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【活動】福祉の境界が溶けるとき、世界は彩りを取り戻す

 鮮烈な2時間だった。

 僕自身も企画運営に携わっている SOCIAL WORKERS TALK 2020「福祉の周辺」。3回にわたるこのトークイベントの初回「まちづくりと福祉」は、〈福祉〉という言葉が生色を取り戻す再生の瞬間かのように僕の目には映った。


 建築をやっていて「気づいたら福祉にいた」という建築家の岡山泰士(⼀級建築⼠事務所STUDIOMONAKA )さん

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趣味として始めたパーソナル屋台が「事実上の福祉」だったという田中元子(株式会社グランドレベル)さん

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外から福祉に踏み込んだお二人と、

「医者をやっていても辿り着きにくい場所に来た」という、福祉を踏み越えた紅谷浩之(医療法⼈社団オレンジ)さん。

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まちづくり・居場所づくりの先駆的挑戦者であるゲスト3名によって生み出される鮮なフレーズやワードの数々。

それらが、既成の福祉の境界を飛び越え、貫く。

そして福祉と福祉外というモノクロームに塗り分けられた世界が、カラフルさを取り戻していく。そんな時間に感じられた。


「私は全員に対して平等に手を広げているつもり。でも〈私〉が手を広げている、それだけで来ない人がいる。当たり前のこと。」

と田中さんが福祉の外から理念に対するシビアな現実を指摘し、 

「あなたらしくいてくださいと言う側が、あなたらしくない」

と福祉の落とし穴を喝破し、

「10人の30点はいらない。1人でいいから5000万点を出して欲しい」

と個性が光るマイパブリックの理想を語る。

それに医療福祉の内側の紅谷さんが呼応し、

「医療福祉職は自分の存在を消して、違う人なのに同じことをしようとし過ぎだ」

と自戒の言葉を述べる。


岡山さんが、

「まちづくりも福祉も、居場所をつくる仕事」

と福祉の内外を貫き、

「色んな人がいる前提の福祉の現場には許容力がある」

と、越境したからこそ見えた福祉の強みを掘り起こす。

それに対して田中さんは、

「ダサいところに人は来ない」

と「いいことをやってる」の限界をストレートに述べ、福祉が力を発揮するための道を切り拓く。


紅谷さんは、

「人を幸せにするという思いは同じだけれど、人を分けて管理することで幸せにするという昭和の福祉とは全く違うやり方の福祉への生まれ変わりを信じたい」

と、境界が溶ける痛みを甘受する。

「〈風呂に入る〉〈食べる〉と同じところに、〈つながる〉はある」

という考えを基盤とした

「薬よりもつながりを処方する診療所」

は、まさにこれからの福祉の胎動なんだろう。



福祉の境界の融解は、福祉側には痛く苦しいプロセスなのかもしれない。

でも、福祉がこれまで培ってきた「許容力」や「人を幸せにする力」が、ほぐれた境から社会に染み出し、浸透して、岡山さんの語られた

背景として全部に福祉がある

状態になっていけば、社会はより懐の深いものになり、多様な色を受け止められるようになって、より鮮やかな光景が日常に広がるんじゃないか。


この方向に歩みを進めること。それは、田中さんの仰る

世界平和に1mmでも近づく

ことなんじゃないか。


 そして、そんな世界を本当はきっと、いま福祉に関わっている人達が誰よりも願っている気がする。



 いま、福祉は生まれ変わろうとしている。


同時に、この再生の命運は僕たちの手にかかっている。


紅谷さんは、

「社会をハッピーにするにする仕事がなくなるわけないし、くってけないわけない」

と、絶対的な安心感を与えてくれた。


さあ、僕たちはどう動く。

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