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20021114 ヤマトヒメミミズ

 ヤマトヒメミミズ$${^{*1}}$$という名のミミズがいることを知った。1991年に発見されたミミズ$${^{*2}}$$である。なんとこのヤマトヒメミミズは自分で体を切って増える$${^{*3}}$$ことが出来るのである。

 再生能力が強い生き物の代表はプラナリア$${^{*4}}$$と思っていたが、もっと凄い奴がいたのであった。プラナリアの再生能力が強いと言っても自ら進んで自分の体を切って増えることはしない。ただ、無性生殖で二つに分裂することは出来るらしい。

 ヤマトヒメミミズはかなりバラバラにしてもそれぞれが再生する$${^{*5}}$$ようだ。しかも10年前まではその存在が知られていなかったというのだから驚きである。ただ、日本で見つかったヤマトヒメミミズだけが自分で体を切って増えるのではなく、他の海外のヒメミミズでも体を切って増えるらしい。それらは100年以上前に見つかっている$${^{*6}}$$ようだ。

 アメーバやゾウリムシなどは単細胞だから自分の体を二つに分けて増えていくというのは納得しやすい。ヤマトヒメミミズは単細胞ではない。一人前に脳も持っている$${^{*7}}$$。

 どうも人間に置き換えて考えてしまう。例えば自分の右腕が切断されると、何日かすれば右手が元通りに戻る。これはこれでいい。一方、切り落とされた右腕からはもう一人の自分が再生されるのである。その「新しい自分」にも脳があって自分と同じ構造なのである。恐らく右腕の細胞には胎内で受精をしてから細胞分裂を何回繰り返したかを憶えている$${^{*8}}$$ので、そっくりそのまま現在の自分が再生されるだろう。

 しかし記憶などは一切入っていない筈である。同じ様な記憶が新しい脳に出来上がる道理はない$${^{*9}}$$。するとどうだろう、再生した「新しい自分」は赤ん坊の如く、大小便を垂れ流しながら食べ物を求めて歩き回るのだろうか。恐ろしい光景である。

 脳を持つヤマトヒメミミズは切断して新しくできた自分の分身をどのように眺めているのだろう。

*1 系統進化学講座3ミミズ研究グループ
*2 1.自切と再生による無性生殖
*3 ヤマトヒメミミズの無性生殖サイクル
*4 プラナリア:目次
*5 ヤマトヒメミミズの無性生殖
*6 ヤマトヒメミミズの分類
*7 図. 1A 頭部の解剖図
*8 寿命を決めるのは誰!?!?-死なない細胞の正体とは・・・-2-
*9 20020425 記憶の移植

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