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20030614 無性有性

 普通のミミズは雌雄同体$${^{*1}}$$で、二匹が互いに精子を受け渡して受精し卵を産んで増えていく。中にはヤマトヒメミミズ$${^{*2}}$$のように勝手に自分の体をちぎって増えていく$${^{*3}}$$種類もある。無性生殖するヤマトヒメミミズ$${^{*4}}$$は生殖器官がないようだ。

 無性生殖する生物は沢山いる$${^{*5}}$$。哺乳類では一個体が勝手に分裂して増えると言うことはないようだから、無性生殖は体の仕組みが簡単な生物に限られるのだろう。

 生物の進化とはその体の構造の複雑化とすれば、魚類や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類で行われている有性生殖は無性生殖の進化の結果だろう。無性生殖であれば相手を見つけることなく自分一人で増えていくことが出来てすこぶる便利である。何故、わざわざ有性生殖に進化していったのだろう。

 無性生殖は、親の複製なので生きている環境が変化すると受け継いだ遺伝子の情報だけでは対応しきれなくなる可能性がある。そこで他の環境で生きてきた別の個体の遺伝子情報を取り込むことで、環境の変化に対応するために性が分化$${^{*6}}$$したらしい。

 しかし遺伝子情報の交換だけが目的ならば性の分化は必要ない。ゾウリムシには性がある$${^{*7}}$$ようだが、「接合$${^{*8}}$$」という仕組みを用いて遺伝子の交換をしている。これににたようなことをすれば性は必要ない。ゾウリムシは単細胞だからそれが可能であるが、多細胞で複雑な器官があるとゾウリムシのような接合は無理である。

 分裂によって増える生物は分裂した部分から元の形になるように細胞が再生したり、体の一部から芽が出てくる$${^{*9}}$$。例えば自分の指先に芽となる部分が出来たら誰か同じ様に芽が出ている相手を見つけ、芽同士を接触させると「接合」が起こり、芽の部分の遺伝子が交換されようになれば、性は必要ない。やがて芽は成長して自分と同じ様な形になったところで切り離される。元の自分の遺伝子と成長した芽の遺伝子とは違っているので、目的は達せられている。

 何故、この様な簡単な仕組みを進化の過程で採用しなかったのだろう。それに最も不思議なのは無性から有性への仕組みの飛躍である。もともと「性」という特徴がなかった無の状態から「性」という特徴を持つ有の状態が現れてきたのだ。一体、進化の過程で何があったのだろうか。

*1 20030613 ミミズ天国
*2 20021114 ヤマトヒメミミズ
*3 有性化法と有性個体
*4 ヤマトヒメミミズとは?  ~その生殖と再生~
*5 無性生殖と有性生殖
*6 卵胎生(らんたいせい)のしくみ
*7 MWHOME ゾウリムシの接合
*8 ゾウリムシ接合過程の核変化の観察
*9 Hydra: Reproduction and Regeneration | Zoology

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