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20020614 ターボ(2)

 真空ポンプの一種でターボ$${^{*1}}$$分子ポンプという物がある。

 普通のポンプは水などの液体を汲み出すが、真空ポンプ$${^{*2}}$$では水の代わりに空気を排出する。真空にしたい容器の中に入っている空気を追い出すには、ストローでジュースを吸うのと同じようなことをすればよい。$${^{*3}}$$でストローの中の空気を吸うとストローの中は真空になって$${^{*4}}$$容器の中のジュースが押し出されてくる。ストローの中が真空になるのは、肺の容積が増えてストローの中の空気が肺に流れ込むからである。これを機械的に繰り返すようにしたのが真空ポンプである。

 容器の中の空気がどんどん薄くなっていくと中の空気がなかなか出て行かなくなる。水でも容器から最後の一滴を取り出すのが難いのと同じである。時間をかければ本当の真空$${^{*5}}$$にどんどん近づいていくかもしれないが、どんな容器でも小さな穴が開いていたりするのでそこから空気が入ってくる。真空ポンプの排出口の外は大気圧の空気がいっぱいあるのでそこからも逆流してくるかもしれない。

 短時間に容器の中の空気を取り出すには工夫が必要である。そこで考え出された方法の一つに空気を吸い出すのではなく空気を直接「追い出す」方法である。風車$${^{*6}}$$で追い出す。高速で回転する風車$${^{*7}}$$で空気を追い出すのだ。これがターボ分子ポンプである。ポンプの入り口から漂って入ってきた空気の分子を高速で回転する風車の羽根で排出口に向けて吹き飛ばすのである。空気の分子を羽根で吹き飛ばすと言うと何となく極限の世界のような感じがしてくるが、扇風機$${^{*8}}$$でも細かく見れば同じようなことをしている。

 ターボ分子ポンプでは空気がかなり薄くなっているので扇風機のように他の空気分子につられて流れてくる$${^{*9}}$$分子はない。真空に近い状態では空気分子は羽子板で打たれる羽根$${^{*10}}$$の様に容器の外に飛んでいく。

 何かの手違いでポンプの入り口から容器の中に突然空気が流れ込むとターボ分子ポンプ$${^{*11}}$$はどうなるか。風車の回転速度が急激に落ちるだけではない。流れ込んだ空気によって金属製の羽根に揚力が発生$${^{*12}}$$し、風車の羽根は根本からちぎれて破壊されてしまう。

*1 20020613 ターボ
*2 真空ゼミナール 第4回
*3 T肺の構造・機能|清肺湯Navi|Supported by 小林製薬
*4 大気圧による缶ペコ実験
*5 20000316 真空
*6 水戸黄門大学
*7 ULVAC: 真空とは何だろう
*8 20011030 冬用扇風機
*9 Vacuum Technology (Takagi Ikuji)
*10 通信販売、羽子板と羽根(じょじょ)
*11 島津ターボ分子ポンプ
*12 飛行の原理

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