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20090429 67億分の1の奇跡

 テレビジョンの広告で「67億分の1の奇跡」という文言が流れていた。結婚式場の宣伝である。最初は、ヒトの一回の射精において一匹の精子が卵子と出会って受精$${^{*1}}$$する確率の話かと思ったが、すぐに違うと気付いた。結婚式場の話だから受精は大抵、結婚式の後だ。結婚式の前に受精したとしても、式場の主役は結婚する当人達であって、宣伝の対象は彼らの愛の結晶ではない。67億とは世界の総人口$${^{*2}}$$の意味だろう。それにしても桁が大き過ぎてピンと来ない。

 一回の射精で放出される精子の数は大体数億匹程度$${^{*3}}$$らしい。67億よりもかなり少ない。それは別として、自分たちの巡り合わせが「67億分の1の奇跡」というのは少々大袈裟な様な気もしないでもない。結婚式に幻想を抱くのは新婦の仕事だから仕方がないが、落ち着いて考えるとやはり舞い上がり過ぎであることは否定できない。まぁ、別に問題は全くない。

 世界人口の半分は自分と同性だから、分母は67億の半分だろう。更に15歳以下は結婚相手の対象となり得ない$${^{*4}}$$し、老人の多くは対象にはならない。日本人の年齢別における人口分布で15~64歳が占める割合は大体70%$${^{*5}}$$である。 この分布が全世界同じとして考えると結婚の相手としてなり得るのは23億人ぐらいになる。

 全世界で23億人の中から相手を選ぶ訳ではなく、偶然に出会う人から選ぶのだから、上の計算は全く意味がない。一生のうちに出会って少しでも話をして付き合う異性は千人いくだろうか。それ程多くない選択肢から一人を選んで長い年月一緒に暮らすのだから、こちらの方が奇跡だろう。

*1 受精のしくみ|妊娠・出産コラム|妊娠・出産のここカラダ
*2 世界の人口
*3 精液と精子
*4 民法・第4編 第1節 婚姻の成立 第1款 婚姻の要件
*5 統計局ホームページ/人口推計/平成16年10月1日現在推計人口

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