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20070704 なぎのした

 「山」の下に「友」$${^{*1}}$$と書く漢字がある。中国にはない字で、和製漢字$${^{*2}}$$である。国字とも言う。パソコンでは通常の文字として表示できない。探したが、文字鏡$${^{*3}}$$にもない。漢和辞典には載っている。「なぎ」と読む。幽霊漢字$${^{*4}}$$の一つである「$${^{*5}}$$」に似ている。ただし「山+友」の場合は読みも用例もあるので、まさしく幽霊というわけではない。

 用例は地名だ。「なぎのした」という地名が愛知県豊田市の字(あざ)にある。この字(あざ)の「なぎ」は、かって「山+友」と書いた。そしてこれがこの漢字の唯一の用例らしい。現在は「崩ノ下$${^{*6}}$$」と書く。従って実用となる用例は消失している。

 それにしてもこの小さな地名だけの漢字はどうして作られたのだろうか。「杁」という字は愛知県の尾張地区の地名専用の字であ$${^{*7}}$$。他では使われない。尾張藩で作られた字だからである。これと同様に「山+友」も地名用に江戸時代に作られた字なのだろうか。

 現在は「崩ノ下」となった。平成十三年に変更された$${^{*8}}$$。「崩」には「なぎ」という訓はないが、「朋」と「友」との連想で常用漢字の「崩」と入れ替えたのだろう。いや、元々「崩」という漢字からの連想で「山+友」という和製漢字を作ったのだろうから本来の字に戻ったと言うべきか。

 「なぎ」とは山の崖のような所を意味する$${^{*9}}$$らしい。「なぐ$${^{*10}}$$」というのは「横にはらって切り倒す」だから、山がバサッと切り崩されたような所を指すのだろう。鎌崩と書いて「かまなぎ」と読む例$${^{*11}}$$がある。

 こんな珍しい漢字を使った地名がすぐ近くにあるのなら一度行ってみなければならない。

*1 koseki-090250 (法務省 戸籍統一文字 090250) なぎ
*2 和製漢字の辞典
*3 Mojikyo institute - Home
*4 20051217 幽霊漢字
*5 20070113 あけび
*6 愛知県豊田市花沢町崩ノ下
*7 20070112 尾張の字
*8 愛知県告示第563号
*9 なぎ 0 【▼薙】 - goo 辞書
*10 な・ぐ 1 【▼薙ぐ】 - goo 辞書
*11 Report51 鹿の平

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