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20000411 数の子

 先日、数の子$${^{*1}}$$の味付けをした。毎年の数キロ数の子を買い込み冷凍室に貯蔵しておき、思い出しては解凍して味を付けてご飯の添え物として食べる。酒の肴にもなりそうだが、家で酒は飲まないのでおかずになっている。

 醤油$${^{*2}}$$を1カップ、みりん$${^{*3}}$$は50cc、$${^{*4}}$$は50cc、$${^{*5}}$$を1カップ、鰹節は適量を鍋に入れ、火にかけて沸騰する前に火を止めて冷ます。解凍した数の子は塩漬け数の子なので塩を抜き、タッパー$${^{*6}}$$などに入れてから先程の味付けつゆを入れる。気になるなら鰹節は取り除く。自分は気にならないのでつゆと一緒に鰹節も入れてしまう。
 タッパーの蓋をして冷蔵庫に入れて半日以上経過すれば、つゆが数の子に滲みて程良い味加減になる。市販の味付き数の子は数の子のあの歯触りが失われているだけでなく、味付けも甘すぎて話にならない。
 歯触りのよい高品質の数の子を使わなければ、至福の時を味わうことができない。

 上に書いたように年末に買ってくる数の子は「塩漬け数の子$${^{*7}}$$」といってそのまま食べると塩辛くてとても食べられない状態になっている。そこで塩抜き作業をする。数の子を水の中に6時間ほど浸けて置くのだが、水だけに1日浸けて置いても数の子の塩はなかなか抜けない。
 そこで水に食塩を入れて食塩水にする。濃度は海水の半分ぐらいの辛さぐらい。入れるこの食塩を「呼び塩$${^{*8}}$$」と呼ぶ。これで3時間ぐらい浸けて再び水を換えて、また3時間ぐらい同じ様な辛さの食塩水に浸ける。そうすると数の子の塩辛さはかなり薄くなり程良くなる。この後、薄皮を取る作業をするが、最近は薄皮をとった数の子が出回っている。
 塩を抜きすぎると数の子は苦くなるので、その様なときはもう一度食塩水に漬けて塩分を少し戻してやる。

 この塩抜きの原理を数の子の卵の細胞膜が半透膜$${^{*9}}$$になっており浸透圧$${^{*10}}$$の関係から塩が抜けると説明しているところ$${^{*11}}$$がある。自分も以前はそうだと漠然と思っていた。

 しかし水分子は通すがナトリウムイオン$${^{*12}}$$や塩素イオン$${^{*13}}$$を通さない半透膜であるとすると、どうやって塩漬けの数の子を作るのだろうか。半透膜なら数の子の卵の中にはイオンが入り込めないはずだ。
 ならば水分子もイオンも通す全透膜$${^{*14}}$$だとすると、何故呼び塩があると塩が早く抜けるのだろう。数の子の細胞膜にある分子を通す孔は細胞の中と外との塩分の濃度差によって大きさが変化するのかも知れない。
 濃度差が大きい時、つまり外が真水で卵の中が塩辛いときは孔が小さくなりイオンが通り抜けることができない。外の塩分の濃度が少し上がると孔が次第に大きくなりイオンが通り抜け卵の中の塩分がどんどん抜けていく。こんな仕組みを持った膜なだろうか。

 もしかしたら呼び塩を入れると早く塩が抜けるというのは単なる思い込みかもしれない。

*1 井原水産、加藤水産
*2 キッコーマン 世界のしょうゆクッキング
*3 九重味淋株式会社
*4 愛知県江南市の酒蔵「勲碧・くんぺき」のホームページ
*5 シーガルフォー
*6 日本タッパーウェア株式会社
*7 魚臓腑料理
*8 タクワンの塩抜き
*9 ピチットの原理
*10 ピチットの原理
*11 知恵
*12 特集 日本の塩 ~塩づくりの工夫 1~
*13 特集 日本の塩 ~塩づくりの工夫 1~
*14 動物細胞の構造と各部の働き


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