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20011220 宇宙の音

 宇宙で音が聞こえるか。ここで言う宇宙とは星と星との間の空間のことである。音というのは空気の振動である、と定義すれば空気のないところでは音は聞こえない。しかし必ずしも空気でなくてもいい。鼓膜を振動させることが出来れば$${^{*1}}$$空気だろうと水だろうと油だろうと何でもよい。それは「音」になる。

 宇宙空間というのはそういう鼓膜に振動を与える一切のものがないところ、というのであれば音は聞こえない。聞こえるはずがない。しかし音というのは本来、脳が鼓膜の振動を「音」と認識して初めて「音」という情報があったと判断するので、鼓膜の振動が必ずしも必要がないだろう。脳が音と判断する部位に、直接何らかの刺激を与えれば、それは「音」と知覚される。そんなのは音ではないというかもしれないが、これは定義の問題である。雑音の中で音を聞き分けるというのは実際に音を振り分けている訳ではなく、脳が聞き分けの処理をしている。聞き分けられた音も「音」と呼んでいるが、空気の振動を直接物理的に振り分けている訳ではない。音を記憶することや音を想像することは日常的にやっている。鼓膜の振動で感じる音とは違うが、これも広義の「音」とすることもできる。しかしこれも空気の存在は関係ない。

 宇宙空間で音が聞こえるか。もしかして重力波$${^{*2}}$$が直接鼓膜に作用してそれが「音」として聞こえるかも知れない。

 小学生の頃の理科の授業で、音の性質を調べる実験を覚えている。先生が理科室の大きな机の周りに児童を集めた。机の上には支持台$${^{*3}}$$に乗せられたゴム栓がしっかりしてあるフラスコ$${^{*4}}$$があった。ゴム栓にはガラス管が刺してありそこにはゴムホースが付けられ、フラスコの中には針金でつり下げられた鈴が入っていた。その針金はゴム栓に刺してあった。

 フラスコの中の空気がなくなったら鈴の音はどうなるかという実験であった。ゴムホースの先には真空ポンプが付けられていたはずだが、それは水流ポンプ$${^{*5}}$$であったか機械式の真空ポンプ$${^{*6}}$$だったかははっきり覚えていない。

 フラスコの中に空気が入っている状態ではフラスコを揺らせば鈴の音が聞こえてきた。ポンプで中の空気を吸い出していくと最初のうちはまだよく聞こえたが、暫くすると殆ど聞こえなくなってきた。そして「空気がないと音は出ない」と先生は結論付けた。

 机の周りに集まっていた児童は鈴の音が本当に音が聞こえないのか耳をそばだてていた。

「先生、何か聞こえるぞ」「鈴の音じゃないけど、カチカチとフラスコから音が聞こえる」

と誰かが言い出した。皆が口々に「聞こえる、聞こえる」と言い出した。「先生、どうして空気がないのに音が聞こえるの」という質問が出だした。

 鈴をぶら下げた針金がフラスコを揺らすと少し当たったので、これが音を出していたのである。空気がなくても針金が当たることによりフラスコが振動して音を出しているのでフラスコの外に音は聞こえる。しかし児童達はこの実験から「空気が音の素」と結論付けられたので、空気がないところから音が出るのはおかしいと考えたのである。

 これに対して先生はどう答えたのかさっぱり覚えていない。

*1 20011106 雑音の中の音
*2 重力波
*3 中村理科データベース 鉄製スタンド 大型B
*4 中村理科データベース 丸底フラスコ ガラス
*5 中村理科データベース 水流ポンプ(アスピレーター) SPG-300N
*6 小型ドライ真空ポンプ | アルバック販売

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