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20021102 豆盆栽

 中学生の頃、技術家庭科の先生が、年を取ってから盆栽$${^{*1}}$$を趣味にするつもりなら今から趣味にしておけと言われた記憶がある。盆栽は作るのに何十年もかかるので年を取ってからだと出来上がる前に死んでしまうというのだ。

 この先生は先の戦争$${^{*2}}$$で敵を撃ったことがあるとよく話していたらしく男子生徒に恐れられていた。私自身は残念ながら在学中の3年間でその話を聞くことが出来なかった。戦争でそう言う体験をするのは当たり前なのだが、我々にとっては遠い過去の非日常的な出来事であったので驚愕に値していたのである。

 それがきっかけかどうなのかはっきり憶えていないが、中学か高校の頃、盆栽に興味を持ったことがある。ただ、普通の盆栽ではなく、豆盆栽$${^{*3}}$$と呼ばれる分野の盆栽である。その大きさは手のひらにすっぽり入るぐらいの物もあれば、更に小さく十円玉を下敷きにすることも出来るぐらいのものもある。

 保育社$${^{*4}}$$のカラーブックスシリーズ$${^{*5}}$$に「豆盆栽」と言う本があった。現在は絶版になっているようだ。まずこの本を買った。小さな木に赤い実がなっている写真とか形は普通の松の盆栽だが、鉢の大きさが5cmぐらいしかないものとかが満載であった。

 小さい盆栽$${^{*6}}$$なら簡単に作れるだろうと思い、早速、百貨店の屋上$${^{*7}}$$にあった盆栽売り場に豆盆栽用の鉢$${^{*8}}$$を買いに行った。思ったより高いので「豆盆栽製作計画」は頓挫してしまって現在に至っている。従って盆栽は豆も普通のも持っていない。

 盆栽$${^{*9}}$$へのあこがれは小宇宙$${^{*10}}$$のへのあこがれと同じだろう。本来は盆栽自体が「小宇宙$${^{*11}}$$」の筈だが、私にとって盆栽は当たり前の普通の世界で豆盆栽こそが「小宇宙」という感覚であった。

*1 日本盆栽協会
*2 伏竜
*3 小品盆栽協会のサイト”小品盆栽”
*4 保育社
*5 くらげしょりん カラーブックス
*6 群境介と幸子のミニ盆栽
*7 屋上フロアご案内
*8 豆鉢
*9 Genqui Meets Andy - Farallon Films
*10 20000712 小宇宙
*11 20010609 小林礫斎

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