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20001201 太陽の動き

 晴れた日に輝く太陽$${^{*1}}$$の動きには何ら変わったところはない。曇りの時に変な動きをする、という意味ではない。別段、太陽の動き方を不思議に思うことはないと言うことである。毎日、太陽は朝は東から昇って夕には西に沈む。日によって違うのは日の出の場所と太陽が空を通る道筋と日の入りの場所ぐらいである。1日ぐらいではその変化はあまり判らない。季節が変わると日が短くなったとか太陽が高くなった、と思うぐらいである。

 太陽の一日の動き方は空を円弧上に動いていくだけなので、それ程変わっているとは言えない。空に輝く全ての天体は太陽と同じように円弧状に動くので、太陽の動きは珍しくもなんともない。しかし日々の動きを観察していくと太陽は意外な動き方をしていることが判る。

 定時刻の空に浮かぶ太陽の位置を観察してみる。定時刻の観察とは、毎日昼の12時なら12時丁度になった時の太陽の位置を毎日一年間記録するのである。毎日は大変だから毎週でもいい。とにかく同じ時刻、同じ場所から見た太陽の位置を記録していく。記録の仕方は色々あるだろう。南向きのガラス窓の前に自分が観測する場所の目印を付けて、12時になった時の太陽の位置をガラスにマジックインキ$${^{*2}}$$で印を付ける。観測するときの目の位置を固定するために顎を乗せて固定する台を据え付けた方が良いかもしれない。
 カメラを固定して記録する方法もある。撮影した後、合成すれば太陽の定時刻の位置の変化が判る。デジタルカメラ$${^{*3}}$$ならフィルムが劣化しないのでいいかもしれない。

 観察はいつからやってもよいが、もうすぐ冬至なので、冬至$${^{*4}}$$からやることにしてみる。冬至の日は太陽が最も低くなる日だから丁度いいだろう。半年後の夏至$${^{*5}}$$には太陽が最も高くなるので、毎日太陽の位置が上にあがって行く様子が記録できて楽しいだろう。

 さて、これを根気よく一年間続けられたとして太陽の位置がどのように変化するか想像できるだろうか。おそらく殆どの人は一年かけて冬至と夏至との間を真っ直ぐ上下に往復するだけと考えるに違いない。少し読む人がいても円周状になると考えるぐらいだろう。しかしこれは全く違うのである。

 昼の12時に太陽は真南には来ない。南中$${^{*6}}$$と呼ばれる太陽が真南に来る時は11時40分前後である。12時には太陽は少し西に移動しているが、このことは太陽の定時刻観察には影響しない。
 12月22日の12時を最初の太陽の位置として記録する。上に書いたように太陽の位置は真南ではないが、ほぼ南である。この時、太陽の高度は東京で31°ぐらいである。その1週間後の12月29日には12時の太陽の位置は0.5°東にずれる。高度は殆ど変わらず31°である。それから一日毎に太陽が高くなり、その高度が40°になるのは2月の中旬頃であるが、この時、12時の太陽の位置は最初の冬至位置から6°東にずれている。
 この日を境にして今度は西に戻り出す。そして4月の中旬には冬至の日と同じ位置に戻る。ただし夏至にだんだん近づいているので高度は63°ぐらいになっている。そしてそのまま西にずれていく。5月下旬には1°ぐらい西にずれている。そしてまた東に戻り出して、6月21日頃の夏至になると冬至の位置に戻ってくる。ただし高度は最高の77°になっている。ここまでの太陽の位置の軌跡を空に描くと「S」字の裏返しになっている。
 夏至を過ぎるとそのまま、東にまたずれ出し8月初めに1°ぐらいずれたところでまた西に戻って8月末頃に冬至の位置になる。この時、太陽の高度は63°で、4月中旬と同じ位置になる。そしてまたそのまま西にずれて11月初めに折り返して冬至の日に元に戻る。夏至から冬至までの軌跡は最初の半年の逆で「S」字である。

 つまり太陽の定時刻の位置を一年かけてつなぐと「8」の字になる。この「8」の字は下の部分が大きい「8」の字である。なぜ「8」になるのかよく判らないが、にわかには信じ難い。太陽というのは絶対的な存在のように漠然と考えてしまっているので、そんな太陽が「8」に動くというのはかなり違和感を持ってしまう。
 しかも「8」の字の交点は春分でも秋分$${^{*7}}$$でもない中途半端な4月と8月である。一体この日はどんな意味を持っているのだろう。

 下の部分が大きい「8」の字は日本で観測した場合であって、赤道ではおそらく綺麗な「8」が頭の真上に描かれるだろう。そして交点は秋分と春分の日になると思われる。北極圏や南極圏$${^{*8}}$$で観測するとおそらく「8」の字にはならず水平線に接する丸が描かれると思われる。

 20年ほど前、名前を忘れたが、ある写真家の定時刻の太陽観察写真を見てこの太陽の不思議な動きを知った。自分もやってみたいと思っていたが、一年もかかるので直ぐやる気が失せて現在に至っている。理科年表$${^{*9}}$$を使ってグラフを描けば太陽の「8」の字が一年もかけなくても出てくる。グラフが出来上がっただけでも結構感動するので、一年かけて記録を取り続けると物凄い感動が得られるのかもしれない。

*1 「AstroArts - アストロアーツ
*2 マジックインキ
*3 20001125 デジタルカメラ
*4 冬至の太陽の高度
*5 6月21日 夏至の日の太陽
*6 南中高度について
*7 1996 - 2010年の春分・秋分の日付
*8 白夜の昭和基地
*9 丸善株式会社 出版事業部

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