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映画『女っ気なし』ギョーム・ブラック 監督

映画『女っ気なし』2011年・フランス/ギョーム・ブラック監督

誰かにとっての暮らす町は、誰かにとっては通りすがりの町。
訪問者は、何かを求めてやってきて、
限られた時を過ごしては、いずれ必ずその地を去る。
暮らし続ける者たちは、そんな彼らを見送る運命にある。
これまでも、これからも。

本作の舞台は、フランス北部ピカルディ地方の海辺の町、オルトである。
オルトという町は、かつては避暑地として賑わっていたが、現在は寂れてしまった小さな町。
夏の終わり。オルトで暮す青年シルヴァン(ヴァンサン・マケーニュ)はアパートの管理をして暮していた。ある日、パリから明るくて奔放な母(ロール・カラミー)と少しだけ内気な娘(コンスタンス・ルソー)が部屋を借りにくる。いつしか仲良くなった3人は一緒にヴァカンスを過ごす。

オルト、という小さな海辺の町が、この傑作を撮らせたと言っていい映画だとわたしは思う。脚本、俳優や撮影といったすべてが素晴らしいのだけれど、何より、オルトという町が何とも言えない魅力のある場所だと言える。

ギョーム・ブラック監督にとって、劇場公開としては初監督となるのが本作らしいのだが、本当か?と疑いたくなった人は少なくないのでは。

本作を、単純になんとなく面白い “ いい映画 ” に留めないものにしているとすれば、その要因として、登場人物たちが抱いている、ある意味 、その人物にとっての“ 闇 “ の部分を掘り下げて描いているからなのではないだろうか。それは、本作の舞台としてのオルトの町とかけ合わさって、互いを誇張しているように描かれていく。

シルヴァンを演じる、ヴァンサン・マケーニュがなんとも言えない。
どこまでもピュアで、めちゃくちゃいい奴で、でもかなり不器用な冴えない、どっか笑える人。それが存分に描かれている。

本作で、わたしがいいなと痛感したのは、まずオルトというなんとも言えない小さな町。そして、登場人物たちそれぞれが心理的や身体的な “距離感“ というものを緻密に描かれていることだ。
登場人物らが様々な形で互いに関わるのだが、踏み込む深さや距離感というものを、自身の置かれた立場、現実的な状況、それらを踏まえた上で関わっている。
リアリティがあり過ぎるほどである。
監督の作品を観ることが、今後も楽しみでならない。

筆者:北島李の

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