20090520 衝撃波(2)
空気中を物体が超音速で飛翔すると衝撃波が発生する$${^{*1}}$$。音速以下で飛翔した場合には衝撃波は発生しないのか。
衝撃波$${^{*2}}$$は、例えば、飛行機が超音速飛行をする時に機体が空気を押し退けることで発生した空気の波である。波と言ってもさざ波のような連続した波ではなく、津波のような単発な波と考えればいいだろう。縄を振るわせてできる波や水面にできる皺と違って、空気の波はその密度の疎なところと密なところとが入れ替わりながら伝わる波である。前者を横波、後者を縦波と言う$${^{*3}}$$。衝撃波も普通の音波も縦波である。衝撃波は空気中で高速で移動する物体の先端で空気の密度が極端に高まった部分が移動する波である。従って普通の空気の波である「音」と同じ速度で移動する筈だ。しかし調べてみると「衝撃波は音速よりも速い$${^{*4}}$$」と言う記述もある。何かの原因でこういう現象もあるのかもしれないが、超音速飛行する飛行機によって発生した衝撃波が飛行機を追い越すと言う説明図を見たことがないので、飛行機の場合にはそんなことはないのだろう。
飛行機が飛行場で止まっている時には衝撃波は発生しない。当然である。飛行機が滑走して空に飛び立つときも衝撃波は出ていない。飛行機のエンジン音など爆音が聞こえるているが、これは通常の音の波である。空気中に飛び立ってどんどん速度を上げていく。音速に近づくまではやはり衝撃波の発生はない。飛行機が音速以下で飛行しているときも飛行機の胴体や翼の先端では空気を押し退けているので衝撃波みたいなものが発生しても不思議ではない気がするが、実際には発生しない。やはり音速よりも速くないと駄目なのだろうか。
音速以下では、空気を押し退けることによって空気の密度の極端に高まった塊が発生しないのだろう。音速以下で空気を押し退けても、押し退けられた空気の塊は「音速」で広がってしまうので、空気の密度が極端に高まることはない。飛行機が音速になれば押し退けられた空気の塊と飛行機の先端との相対速度が殆ど同じになり、「筒のないピストン」で空気を圧縮しているような状態で、普通の音波と異なり極端に密度が高まった塊ができてくるだろう。この空気の塊はその周りにはピストンの様な仕切りがないので、徐々に密度を下げながら超音速で飛行する機体の後方に広がっていく。これが地表に到達すると「ドーン」という音として聞こえる$${^{*5}}$$らしい。
私は、飛行機から発せられるエンジン音などが飛行機の尖端や翼の縁で皺寄せられて衝撃波が発生する$${^{*6}}$$と思っていた。しかし今まで勝手に想像してきた原理で衝撃波が発生するのであれば、その発生に音の存在は必要ない。空気中を高速で飛翔することで風切り音が出るかも知れないが、音がなくても衝撃波はできそうだ。少なくともエンジン音は必要ない。エンジンの付いていない風洞の中の円柱$${^{*7}}$$や弾丸$${^{*8}}$$が衝撃波を発生させているので、これは間違いない。
*1 20090519 衝撃波
*2 テクニカルレポート:衝撃波の科学
*3 横波と縦波 ■わかりやすい高校物理の部屋■
*4 Shock Wave
*5 ソニックブームのデモンストレーションについて
*6 Traveling Faster than Sound - Succeed in Physical Science: School for Champions
*7 衝撃波とは?
*8 NASA - Supersonic Bullet
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