ドンキホーテ_サンチョパンサ

えったん

 家から職場に直接行くというのが、あまり好きではない。
 寝過ごしたりという理由でもなければ、大抵はカフェによってコーヒーを飲みながら、すこしばかりボンヤリした後に職場に入る。
 カフェに寄るお金が無いときなんかは、わざわざ少し離れた場所に自転車を止めて、街の様子を眺めながら、ダラダラと歩いて職場に向かう。
 ずいぶん時間を無駄に使っているようにも思えるが、これから700円や800円なんていう小銭で時間を切り売りするのだから(ひどい時には500円という時給で働いたこともある)。いまさら時間の無駄なんてことを気にしたってしょうがないとも思う。
 カフェに行くにしたって、自転車をすこし離れた場所に止めるにしたって、大体いつも場所は決まっているのだが、そこへ向かう道すじを変えることがたまにある。コンビニへ寄る用事があるとか、ただの気まぐれとかそんなことで。
 いつもと違う角を曲がったときに、マンションなのかアパートなのか、はっきりとしないようなボロい建物があって、そこの階段を見ると「ああ、そういえば昔あそこで――」なんていう、思い出ともいえないような、ちょっとした出来事を思いだしたりする。
 そんなときに、「ボクはこの街に長く住みすぎているんじゃないか」とオカシナ不安におそわれる。
 どこにでも在るような地方都市に17年も住んでいると、街中いたる所に、なにかしら思い出みたいなものがあるもんだ。
 初恋の人と相々傘をした場所だとか、1000円札を拾った道端だとかで、そのときのことを思い出すたびに――そして、そういう場所が増えるほどに、小さな子ども部屋の中、さらに隅っこに置かれたジオラマの中で、一生が過ぎて行っている気がする。
 問題なのは、人生が有限だということ。そしてその有限な人生の中で、世の中の人は大抵、ボクより上手く、ジオラマの中の人形を演じているということ。

 映画館で働いていた時期がある。650円というフザケタ時給だったが、映写技師という仕事の内容に惹かれた。
 シフトは、早番と中番と遅番に分かれていて、休憩時間は毎回1時間キッチリ貰えた。
 この頃のボクは、やたらと小説を書くことへの意気が高く、シフトに合わせて、仕事前、休憩中、仕事後、そして、自分以外の人が居ない時間を見計らって、仕事中にも小説を書いていた。
 思うに、小説を書きさえすれば、すぐにでもプロに成れると思っていたのだろう。
 今のように、書き続けていれば『いつか』『いずれは』ではなく、「この小説が完成すれば、すぐに」と、明日にでもプロになれる気でいた。
 仕事が楽で、それだけ無邪気ならば、やる気も起こるはずだ。
 早番の日には、起きて仕事に行き、休憩中と仕事終わりにカフェに行ってノートに文字を書き込んだ。そして家に帰ってからノートに書いた文字をパソコンにタイピングした。あまり無かったが、中番の日は、家ですこし小説をやってから、早番の日と同じように、やはり休憩中と仕事後にカフェに行って小説を書いた。遅番のときは、仕事が終わる頃にはカフェが閉まっていたが、その代わり仕事前にカフェに行くことがあった。
 考えてみれば、やたらとカフェに行っていた。家が狭くてやかましくて、集中して何かをするというのに向いていないという事もあったと思うが、何かをするのに、家よりもカフェの方がはかどるというのは、ボクだけじゃないはずだ。
 中番と遅番の日には、たまにまっすぐと家へ帰らずに、バーに寄ることがあった。英国式パブを模倣したスタイルと言うのだろうか、ざっというとHUBをこじんまりとさせた感じだった。
 お金をたくさん稼ぐという考えも無く、細かなお金を倹約する気も無く、面白そうだからと、650円の時給で働いてみて、日に数回カフェに行き、食事はたいがい外で済ます。オマケに、たまにバーに行けば、お金なんてものは残らない。1日働いた分のお金は、1日生活する分に消える。それでいて、「自分は必ず夢で食っていけるようになるのだから」と、将来のことを楽観している。――我ながら若者らしくて、大変良い過ごし方だったと思う。
『えったん』という、すこしオカシナなところのある女の子と会ったのは、たまに行くバーだった。
 週に何度も行ったり、1ヶ月も2ヶ月も顔を出さなかったりと、ボクは気まぐれ屋らしい通い方をしていたが、そのときは、前回店に行ってから、結構間があいていたと思う。
 週末だったか、なにかイベントごとだったかで、店はそれなりに忙しかった。知った顔の連中は、カウンターの端の方に溜まっていた。この店の良かったところは、常連連中に劣等した人間が多かったことだと思う。これは、いまだに治らない悪いクセだが、人生を上手く、カッコ良く生きている人間は、どうにも苦手だった。
「ここが空いてるよ」と声を掛けられ、失業保険で生活している40半ばの男の隣に腰を下ろした。
 男と適当な会話をし、ほかの顔を見知った連中と言葉を交わし、3人か4人か居た店員も時折声を掛けてきてくれる。いつも仕事終わりに、ちょっとだけ寄るつもりが思いのほか長居してしまう。
 この日もそうだった。そのうちに、えったんに話しかけられた。「誰かのお兄ちゃんなんですか?」確かそう聞かれたはずだ。特徴のある高くて、か細い声だった。
 ボクはこの店で、お兄ちゃんという通り名で呼ばれていた。そんな通り名がついた事情を説明し、少しばかり彼女と会話した。
 彼女は居酒屋で働いているが、遅刻するのが怖いから、早めに起きて毛布を持って行き、まだ誰も来ていない、シャッターの下りている店の前で仮眠をとるんだと言った。季節は肌寒くなってきた頃だった。
 この子はオカシな子なんだなと思いながら、ボクが、「そんなことせずに、家でギリギリまで寝たらいいじゃないか」と言うと、彼女は、それじゃ遅刻するかもしれないからダメなんだと、真顔で言った。
 ボクのことをみんなと同じように「お兄ちゃん」と読んでもいいか? と聞くので、「いい」と答えると、「私のことは『えったん』と読んでください」と言った。小柄で、顔立ちは可愛らしかった。最初は、どこにでもいる不思議な子の振りをしているだけの女の子かと思ったが、どうにも本当に変わった子だったんだと思う。
 彼女は話が下手だったが、そのわりによく喋った。初対面の時だけでなく、それなりに親しくなった後も常にそうだったが、どこか腰が引けていて、おどおどした話し方をした。
 空気が読めず、よく人の話に割って入り場を壊したり、唐突に暗い話しをしたりしだした。
 たとえば、ボクが誰かと「この前の休みに、どこそこへ遊びに行って――」というような話しをしていると、いきなり割って入ってきて、「エレベーター乗れますか? 私エレベーター怖いんです。昔、義理のお父さんにエレベーターで屋上に連れて行かれて、そこから突き落とされそうになったから――」などと唐突に言い出すのだ。
 当然のことだが、えったんは、そのうちに疎ましがられるようになった。
 彼女は確かに育った環境には問題がありそうだった。目立つ痕ではないが、お母さんにお湯をかけられたという火傷の痕を、エレーベーターの話同様、唐突に人に見せたりしていた。韓国と日本のハーフで、3歳かそこらまで、韓国に住んでいたと言っていた。
 地図を見ていて、なんとなく目に付いた、この街に来たのは最近で、その前は九州、さらに前は山口に居たと言っていた。話しを聞きながら、家を出たものの、あっちこっち行ってみても、結局どこにも馴染めないのだろうなと思った。機会があれば記すことがあるかもしれないが、ボク自身の経験から言って、馴染めないというのは、自分自身の問題で、場所の問題ではない。――でも、自分自身を変えるよりも、場所を変えるほうが、うんと簡単だ。
 彼女の居ないところで、悪口を何度か聞いた。彼女のことが苦手な人間は多かったはずだが、不思議と口に出してそれを言うのは、大学生やヨーロッパ帰りの、カッコイイ連中だった。ボクも彼女と話しをしていると、始めはよくても、そのうちにウンザリとした気分になり疲れたが、彼女のことは嫌いではなかった。
 コミニケーション能力に問題があり、それが独特の声と怖じけた感じの喋り方とあいまって、人に不快感を与えたとしても、彼女は性格が悪い人間では無かった。彼女が唐突に暗い話しをするのは、弱い生き物がこれ以上虐められないように、あえて傷を見せているように見えた。
「いまどき義務教育しか受けてない人間でも、あんなバカはいねえ」酔っ払った男が言った悪口を聞いてムッとした。この頃のボクは、義務教育すらまともに受けていないことに関して、少なからず劣等感を持っていたので、そのせいもあるのだろうが、ムッとした時に感じたのは、えったんに対しての仲間意識だった。
 ボクらのような人間は、憧れはしても、間違ったってあんた等のことを否定しない。でもあんた等は、いつもこっち側の人間のことを馬鹿にするそんな風なことを思っていた。
 ハンデの問題だろうなと、彼らが学校に行っているのも、海外に行っているのも、オシャレで遊び上手に過ごしているのも、人間的な能力の違いでなく、貰ったハンデを上手いこと生かしているからに過ぎないと思った。
 えったんとボクには、劣等生には劣等生なりの生き方というものがあるが、それが出来なくて、中途半端なスタイルになっているという共通点があったんだと思う。劣等生なりの生き方なんてものロクなもんじゃないと思うかもしれないが、優等生と劣等生どっちがいいとか悪いとかそういうことじゃなく、自分に適したスタイルを身に付けるというのは大切なことで、そうやって生きていると、いつの間にか、どこかしら通じたところのある仲間が見つかったり、自分の居場所が出来たりするものだ。芝に適正のある馬がいれば、ダートに適した馬もいる。短距離、中距離、長距離と距離の適正もある。そういった適正を見つけて、そこで生きればいいのだが、ボクらはそれを見つけられず、あるいは、明らかに不向きなところに憧れて、チグハグなことをやっていた。
 何でもいいから、自分なりの適正を見つけて、そこでいっぱしのスタイルを身に付ければ、今度は違う場所で生きている人間と関わったときも、もっと上手く、もっと堂々と振舞える。そうすれば相手も、一角の人間として扱ってくれる。

 ボクとえったんには、もうひとつ共通点があった。同じ人に憧れていた。
 その人は、やさしくて美人だった。明るくて、軽やかに人生を生きている感じがした。ボクらよりうんと賢かったが、ボクらよりうんとバカに振舞った。
 彼女は紛れもない優等生だったが、ボクら劣等した人間のヒーローだった。
 えったんは、よく彼女への憧れを口にし、ボクはうなずきながらそれを聞いた。えったんは彼女へなついていた。ボクは男なので、えったんほど素直になつかなかった。
 彼女はえったんのことを気にかけていた。「なんとかえったんを、みんなの輪の中へ入れてあげたいんだけど」とボクに言ったことがある。その言葉の響きには、諦めた感じがあった。
 彼女がそうしたいのなら、そうなるべきだと思ったが、ボクも無理だろうなと思った。

 彼女と会話していても、いつもえったんが割って入ってきた。たまに店も閉まるという深い時間まで飲んでいて、もうそろそろ帰るか、となったときに、彼女と一緒に帰り道を途中まで歩くことがあった。そのときも必ずえったんが着いてきた。
 よく喋り、彼女になついていたので、えったんが間にいるとボクは蚊帳の外へ追い出されるような感じになった。
 2人のときは、彼女も気を置かない感じで打ち解けた会話をしてくれたが、えったんがいると、彼女も素ではなく人前に出るときの明るさを取り繕った。
 正直じゃまだなぁ、と思ったが、なにも彼女はボクのものではないので、本当はそんなこと思う筋合いもないと分かっていた。

 ある日、仕事終わりに例のバーでコーヒーを飲んでいると、えったんがボクのグラスに手をぶつけて、それをこぼした。
 鞄がコーヒーでビショビショになったが、なんの思い入れがあるような物でもなく、元から薄汚れているので、いまさらコーヒーで多少のシミが出来ようが別にかまわなかった。
「気にしないで」と言ったが、えったんは異常なほど気にし恐縮した。
 えったんが何度も謝るものだから、ボクは何度も許すためのセリフを吐かなければいけなかった。
 その内に、人のことをこれだけ恐縮させてしまっては、まるで自分のほうが悪いことをしているような気になった。
 その日、家に帰りもう寝ようかとしている所へ、えったんからメールがきた。メールの内容はコーヒーをこぼしたことへ対する謝罪だった。――メールの中でも彼女はなんども謝っていた。
 当時ボクが使っていた携帯は、どういう訳かメールの返信機能が壊れていたので、電話帳の中からえったんのアドレスを探し、今日なんども面と向かって言った「いいよ、気にしないで」という内容のメールを作っているうちに、また彼女からメールが来た。
「すいません! すいません!! ホントはメールだけ作って、あした送ろうと思ってたのに、間違えて送信してしまいました。――こんな時間にメールしてすいません」そう謝っていた。
 おかしかった。なんとなく、とても彼女らしいなと思った。
 バカで、まぁ鬱陶しいところがあったとしても、こんな人間のことを嫌う意味はなかった。

 次にえったんと会ったときに、彼女は「雪いちご」というお菓子について饒舌に語った。
「とても美味しいんだ」と世紀の大発見のように言っていた。
「この前コーヒーをこぼしたお詫びに、お兄ちゃんにおごります」と言い、話しの流れでそのままバーを出て、近場のコンビニまで雪いちごを買いに行くことになった。
 深夜の時間帯で、商品がまだ補充されていないこともあり、いつも雪いちごが置いてあるというコンビニに、その日は置いてなかった。
「どうしても食べてもらいたい」と彼女は言い、どうせだからと別のコンビニまで行くことにした。
 道中ネットカフェの前を通ったときに「わたし、よくここに来るんです――」消したくないメールをパソコンのアドレスに転送し保存するのだと言っていた。
 この子はボクに似ているな。そう思った。
 結局、同じチェーンのコンビニばかり4件回った。4件目でようやく雪いちごを見つけたが、さぁどこで食べよう……となった。
 コンビニの前で食べれれば良かったが、そこは店の前にたむろ出来る作りではなかった。
 まあ歩きながら探そう、と帰り道の方向にとりあえず進みだしたが、適当な場所が見つからないまま、2人の帰り道が右と左に分かれるところまできた。
「あそこはどうか」と彼女はマンションなのかアパートなのかハッキリとしない建物の階段を指した。
 決して何かを食べるのに適している場所とは言えないが、他にないのでその階段に腰掛けて、2人で雪いちごをひとつずつ食べた。
 狭い階段だった。
 えったんは自慢げに「美味しいでしょ」といい、雪いちごの口溶けがどうのと語ったが、ボクは物は食べれればなんでもいい性質なので、美味しいかどうかよく分からなかった。
 けど当然「おいしい」と感動したフリをした。
 そんなことよりも、とにかく寒かった。季節はすでに12月に入っていた。
 寒空の下、彼女の好きなものを食べながら片寄せあって、という風にはならなかった。ボクとえったんは仲間だが、2人の間には恋愛感情はなかった。常に適切な距離があり、それがよかった。
 その日も家に帰ったあと、メールが来た。コンビニ回りに付き合ったことに対するお礼と、どうしても雪いちごを食べてもらいたかった、というような内容だった。
 それに対して、雪いちごをおごってもらったお礼と、美味しかったという感想を返したはずだったが、間違えて電話帳の中で、えったんの下に登録していたデブの男の子にメールを送った。そのことに気づいたのは、たいがい日にちが経ったあとにデブに会ったときだった。
 マヌケの度合いでは、えったんもボクも同じようなものだと思った。

 その年もいつもと同じように、年末年始と関係なく仕事だった。仕事というものが嫌いで、憎んでいると言ってもいいが、そのわりにボクは文句を言わず、あまり長続きはしないが雇われている間は真面目に働くので、みんなが嫌がることをよく押し付けられた。
 元旦に中番と遅番を掛け持ちしたあと、何か食べて帰ろうと思った。出来ればドーナツが食べたかったので、たぶん開いてないだろうなと思いながらも、いちおう駅前のドーナツ屋まで行ってみた。
 店は案の定閉まっていたが、そこで少し離れた場所から「おーい!」と周囲の静かさに似合わない元気な声を掛けられた。
 見ると、例のバーで時おり顔を会わせるユミコと言う若い女の子だった。隣にえったんが居た。
 えったんもユミコにつられてか、いつもより明るい感じがした。
 年を聞いたことはないが、たぶんユミコは当時まだ10代で、あからさまなヤンキーではないが、同じ年頃の子たちが通るメインストリートからは外れた、家出少女然としたところが在った。ブサイクだが愛嬌があり、幸は薄そうだが、その分たくましさを感じる子だった。
 なるほどな、この2人なら上手い具合いきそうだな、と思った。
 元旦早々、こんな時間になぜこんな所に居るのかという話しになると、ユミコは今から高速バスで大阪にいる友達のところへ行くのだと言った。えったんはそのお見送りで、さっきまで2人で居酒屋でご飯を食べながら、軽く飲んでいたのだそうだ。
 まだ子どもらしいもんで、ユミコは大阪へ行くということに興奮しているようだった。向こうに着いたらどこへ行く、何をする、バスの中でゲームをするけど、携帯の充電持つかなぁと語る口調は、鼻息が少し荒かった。
 3人で話しをしている間にバスが来て、ユミコを見送ったあと、えったんとも駅前で別れた。
(友達らしい友達が出来て良かったな、えったん)と思った。
 駅前でよく見かけるホームレスが、凍えるような寒さの中で毛布に包まり寝ていた。いつもはなんとも思わないが、その時は、なにかしてやりたい気持ちになった。

 その後、程なくしてバーでえったんを見かけなくなった。ほかに居場所が見つかったならいいが、きっと、例の憧れの彼女も都合で居なくなり、えったんはえったんなりに、なんとなくバーでの居心地の悪さを感じ、足が遠のいたんじゃないかと思う。
 やがて、店自体がなくなった。
 バーが潰れたあと、えったんのことを見かけたのは2度だけだった。
 1度は昼間に、商店街で1万円札を手に持ちながら小走りに駆けていた。電話代を払うのを忘れていて止められたから、今から払いに行くのだと言っていた。
「またね」と言い、ボクは休憩中だった仕事場へ戻った。
 2度目は夜の街中で、小ぶりのキャリーバックを引きながら、えったんはどこにも視線を合わせてないような虚ろな目をして歩いていた。
 雰囲気に声を掛けるのをためらっている内に、彼女は角を曲がり、消えていった。
 それ以来、もう5年も6年もえったんのことを見かけていない。こうしてたまに、「どうしているかな」と気になっても、ボクは何度か電話を壊しているので、もう彼女の連絡先が分からない。
 きっともう、この街には居ないのだと思う。都会に住んでいる人には分からないかも知れないが、こんな小さな街の中で、何年も姿を見かけないと言うのは、居ないということなのだ。
 彼女は自分の居場所を探して、今までのように小さなジオラマから、また別のジオラマへと移る。
 どこへ居たっていい。ただ、幸せでいて欲しい。そう思う。

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