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20000201 定期券の実用新案

 名古屋鉄道$${^{*1}}$$の定期券は、実用新案$${^{*2}}$$登録がしてある。実用新案登録というのは特許$${^{*3}}$$で保護される発明よりも技術水準が低い考案を保護する制度のことで、ある所定の手続きをすることにより特許と同じようにその技術の独占権を与えられる。

 特許や実用新案は技術内容を公開する代わりに発明の独占権をある一定期間与える制度である。この独占権によって発明や考案にかかった労力や費用を回収でき、更に利益を得ることが期待できる。この独占権がなかったら直ぐに模倣されて、折角、発明品で儲けようとしても余計な商売敵が沢山出てきてあまり儲からなくなる。
 発明した技術を特許として公開するとその分野での研究の重複を防ぐことが出来たり、公開された発明に触発され新たな発明がなされ、産業の発展が促される。特許や実用新案にはこのような効果や目的がある。

 さて定期券の考案とはどんなものか。名古屋鉄道の定期券の表書きには乗降駅名や使用期限の他に写真が印刷されている。私の定期券には愛知県犬山市$${^{*4}}$$にある博物館明治村$${^{*5}}$$に動態保存されている蒸気機関車$${^{*6}}$$の写真が印刷してある。
 この写真によって定期券の不正使用を容易に見分けられるようになるらしい。例えば女性の定期に印刷する写真を花にしておけば、それを男性が使えば不正が直ぐに解る。さらに乗降駅によって花の種類等を変えておけば文字で書かれた駅名を確認するよりも不正使用かどうかを容易に判別することが出来る。当然のことながらこのような目的であれば写真の絵柄は何でもよい。

 しかしこの定期券の考案を公開することの意味は何処にあるのだろうか。この写真付きの定期券の考案の独占使用権は名古屋鉄道にどのような利益をもたらすのだろう。名古屋鉄道の定期券は名古屋鉄道でしか使えないし、名古屋鉄道以外の業者が勝手に売ることはない。つまり既に定期券に関しては当たり前の話だが、独占状態なのである。
 更に他の鉄道会社がこの定期の考案を模倣しても名古屋鉄道は何ら損害を受けない。名古屋鉄道の場合、JR東海$${^{*7}}$$と路線で競合している区間があるが、定期券に写真が付いているからといってJR東海から名古屋鉄道に変える人は皆無だろう。一体何のために実用新案登録したのだろうか。

*1 名古屋鉄道ホームページ
*2 実用新案法
*3 特許法
*4 犬山市ホームページ
*5 博物館 明治村
*6 村内見学
*7 JR東海 Central Japan Railway Company

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