見出し画像

20010110 電球とスピーカー

 電球が箱の中に入っているオーディオ用のスピーカーがある。この電球はスピーカーの箱の外からは全く見えない。この電球は何かを照らしたり表示するためのものではない。この電球のことを知ったのは十数年前のことであった。

 当時、ボーズ$${^{*1}}$$の最も廉価な小型スピーカーを買って説明書を読んでいたら、音声信号入力保護に「タングステンランプ$${^{*2}}$$」が使われていることが記載されていた。スピーカーに大きな電流が流れ込むとスピーカーが大きく振動して破損する場合がある。それを防ぐために入力保護を設けてある。どうして電球がスピーカーの入力保護になるのか非常に気になった。

 この電球は外からは全く見えない。ネジを外して中を見たいという衝動に駆られたが、ネジを外すと5年間か7年間かの無償修理の保証期間が無効になると明記してあったので、恐ろしくて実行に移せなかった。

 もう今は購入してから10年以上経過しているので完全に保証は無効になっているし、ネジを外したぐらいでスピーカーは壊れないことは十分判っているので、本当に電球が入っているかどうかネジを外して確認してみた。

 本当に電球が入っていた。フィラメントがちゃんと見える。音声信号が外部から入ってこの電球を通って音が鳴る部分に入るようにつながっている。タングステンランプは流れる電流が少ない時は電気抵抗が低く、電流が多くなって電球が光り出すと電気抵抗が増えて電流が流れにくくなる。金属は温度が高くなると電気抵抗が増える。温度が高いということは金属を構成する原子の振動が大きいということである。電流は電子の流れで、その電子は金属のを構成する原子の格子を通り抜けていく。原子が大きく揺れていれば電子の動きが邪魔される。従って電流が通りにくくなる、つまり電気抵抗が温度が上昇すると増えることになる。

 電球のフィラメントが光るということは、フィラメントの温度が上昇していることだから光ってない時よりも電気抵抗が増えていることになる。スピーカーに大きな電流が流れそうになると電球のフィラメントが光り出すので、スピーカーの音が鳴る部分と電球全体の抵抗が上昇していくので、電流が流れにくくなりスピーカーの破損が防止される。

 スピーカーに大電流が流れたとき、タングステンランプがスピーカーの箱の中で人知れずひっそりと光る。電球がスピーカの破損を防いでいると思うと何となく情緒があるような気がしてきた。

*1 ーズ | ユーザーの感性や行動を、より高いレベルに | ヘッドホン、スピーカー、ウェアラブル
*2 ハロゲンランプ 10 突入電流

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?