20051026 便利なマニ車
マニ車$${^{*1}}$$と呼ばれる物がある。マニ輪とも呼ばれる。チベット仏教$${^{*2}}$$で使われる仏具で、円筒形をしていてその円筒の表面には経文が書かれている$${^{*3}}$$。中にも経文が入っている$${^{*4}}$$らしい。経文が複写されたマイクロフィルム$${^{*5}}$$が入っているのもあるようだ。その円筒は手でくるくる回わすことができる。
マニ車の大きさは、手に持てる小型の物$${^{*6}}$$から人間の背丈以上の大きなもの$${^{*7}}$$まで様々である。マニ車は日本にも導入されている。愛知県にある野外民族博物館「リトルワールド$${^{*8}}$$」のネパール寺院$${^{*9}}$$にもある。知多半島にある源義朝を祀った野間大坊$${^{*10}}$$にも大きなマニ車が設置$${^{*11}}$$してある。野間大坊の方は古くからあるわけではない。数十年前にはマニ車などなかった。
マニ車を回すと書いてある経文を読んだことになるらしい。一回回せば経文を一回読んだことになる。非常に便利でありがたい道具なのである。どんな宗教でも現世や来世で利益を得るためには多少なりとも自分の犠牲を払わなければならないのが普通だろう。念仏を唱えるとか礼拝に行くとか自分の人生の一部を信仰に捧げなければならない。マニ車は回すだけで経文を読んだことになるが、回すという行為が犠牲なのである。
ところが更に犠牲を最小限に抑える工夫がなされ便利になっているのを雑誌$${^{*12}}$$で知った。水力で回るマニ車$${^{*13}}$$もあるらしい。マニ車の下に水車$${^{*14}}$$が付いていて水の勢いでマニ車が回転するようになっている。川の流れがある限り回り続ける$${^{*15}}$$。他に走馬燈のように蝋燭や電球の熱で回る$${^{*16}}$$もの、風力で動くもの$${^{*17}}$$、電気モータで動くもの$${^{*18}}$$、その電源を太陽電池で賄う$${^{*19}}$$ものもある。
デジタルマニ車$${^{*20}}$$もある。このようにモニタ画面上でマニ車が回っている$${^{*21}}$$。またパソコンの中で高速回転しているハードディスクに経文を保存しておけば、マニ車を回すのと同じ効果があると考えることができるようだ。
ハードディスク上の電子化された経文のデータは経文と言えるのだろうか。ハードディスク上の猥褻文書や画像が猥褻物と言えるかどうかの議論$${^{*22}}$$に似ている。本来の画像に復元できる状態であれば$${^{*23}}$$、データはそれその物と言えるかも知れない。ただ、ハードディスク上にある有体物は経文ではなく磁性体であり、経文の画像としてもしくは文字としての情報が磁性体の物性の変化を信号として置き換えて記録$${^{*24}}$$されているだけである。
マニ車を回すという行為は、経文を回すことを読経の代わりにするという便利な考え方である。読経とは、経文に含まれる情報を信仰対象に対して自ら発することだろう。経文自体を回すことを読経の代わりとしたのだから、経文を自分の手で回したり、水力などで回していても自分が回しているつもりになることが読経となる。従って有体物である経文自体を回すことに意味がある。
こう考えるとハードディスク上の情報は単なる信号の羅列なので、それがいくら高速回転していても経文を回していることにならないのではないか。つまり経文をハードディスクに記録しておくだけではマニ車効果が得られない。どうすればよいか。やはりモニタ画面上にでマニ車を回転させなければならないだろう。こうすれば経文を回しているつもりになれる。水力などの他力マニ車と同じである。この「つもり」が重要で、端から見てもその「つもり」が解る程度にしておかないと信仰になりにくい。そしてモニタに映し出されているマニ車$${^{*25}}$$をクリックすると経文が表示される。これこそが真のデジタルマニ車だろう。
*1 くらしの中の信仰/マニ車
*2 チベット仏教の歴史
*3 58 マニ車 [中国(チベット自治区)]
*4 「歴史探訪・新湊の北前船文化遺産-大楽寺の宝物を通して-」
*5 Tantricheartwheels
*6 チベット密教-法具-大法輪美術品
*7 KUBOTA GLOBAL INDEX/INFRASTRUCTURE/ブータン王国・電化プロジェクト-3
*8 野外民族博物館 リトルワールド
*9 リトルワールド6(ネパール仏教寺院)
*10 野間大坊(のまだいぼう)
*11 野間大坊〈中編〉
*12 「SKYWARD」のご紹介 -2005年10月号-
*13 Prayer Wheel just past Sanasa, Nepal (prayer_wheel)
*14 Fixing a Prayer Wheel in Bhutan and Their Meaning
*15 p0004999 - Nepal - Annapurna - Shields Around the World
*16 Advice on the Benefits of Prayer Wheels, A Tibetan Buddhist Spiritual Technology
*17 Storia della Spedizione scientifica italiana nel Himàlaia, Caracorùm e Turchestàn Cinese(1913-1914) / 201 ページ
*18 Prayer Wheels: Tibetan Spiritual Technology
*19 Lotus Energy SOLAR PRAYER WHEEL
*20 Digital Prayer Wheels
*21 Digital Prayer Wheels Praying with electrons you already have around the house
*22 Q2利用のインターネットわいせつ画像公開を摘発
*23 Okayama FL Mask Case : Okayama District Court : Judgement
*24 Electric Appliance and Physics Engineering
*25 Prayer Wheels for Web Pages
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