見出し画像

20010616 ドップラー効果

 昨日の記事$${^{*1}}$$で後から思うと気になるところが出てきた。

 ドップラー効果$${^{*2}}$$の説明で少し伸びたバネの隙間を使って説明したが、これは適切ではないような気がしてきた。

 ドップラー効果$${^{*3}}$$とは、音とその音を聴く観測者、または音源と音との相対速度の関係によって発現する現象である。バネで説明すると音源と観測者との位置関係で波長が決まってしまうことになり、ドップラー効果の説明にならない。つまり観測者と音源との距離が縮まればバネは縮まることになり音が高く聞こえることになってしまう。実際にそんなことは起こらない。音源または観測者が「音」に対して運動していなければドップラー効果は起きない。

 「波」というのはもともと実体がないので「音」に対する運動というのはどういうことなのか判りにくい。ここで実体がないとは「そのものだけを純粋に取り出すことが出来ない」という意味である。音というのは空気の振動で、空気の何が振動しているかというと、空気の密度が局所的に周期的に薄くなったり濃くなったりしているのである。空気のある部分の密度が変化するとその周りの空気もそれに引きずられる様にして密度が変化する。変化すると均一の方が落ち着くので元の密度に戻ろうする。これが次々と四方八方に伝搬し、最終的にこの振動が耳の奥の鼓膜に到達し鼓膜を振動させる。その振動を脳は「音」と認識するのである。「空気の振動」は存在するが、空気の振動を感じる器官が人間になければ「音」は存在しない。

 空気の温度が一定ならば、この空気の振動の伝わり方はいつも同じである。絶対温度$${^{*4}}$$の平方根に比例して伝わり方が速くなり、気圧にはあまり関係がないらしい。

 まず観測者が「音」に向かって運動している場合を考える。空気の密度の濃い薄いの伝わり方は一定なのだが、空気全体が止まった中で運動しながら鼓膜が密度の濃い薄いに対応して動くので、その繰り返しが実際よりも速くなって鼓膜に伝わる。例えば空気の密度の濃い薄いが10秒間隔で繰り返されているとする。鼓膜が止まっていれば、鼓膜は10秒間隔で振動するが、鼓膜が音に向かって音の速度の半分の速さで動いたとすると、空気の密度の濃い薄いの繰り返しが10秒間隔で鼓膜に到達するよりも先に鼓膜がどんどん「濃い薄いの部分」に向かっていくので、鼓膜は半分の5秒間隔で振動することになる。鼓膜の運動方向が逆ならば20秒間隔になる。音の速さと鼓膜の運動する速さが近づけば近づく程、振動が速くなる。これがドップラー効果である。空気の密度の濃い薄いの伝わる速さを濃い薄いの周期で割り算したものを「波長」という。波長を濃い薄いの間隔の長さと捉えれば、音の方に向かって運動すれば、波長が短くなる。逆ならば長くなる。

 次に音源が運動している場合を考える。音源は振動を10秒間隔で繰り返しているつもりでも、空気全体は止まっているので、空気に伝わる密度の濃い薄いの間隔は進行方向では短くなり、反対方向では長くなる$${^{*5}}$$。

 ここで重要なのはドップラー効果の原因は音源と観測者との相対的な位置や速度ではなく、「音」の速度と観測者の速度との差と言うことである。これがバネの説明が適切でない最も大きな原因である。救急車のサイレンが聞こえる前に既に救急車がサイレンのスイッチを切っていてもドップラー効果は起こる。これは星の光でも同じことで、何万光年の彼方にある星から来た光が眼に届いた頃にはその星は消失しているかも知れないが、観測者が運動していればドップラー効果$${^{*6}}$$は起こる筈である。

 それにしても音の場合は空気という音を伝える「物」があるから解りやすいが、光には伝える「$${^{*7}}$$」はないとされているのでドップラー効果が解りにくい。

 それに自分が運動しているかいないかに関わらず、自分が観測する「光速は一定$${^{*8}}$$」と定義されているので、もし、この宇宙に自分と「光」だけしかなかったら光との速度の差が分からない。どのようにして光のドップラー効果が起こると説明すればいいのであろうか。本当に光のドップラー効果を自分の目で確かめることが出来るのか。

*1 20010615 スターボウ
*2 ドップラー効果とは
*3 The Doppler Effect and Sonic Booms
*4 20010522 温度の単位(2)
*5 DOPPLER EFFECT
*6 高校生のための特殊相対性理論 [光のドップラー効果]
*7 Electromagnetism and Relativity(電磁気学と相対性)
*8 19991002 光の速度

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?