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20020902 安井仲治

 安井仲治(やすいなかじ)$${^{*1}}$$と言う写真家の写真が好きである。1903年生まれ。1942年没す。

 写真集はあまり世に出ていなくて、私が持っているのは新潮社$${^{*2}}$$のフォトミュゼシリーズ「安井仲治-モダニズムを駈けぬけた天才写真家」とフォトプラネット社の写真雑誌deja-vu第12号「特集: 安井仲治と1930年代」との二冊である。

 新潮社のフォトミュゼはなくなってしまった。最近、本その物が売れない中、新潮社は写真集事業から撤退してしまった$${^{*3}}$$らしい。

 彼の代表作に「流氓(りゅうぼう)ユダヤ」がある。流氓の「氓」は「外来の民」という意味である。1941年頃、ポーランドから亡命して神戸に一時居留していた人々を主題とした連作である。このユダヤ人達は杉原千畝(ちうね)$${^{*4}}$$が発行したビザで日本へ一時入国した人々ではないかと推論する人$${^{*5}}$$がいる。時期から考えると$${^{*6}}$$恐らくそうなのであろう。

 この写真が好きになったきっかけではない。1931年の作品に「斧と鎌」というのがある。花崗岩の石段に古ぼけた斧と鎌とが並べて立てかけてあるだけの写真である。斧と鎌の柄は真っ直ぐだが、太陽の光で出来たその影は石段に従って折れ曲がっている。この対比と構図の発想が面白くて、気に入ってしまった。

 もう一つ好きな作品がある。1938年の「海辺」である。写真は縦長になっている。海に向かって突き出た木製の桟橋に鉄道が敷かれていて、写真の下、手前で分岐し複線となって桟橋の先に向かっている。その先で数人の子供が釣りか何かをしている。子供達は影にしか見えない。海にはヨットのような舟が四艘浮かんでいて、空はどんよりと曇っている。

 いつもこんな感じのスナップ写真が撮りたいと思っているが、撮れた試しがない。

*1 安井仲治
*2 新潮社ホームページ【Web新潮】
*3 vol.49 ブックオフと光琳社
*4 八百津町ホームページ
*5 安井仲治が撮った「命のビザ」のユダヤ人
*6 命のビザ-運命の50日間

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