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20010531 逃げる顧客

 ある雑誌$${^{*1}}$$を読んでいたら、顧客満足$${^{*2}}$$に関しての記事が特集されていた。

 顧客が逃げていく事例としてこんなものがあった。ある家電販売店の経営者が顧客の家に洗濯機の修理をしに行った。この顧客は数十年来の得意先で、近所に大型量販店が出来てもこの経営者の店で買い続けてくれていた。経営者は洗濯機を直している時にそばの洗面台の蛍光灯が切れかかっているのに気が付いた。顧客に頼まれたのは洗濯機の修理だけだったが、サービスのつもりで顧客に黙って蛍光灯を無料で取り替えた。

 翌日、その顧客から蛍光灯を取り替えたことに対する問い合わせの電話があった。電話のその声は明らかに不愉快そうなものであった。経営者は無料サービスの旨を伝えたが、その日以降、この顧客は経営者の店には来なくなった。

 記事には、この顧客がどうして腹を立てたのか判然としないが、少なくとも蛍光灯を交換しなければ顧客を逃がす結果にはならなかった、と書いてある。しかし腹を立てた理由は歴然としている。他人の家の事情に踏み込み過ぎたのである。いくら痒いところに手が届くサービスが良いと言っても、自分が期待すること以上のことを別のところで発揮されるのは困るのだ。この店の経営者も一言取り替えてもいいか言えば違う結果になっただろう。

 ガソリンスタンドで窓ガラスを勝手に拭くことがある。最近は少なくなったが、わざわざ洗剤を吹きかけて拭くところがあった。ガラスに撥水剤$${^{*3}}$$を塗布しているので、それが洗剤で剥がれてしまう。一言断ってくれればいいのに勝手にやる。制止しようにも間髪入れずに洗剤を吹きかけられ、非常に不愉快であった。独善的なサービスで顧客を逃がしているのである。

 ガソリンを入れに行くだけの客もいることを理解しなければならない。洗濯機を直して欲しいのであって家の中の面倒を全部見て欲しいのではない、という客がいることを知らなければならないのである。もし電気屋さんに「お宅のタンスの中の避妊具$${^{*4}}$$、切れかかっていたので補給しておきました。無料サービスです!」と後で電話で言われたら、普通はゾッとするだろう。

 私の場合、蛍光灯の交換や避妊具$${^{*5}}$$の補充は大歓迎である。

*1 日経ベンチャー
*2 20000705 スチューレオナルド
*3 SOFT99 - Products - Car用品 - ガラスコーティング剤・ワイパー - ガラコ
*4 19991105 コンドーム
*5 コンドーム/潤滑剤:生活用品 | オカモト株式会社

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