リキュールとスピリッツ
ひどく寒い夜だった
身体温めるに最適の
あのスピリッツ
今は飲む気になれなくて
代わりに頼んだ瓶ビール
薄暗いなこの店は
隣の椅子に老人一人
胸に奇妙な飾り物
苦しそうに煙草を吸って
困り顔した店主に語る
わしは戦った
勇敢だった
あの地に行った
まだ若かった
欲張った結果どうなった
ばったばったと倒れた仲間
勝ったことなど一度もなかった
それでも立った
ビールがぬるくなってきた
お前も聞いていたんだろ
老兵の視線こちらへ向いた
戦も終わる頃だった
無理難題をおしつけられた
腕を失ったが心は残った
無駄なことだと気づいてた
上に逆らった
しかたなかった
勲章全部とられちまった
代わりにバッタをつけてんだ
寂しそうに老兵笑った
ちょっと待ったと制服が来た
煙草の箱だけそこに残った
僕はなんだか悔しくなった
瓶から最後の一滴たれた
これならいいかと言い聞かせ
恐縮しきった店主に向かい
ジンとラム酒を続けて頼んだ
何も割らずに黙って飲んだ
アブサン飲むのに躊躇った
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