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20010802 鼻血をとめる妙法

 また耳袋$${^{*1}}$$。鼻血$${^{*2}}$$をとめる妙法の事、と言う題の文章がある。

「鼻血出る人左より出れば己(おのれ)の左りの睾丸(きんたま)を握り、右なれば右の睾丸を握り、両様なれば両睾を握れば感通して立所(たちどころ)に止(とまる)よし。呪(まじな)ふ人女なれば乳を握りて呪(まじなう)に妙なるよし」

 これは無茶苦茶な呪いである。純粋に面白可笑しく楽しむために誰かが作った話であろう。先日、しきたりが正しいかどうか$${^{*3}}$$を判断するには合理性を考えるとよいと書いたが、これはそんなのを超越している。

 江戸時代でも睾丸という器官の役目は十分判っていたであろう。興奮によって鼻血が出る$${^{*4}}$$こともあるので、興奮の原因と睾丸とが直結していると考えられないこともない。しかし女性の場合、睾丸がないので乳房を握るというのは対称性に着目しただけであろう。因果関係は全く考えられない。女児の場合は乳房も睾丸もないのでどうすればいいのか。

 この呪いを信じて実行している姿を想像すると面白い。江戸時代の庶民の姿はどうしてもテレビジョンドラマの時代劇に登場する人たちしか想像できないが、ちょんまげ姿で睾丸を握ったり、日本髪$${^{*5}}$$で乳房を握ったりしている姿は滑稽そのもである。

*1 20010704 屁ひり虫奇説
*2 常識のウソ
*3 20010801 判の押し方
*4 子供が風邪をひいて熱をだし、その上鼻血が頻繁に出ます。鼻血の原因というのはどういうものがあるんでしょうか?(3歳)
*5 日本髪

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