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20031011 金属原子結合の歪みとダランベールのパラドックス

 私にとって自動車の燃費向上$${^{*1}}$$は永遠のテーマなので、自動車雑誌などを読む時は燃費に関連する記事や広告が気になる。

 広告で凄いのを見つけた。エンジンの周りに装着するだけで半永久的にエンジンの出力が改善されるのが体感できるというのである。「体感」であって測定結果が変わるかどうかは定かではないが、「効果が体感できない時は返品が可能」だから良心的な販売方法である。

 「Power Accelater$${^{*2}}$$」という名前のホースバンド$${^{*3}}$$みたいな商品である。「加速装置」という意味なら「アクセラレーターaccelerator」であるが、これの名前は「アクセレーターaccelater」である。英語には「accelater」という単語はない。それに「~するもの」を意味する「~er」を「~ate」で終わる動詞に付ける場合、「~ater」ではなく「~ator」になる。

 何が凄いのかというと、何故そんな体感が得られるのかの説明が凄いのだ。「金属原子結合の歪みエネルギーを用いたダランベール・パラドックスの応用」とある。さらっと読んだだけでは何を説明しようとしている文言なのかさっぱり理解できない。が、よく考えながら読んでみても解らない。

 このようにそれぞれ畑違いの専門的な用語を違和感なく自然に文章に織り込むのは、芸術的である。この広告を作成する際はかなり文案を練ったに違いない。その証拠に「著作権法により広告文書の無断転載は禁止されている」と但し書きまでついている。

 確かに金属を曲げれば金属結合の歪みは発生しているであろう。ホースバンドを締めればどこかに歪みは発生している。それとダランベールがどう関係してくるのだろう。

 「ダランベールのパラドックス$${^{*4}}$$」というのは、「理想的な流体は粘性がない」として流体中の物体の挙動を計算すると「その物体は何ら力を受けない」という結果が出てしまい、流体を理想化してしまうと計算結果が実際の現象と大きくかけ離れて無意味になるという説明らしい。このダランベールとはあの百科全書のダランベール$${^{*5}}$$である。

 計算結果と現実とが大きく異なるという単なる説明の「ダランベールのパラドックス」を応用するというのは一体どういうことなのか。そしてそれと金属原子の結合の歪みとをどのように組み合わせると「体感」できるのだろうか。

 広告の写真を見るとのバンドの部分には「Power Accelater」という文字が一杯刻印されている。広告文案とこの刻印との組み合わせをまじないやお守り$${^{*6}}$$の一種と考えれば、物理的な意味はともかく「体感」は十分得られると考えられる。

*1 20030108 燃費向上
*2 株式会社パワーハウスアクセル--パワーアップ!添加剤,潤滑油 Newパワー・テクノロジー Power Accelater
*3 Airdraft-Fasners ステンレスホースバンド,クランプ,ターボクランプ
*4 TARUTA's House. 飛行機が飛ぶわけ―――「ベルヌーイの定理」説をめぐる論争を解く (1)
*5 20020630 相互参照
*6 20030127 二枚のお札

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