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ゲームシナリオの監修のお話

縁があり他社が作成したものを監修する側にまわったことがあるので、そのお話です。
いろいろと思い出したら、筆がノってしまったので長いです!!

監修する側、される側のお話が気になる方はぜひ読んで行ってください!!

・自分の立ち位置について

某シナリオを書いた経験があったため、キャラや世界観把握をしているよね!ということで監修の仕事の打診があり、正式に始まりました。
だいたい1年~1年半ほど他社が作成した某シナリオの監修していました。※他の監修者との共同作業です。

・監修ってなにするの?どこを見てるの?

携わったプロジェクトでは、キャラのセリフがキャラと合っているか(セリフまわしだったり、キャラ設定と相違ないかなど)を確認していました。
もし間違っていたら、都度セリフを直接書き換えていました。(自分のところに監修依頼が来るさいは、プロットの段階ではなくシナリオの状態)

一例として、父の日を題材にしたイベントで設定が以下の場合…

キャラA:父親と不仲。父が母を精神的に追い詰めて殺したと思っている
キャラB:家族仲良しでイベントごとは欠かさない

キャラAが「そういえばもうすぐ父の日だけど、なにかやるの?」などは発言しません。やるとしたら、キャラAがそこに至った過程を入れる必要があります。(父親への復讐や実は誤解だったので仲直りしたいなど)

もしなければ、キャラBの発言の方が適切ですので、その旨を指摘しつつキャラBのセリフに書き換えます。もちろん、その後の流れが不自然であれば適宜調整を入れます。

ふわっとした設定しかないキャラや、そもそも設定自体がないキャラについては、お茶を濁したり、そもそも話題に触れないようにしたりしていました。※ものによっては検討もします。

特殊な状況があった場合は「このケースではこう対応しました」という書置きを残し、次に監修を担当する方へと引き継いでいきます。

もし、設定もセリフまわしも滅茶苦茶な場合は、対応しきれませんので(こちらで新規作成レベルになるので)、残念ながらその旨を指摘しつつ、差し戻します。

共同作業の場合は、あがってきたものを見て、作業ウェイトの重い順から監修していきました。


・監修方針とは?

自分が担当したものについては、キャラに沿っていない(合わない)お話でない限り、セリフの修正のみ、という方針が大元の依頼者からあったため、その方針で行っていました。

現場によっては、いやいやもっと面白い話にするためにプロットの段階から細かくチェックするぞ!差し戻し!三稿四稿当たり前!!などあるとは思います。

なお、この場合、限りなく監修する側がスケジュールについて考慮してないことが多いので(だって監修通るものを作らなかったのが悪いでしょ、という考え)、たいてい炎上します。ソシャゲの場合は、イベント延期のケースです。

・必要なスキルって?

個人的には以下の3つになるのではないか、と思っています。

1:キャラや設定などを把握していること(把握)
2:迷ったさい、きちんと調べることができること(調査)
3:なにがダメで、どうして修正したのかをきちんと言語化すること(言語化)

1に関しては、脳内でそのキャラのボイスが再生されるかどうか、を判断基準のひとつにしていたりします。

2に関しては、例えばあるキャラの好物について。
ゲーム本編では好物については言ってないけれど、別の媒体(ファンディスクや別のゲームでのコラボなど)で言っているなどあった場合、そこまで調査できるかどうか、です。この場合、ゲーム本編外のことなので大元の依頼者と相談します。

3は、いわずもがな。
言語化し、指摘できなければ、そのシナリオを書いた人との認識のすり合わせができません。言語化できないと、なにが正解か相手に伝えることができません。

伝えられなければ、シナリオを書く人は違う認識のまま書き続け、自分の仕事が減ることはありません。※指摘し続けても、学ばない人がまれにいますが…!!

自分が監修を受ける側の立場で出会った監修の中でも、言語化できていないものが実際にありました。
「キャラが違う」や「キャラっぽくないので調整」とだけ書かれて返されたケースです。
残念なことに、これはダメな監修によくあることです。

書いた側としては、自分の中ではこのキャラはこうだから、と書いた結果です。

つまり、作者側と監修者側のキャラ像が一致していません。

ではなぜ一致しないのかを監修者側は「キャラが違う」「キャラっぽくないので調整」というだけではなく、きちんと言語化して説明する必要があります。

語尾や人称が違うのか
こんなに頭のいいキャラではないので、もっと平易な言い回しをしてほしい
空気読めないキャラなのでもっと空気をぶち壊すようなセリフにしてほしい
このキャラはこういう立ち回りではないので別のキャラに変更してほしい
こんなセリフにしてほしい
など具体的に伝えるべきことはたくさんあります。

・気をつけるべきこととは?

1:シナリオを書く側、監修を受ける側の場合
キャラの立ち回りやセリフなど含め、キャラがあっているかどうか、きちんと調べてから書く。
求められているのは二次創作ではない。
監修が通れば公式なので、それを忘れないこと。

そして、原作にあったセリフをそのまま使う輩がたまにいますが!
それはあくまで、そのシーンで使われているからこそのセリフであって!!
原作にあったからといって100%監修通るセリフではありません!!!!
シチュエーションをよく見ろ!!!!!です。

たとえば、普段は冷静だけれど、過去のトラウマが刺激されたときのみ過激になるキャラがいたとして、原作で「ぶちのめしてやるよ!!」や「コ○してやる!!」と発言していても、トラウマが刺激されない限り、戦闘中に同様の発言はしません。

もしこれが実装されてしまった場合、RPGでは何度も戦闘します。
そのさい、毎回過激なセリフが流れたらどうなるでしょうか?
普段は冷静だったキャラ像が、戦闘での過激なセリフを何度も聞くことによって、まったく別物になってしまう可能性があります。そのため、監修側としてはNGを出します。

上記に書いたように、原作で使われているセリフだから、戦闘で使いやすそうだから、と引用する方々がいるのは事実です。
何度指摘しても、備考欄に○○引用と書かれたセリフリストがあがってきました。
見る側としてはもうやめてくれ……の一言です。
もし、原作ものに携わり、既存セリフを使うときはその辺お気をつけください!!

2:監修側の場合
必要なスキルの3で書いたことがすべて。
いつまで経っても監修者側から、きちんと言語化された修正指示が来ないため、何度修正しても、違う、調整、とだけ書かれて時間だけが過ぎていく、ということがままあります。
こうなったら、もはや泥沼。沈む船。炎上確定です。

・監修を受ける立場で、監修側に言いたいこと
監修を受ける立場、監修した立場、どちらも経験した上で、監修側に言いたいのは……

1:監修方針を決める!!
2:スケジュール感覚を現場と共有!
3:監修結果を言語化!!
4:協力する姿勢を見せて!!!
5:引継ぎはちゃんとしてね!!

の5つです。

1:監修方針を決める!!
方針を決めないと、何度も何度も修正が発生します。
現場にもよりますが、会社さんによっては「自分たちはゲームについてはわからないので、お任せします」というケースもありますし、逆にすべて確認しないとNG、勝手なことすんな、というところもあります。

前者と後者、どちらも理解はできますが、圧倒的にスケジュールに影響をおよぼしてくるのは後者なので、現場は監修者の動きに注意する必要があります。

監修者は監修する方針を決めることで、監修作業を監修者ごとにブレずに、効率よく進めていくメリットがあります。
あとなんでもケチつけなきゃ気が済まない、という監修者もいるので、方針は本当に大事。

2:スケジュール感覚を現場と共有!
超大事!
ソシャゲの場合、イベントが落ちる!延期になる!!ので、実装までに最悪この日までにFIXしてないと落ちる、という旨を共有しつつ進行できるのが一番なのかな、と思います。
監修者とやり合えない担当者だと、イベントが落ちるのはザラです。

3:監修結果を言語化!!
これができないのに、なんで監修者になったの?という監修者はいます!
驚くほどいます!!

某プロジェクトでは、むしろ自分の方が監修できるよ!!代われ!!それができないなら、教えるから会議に参加させろ!!と何度か思いました。
業界が違えばやり方も違うので理解はできるのですが、この現場はあまりにもひどかった…。

調整と修正は、便利な魔法の言葉じゃない!!(クソデカボイス)
どう調整、修正して欲しいのか言わないと!伝わりませんからあああーーーーー!!!!

4:協力する姿勢を見せて!!!
かつて関わったコンシューマの場合は、別のプロジェクトが忙しくなりそっちの作業できなくなったんで、いったん中止で、落ち着いたら再開というあまりにもなプロジェクトがありました!!
先方の作業スケジュールや人員管理どうなってるんだろうね!?

ソシャゲの場合、たとえばアニメで初登場するキャラがいたら、ソシャゲにもすぐに登場したらとてもアツイのに「いや、それはNGです」となぜNGか言ってくれないようなプロジェクトもありました。

こちら側からアニメとゲームと両方盛り上がれるような提案をしても、NGという謎プロジェクトでした。もし世に出ていたら、ユーザーが歓喜するようなものも、闇に葬られたりしていますよ!!

ここでこうして書いているので、お察しのことだと思いますが、このソシャゲがどうなったかは言うまでもない。

上記では顕著な例を書きましたが、これらに共通して言えるのは、

「うちのコンテンツを使わせてあげてるんだから」

という思想が根底にあります。

その思想は大変結構ですが「誰がプレイしているか」「誰が喜ぶのか」「どういう結末が訪れるか」を一度立ち止まって考えてみてほしいものです。

5:引継ぎはちゃんとしてね!!
とあるソシャゲのプロジェクトでは、3年近く関わっていましたがこの間、3、4回ほど監修担当が変わりました。

最初に担当された方は、おそらく監修方針を持っていたのでしょう、とてもスムーズにお仕事を進めることができました。ほぼ修正がありませんでした。

しかし、担当が変わってから、監修が通らないことが多発。
担当者が書かれているセリフの意味が理解できない、フィードバックの書き方が前任者と違う、そもそもゲームを知らない、キャラの解釈が前任者とまったく違う、といった方が担当されたりなどして、現場は混乱を極めました。

会社の方針で、自分で道を切り開いていけ、などあるかもしれませんが、最低限こうやっていたなど引継ぎはしてほしいものですね。

・いろんな意見を取り入れた結果、毒にも薬にもならない

関わった版権もののプロジェクトでは、監修側からステキなフィードバックをたくさんいただいたのでご紹介していきます!!

先述した、調整や修正という魔法の言葉が並ぶだけではなく、矛盾しているものもありました。

某シナリオでは、とあるイベントシナリオで、上から読んでいくと終盤の方で先に書かれた指摘と矛盾しているものが多々存在しました。

たとえば、冒頭でこのキャラを目立たせて、という指示があったにも関わらず終盤、このキャラあまり活躍していないので、いなくてもよいのでは?など。

基本、矛盾が出るのは、監修会で出た意見がまとめられず、ただそのまま送られてきているだけだからです。監修者はどうしたいか、が書かれていない結果です。

修正する側からしたら、ワケらわらん!!!!
結局、どうしたいの!?

となるので、監修会に参加する担当者は、きちんと「ありがたいご意見」を「まとめてから共有」してください、と言いたいです。

この矛盾した修正指示や要領の得ない修正指示を元に修正や調整をしていくと、本来書き手が書きたかったことが限りなく薄くのばされ、場合によっては消えるため、一定の(最低限の)クオリティは保持されてはいるが、毒にも薬にもならない、盛り上がりにも欠けるなんとも言い難いシロモノが出来上がります。

余談ですが、もっとひどいのは、プロットでOKが出ているにも関わらず、この話はNGという根本から覆してくるという、とっても楽しい現場や(やってらんねえ!!)、ものによってはそれ1か月前に言うべきもの、なども!!(なんで今言う!!)
前回受けた指摘を反映し、再提出したところやっぱり前回のものにしてや(よく考えて!!!)、初稿ではすべて解決されていた問題が監修側の意見を反映したことにより、問題が発生したり(わかってて指示出したんじゃないの!?)と、もはやカオスです。

版権ものは割とこういう現場に遭遇するので、できれば今後も関わりたくないです(小声)
(先方からプロットを頂いて書き起こしたにも関わらず、このキャラはこんなことしない!という謎のお怒りメールが来たりなど不思議なこともあるので)

ここまで、ざっと書いていきましたが、これはあくまで自分が経験(聞いたりなども)した上での話ですので、すべての現場がこうとは限りませんので、そこだけは誤解されないように!!

※2020/08/20:追記
「キャラが違う」や「キャラっぽくないので調整」と言われたやつは文中にある、3年ほど関わったプロジェクトの2年半あたりのお話です。

初めて書くキャラや書き始めて三か月…というワケでもなく、それまでに何度も登場、書いたキャラになります。

該当の指摘があったのは『監修担当が変わってから』です。

応援されると生きる気力がわいてきます! もう少しがんばります!!