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20021115 人魚伝

 ヤマトヒメミミズ$${^{*1}}$$やプラナリア$${^{*2}}$$の再生について書いていて安部公房$${^{*3}}$$の「人魚伝$${^{*4}}$$」という作品を思い出した。

 人魚の肉を食うと不老不死になる$${^{*5}}$$という伝説があった。「人魚伝」の主人公は人魚を捕まえるが、食べない。人魚を飼っているうちにその人魚によって強力な再生能力を身につける。切断した部分からもう一人の自分が再生されるようになる。

 主人公の男がヤマトヒメミミズやプラナリアのように再生したもう一人の自分と口論する場面がある。脳に蓄えられている記憶も再生したことになる。やはり肉の断片に記憶が宿るというのは考えにくい。

 脳の一部からの再生なら記憶も再生出来るかもしれない。記憶が脳のどの部分$${^{*6}}$$に保管されているのかよく判らないが、その一部がもう一人の自分に継承され、残りは自分となるだけで、結局は完全に複製はできないだろう。しかし時間が経つと自分が受け継いだ記憶によってある程度までは元の状態に近づけるのかも知れない。

 記憶が再生するしないは別にして、やはり自分が分裂して再生するというのは考えれば考えるほど不思議で気色の悪い状態である。

*1 20021114 ヤマトヒメミミズ
*2 The Pioneering Planarian Regeneration Experiments of Harriet Randolph
*3 新潮文庫20世紀の100冊
*4 安部公房 『人魚伝』
*5 ニュースの誕生
*6 アサヒ・わいわい関西

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