイのは、「終わった感」がまるでない、というよりも「ヤマトの歴史に今日もまた新たな1ページが加わった感」に満ちみちていること。白鳥さんが築いたヤマトのアーカイブシステムに、今日もなお、後輩方の手によって新たなデータが日々、事実として更新され続けています。白鳥さんがヤマトの歴史を俯瞰する、その眼力とシステム思考の確かさに驚かされました。(馬渕)


"大人の社会科見学"は、ワクワクづくし

私は3度目のミュージアム訪問でした。毎回、さまざまな友達や広報関係者と見学し、都度楽しく「また来たい!」という気持ちで帰ります。日々の生活で、いまやなくてはならない、宅急便。その歴史はまさにドラマのよう。時代、環境、経営、企業のあり方、組織、企業文化、会社と社員、顧客のニーズ、サービスの工夫など、じつにさまざまな視点から、ヤマトグループと日本の100年を知ることができ、まさに「楽しく学べるミュージアム」。今回はクリエイティブなメンバーと同行し、ミュージアムの構造やデザインにも、皆の視線があちらこちらに。2時間の見学はあっという間。白鳥さん、歴史館の皆さま、ホスピタリティ溢れるご案内をどうもありがとうございました。(古川)


キャプション:ミュージアム見学の後は「見学振り返り会」。
白鳥さん(前列右から2人目)と共に懇親会を開きました。

まとめ:古川由美


この記事について

“ざわざわ”は、ツールの使い方や社内コミュニケーションの最適解を教え合う場ではありません。道具が多少足りなくても、できることはないか?姿勢や考え方のようなものを「実務」と「経営」の両面から語り合い、共有する場です。

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