見出し画像

20050104 飛騨こんろ

 飛騨こんろ$${^{*1}}$$と呼ばれる焜炉がある。大名こんろ$${^{*2}}$$とも言うらしい。

 普通のこんろ$${^{*3}}$$は、側面に何も貼ってない。飛騨こんろには字を書いた紙が貼られている$${^{*4}}$$。紙を貼るのは割れ防止だろうか。こんろにひびが入っても紙が貼ってあれば、ひびが広がり難そうである。紙でひびが止まっている間に煮汁や魚の焼き汁がこぼれて、ひびの隙間に入ってそれが接着剤の役目をしてこんろが自然に修復$${^{*5}}$$されるのかもしれない。紙がないと汁が入る前に割れてしまう可能性が高くなる。

 装飾のために字が書かれているのだろうが、それにしてもなぜ絵ではなくて字なのか。そして一体何が書いてあるのか。字の横には何か記号が書いてある$${^{*6}}$$。唄の譜面だろう。長唄$${^{*7}}$$の譜面$${^{*8}}$$だろうか。

 書いてある単語$${^{*9}}$$を検索サイトで調べると「菊慈童$${^{*10}}$$」という謡曲$${^{*11}}$$であることが分かった。謡曲とは$${^{*12}}$$の謡(うた)いの部分だから、こんろの紙に書かれているのは歌舞伎の長唄ではなく、謡曲の譜面$${^{*13}}$$だった。

 どのこんろ$${^{*14}}$$を見ても大抵「菊慈童」$${^{*15}}$$だ。

 菊慈童は中国の話$${^{*16}}$$らしい。帝に寵愛されていた童子が帝の枕を過ってまたいだために山に流刑にされた。あまりにも可哀想だと思った帝は、童子に経文の一部を書いた枕を授けた。童子が菊の葉にそれを書き記したところ、その葉から滴り落ちた露が妙薬となり、これを飲んだ童子は不老不死になった。そして童子の姿のまま七百年も生き続けた、という物語である。

 どうしてこれが「こんろの紙」になったのだろう。不老不死$${^{*17}}$$という点がいいのか。

 他のコンロで、よく見てみると違う文章になっているもの$${^{*18}}$$があった。漢文のようである。「飲中八仙歌$${^{*19}}$$」という杜甫の漢詩だった。酒を飲む話$${^{*20}}$$のようだから、肴を焼くためのこんろで合っているのか。

 こちらに書かれている$${^{*1}}$$のは良寛の詩$${^{*21}}$$らしい。わざわざ読み下し文にしてある。良寛の友人だった有願$${^{*22}}$$のことを詠んだ詩だが、あまりこんろとは関係なさそうだ。

 これ$${^{*23}}$$は達筆すぎて何が書いてあるのかよく分からない。今まで挙げてきた字とは明らかに違う。これも同じ書体で同じ内容$${^{*24}}$$だ。この字の場合は「大名こんろ」$${^{*25}}$$と呼んでいる場合が多い。

 「梅川」という字が何とか読める。これからすると文楽の「傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)$${^{*26}}$$」か「冥土の飛脚$${^{*27}}$$」の床(ゆか)本の一部$${^{*28}}$$ではないだろうか。遊女との色恋ものの話のようだから、こんろとどう関係しているのか。

 字が書いてあればいいような気がしてきた。それにしても何故「飛騨」や「大名」なのだろう。

*1 hida/hida01.jpg
*2 36-大名コンロ 6号
*3 七輪本舗
*4 飛騨コンロ
*5 お台所知恵袋 土鍋をとことん使おう
*6 konro.jpg
*7 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 長唄
*8 長唄の教本
*9 1288-01.jpg
*10 能楽「菊慈童」
*11 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 謡曲
*12 20000722 居眠り
*13 杜若(謡曲)
*14 konro1.jpg
*15 29.jpg
*16 まんが「菊慈童」
*17 国立長寿医療センター
*18 20060814170223
*19 飲中八仙歌
*20 飲中八仙図(いんちゅうはっせんず)
*21 友
*22 春ひがん ―去年三月―
*23 kiricon-0171.jpg
*24 img10581076534.jpeg
*25  【楽天市場】木炭本舗 ほしの
*26 人形浄瑠璃 文楽|傾城恋飛脚
*27 冥途の飛脚 | 独立行政法人 日本芸術文化振興会
*28 けいせい恋飛脚 [新口村の段]

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?