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第九話:鉄筋コンクリート”も”時代を語る(小春日和の京都街歩き)

前回記事はこちらから。

街歩きコースはこちら(今回は⑫の手前から⑬の手前まで進みます)

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少し道のりがややこしいので赤枠部分を拡大するとこんな感じ。

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前回は維新の道を通り、京都の街の端について考えていたところだった。⑬のザ・ホテル青龍 京都清水へ行くことは初めから決めていたのだが、街歩きのルートを確認しようと地図で周辺を見ていて、気になる名前のホテルを見かけたので、そこへ向かう。

さて、維新の街を下りてくるとそこは、清水寺に繋がる二年坂、三年坂のあるあたり。京都観光本でよく見かけるお馴染みの風景だ。

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二年坂の階段を下りずに西へ歩くと目的のホテルが見えてくる。電柱や高いビルがなく、木造の建物が建ち並ぶ風景はいかにも絵になるが、そんな街並を歩いていると、突然鉄筋コンクリート造の武骨な建物が現れる(⑫)。少し申し訳なさそうに街並からセットバックした、このホテルの名は「RC HOTEL 京都八坂」

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築50年超のRC造のアパートをリノベーションしたホテルで、2017年に開業された。客室は階によって「Vegetation」「古民具」「Art」と異なるテーマでデザインされた全9室の小さなデザインホテルで、ホームページの写真からその名の通りRCを基調としたチルな雰囲気のインテリアがとても気になる。(客室は是非HPかインスタを見てみてほしい)

1階がギャラリーになっているので、寄ってみることにした。

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ヒューマンスケールな小部屋がいくつか連なっており、それぞれに什器やアートなどインテリアがセンス良く配置されている。塗り壁の色や照明なども落ち着いた外国の建物のような雰囲気で、ここが木造建築の建物が建ち並ぶ京都の観光地であることを忘れさせるような、そんな空間となっている。

京都で景観や街並みの話をするときには「木造」「和」といった「日本的なるもの」が良いとされ、RCでできた建物や和テイストでない外観のものは景観を損なう対象とされるのが普通だ。だから、景観条例による建築物の意匠規制がなされたエリアには、本来はこのような「異質」な建物が建つことはないのだ。

では、なぜこの建物が建っているか、というと、そういった景観規制ができるよりも前に新築されたものだからだ。建築関連の法律の基本的な思想として「建った時に合法だったものは法律が変わっても合法。建て替えや改修の時に今の法律にあわせばよい」(これを既存不適格といいいます)ということになっている。

もしかすると、新築当初は「街並みを壊すもの」として近隣から苦情がでたり、反対運動があったりしたかもしれない。しかし、この建物が50年の時を経て、取り壊さずに残っている。しかも、ギャラリーやバー等の併設されたオシャレなホテルとして生まれ変わった

今の法令では建てることのできない(すなわち「景観的によくない」とされるはずの)建物が、地域の人や観光客にとって価値のある建物となったといえる。これは”景観”に対する小さなレジスタンスであり、同時に革命だと思う。

そんなことを思いながら、このホテルを後にし、しばらく歩いていると道路上に架かる小さな橋が見えてきた。

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この橋は「宝輪橋」という日本で一番古い(かもしれない)鉄筋コンクリートの歩道橋らしい。なんという偶然。

RC造の建築物だって、木造建築と同じように時代の証人なのだ。やはり、いつも京都の街並みの重層性について思い至ることになる。そんなことを考えながら、次の目的地へ向かう。(次回で最終回です)

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